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妹が『俺依存症』を患った件

ラムダックス

第1話 妹が『お兄ちゃんのことが好き好きすぎて脳がアヘアヘしちゃうのおおおおお病』を患った件


「お、おにいちゃ……はあ、はあ」

妹の息は荒く足取りもおぼつかない。

「だ、大丈夫か!? 今助けてやるからな!」

そして。




「ギュッ! スウウウウウウウウウゥゥゥ………はあああぁぁあ〜〜〜❤︎❤︎❤︎❤︎❤︎❤︎」




俺の体を抱き締めた妹は、そのまま深く息を吸い込み……ビクビクと自らの身体を震わせながら、まるでこの世に存在するすべての幸せを一般に味わったかのような表情で甘い声を出しながら息を吐く。

「も、もう一度……スウウウウウウウウウゥゥゥ……い、いぐっ……!」

今度は息を吸ったあと、俺の体を強く抱き締めながら、静かに震えた。

「お、おい、大丈夫か!?」

胸に顔を埋めたまま時折ビクビクと痙攣したように震える妹の両肩を、俺は掴み押す。

「…………見なかったことにしようかな、なんだかかわいそうだ」

そうして見えた妹の顔は、涙とよだれに塗れまさに恍惚とした表情であった。う、うん、指摘するのもアレだし、しばらくこのままにしておこうかな?

そう考え、何事もなかったかのようにまたゆっくりと俺の胸に押し付けてやる。

そのまましばらく、ビクッビクッと体を跳ねさせる妹の体を優しく抱き締めてやったのだった。






♡♡♡






「うーん、これはそうだね、『俺依存症』だね」

「『俺依存症』……ですか?」

ある日突然、授業中に倒れた妹に付き添い病院へ向かった俺は、そこで医者からそのような単語を聞き、訳が分からずに素で聞き返してしまう。

「あの、失礼ですが、ふざけているとかでは……?」

「まあ、普通はそう思うよね」



医者が苦笑いをしながら、カクカクシカジカマアルイストップ病気の説明をする。



「----つまり、薬物みたいに、俺という存在に依存しているというわけですか。普通は信じられませんが……」

「正確には、君の出すフェロモンを、妹ちゃんの脳が気に入ってしまったということだね。そしてその我慢の限界値がこの度訪れ、遂に倒れてしまったというわけだ」

「でも妹がなぜ俺のフェロモンを? 話を聞いていると、男性なら誰でもいい、というわけじゃなさそうですが」

真面目な話だということは、色々と難しい話を聞いて(残念ながら医学的な知識はあまりないのでわかる範囲ではあるが)一応は納得できた。

検査の結果、それ以外は至って健康だという話なので、そこは安心だが。しかし急に『俺依存症』だなんて一瞬ふざけてるのかと怒りそうになった聞いたこともない病気の話をされても、誰でも混乱するだろう。

「これは仮説ではあるが、もしかすると妹ちゃんは、幼い頃から君のことを好きだったのではないかな? 勿論、異性として」

「俺のことを、あいつが……」

「人間は好きな人のことを考えたり、フェロモンを浴びたりすると幸せになる脳内物質が出るんだよ。もう一度きちんと調べないと行けないとは思うが、その脳内物質が過剰に出てしまう身体だと考えられるね」

「ううむ、なるほど……」

「君という存在を長年感じ続けた結果、麻薬を常習するが如くフェロモンを常用する状態になり、脳のリミッターが効かなくなってしまったのだろう。だから男性なら誰でもいいとか、そういうことではないのだと推論できる」

「は、はあ、俺が麻薬ですか……」

つまり俺のことを昔から一人の男性として好きであり、そこに脳の異常が重なってしまった結果、依存症になったということか。

「ごめんごめん、別に悪気があるわけじゃないんだよ。でも、緊急検査の結果、妹さんの状態は現状それ以外に考えられないという結論に至ったんだ。もう数日精密検査や様子見を経てから改めて結論を出させてもらうよ」

「わかりました、よろしくお願いします」

こんな話、まだ納得できないという気持ちがありつつもそう言って頭を下げた。




数日後、今度は両親と妹との四人でもう一度詳しい病状を聞くこととなった。

「さて、真奈さん」

「は、はいっ」

「あなたの病気は……やはり、『伊導いどうお兄ちゃんのことが好き好きすぎて脳がアヘアヘしちゃうのおおおおお病』、通称『俺依存症』だと結論付けます」

「お兄ちゃん依存症……ですか」

妹……真奈まなの表情からはその内心を窺い知ることはできない。


----実は入院している間、仮定の話とはいえ病気のことを聞いた両親がふざけるなと先生へ怒鳴り込んだり、検査するにつれ仮説がどんどんと正しいことが証明され俺がいたたまれない気持ちになったり。また真奈が本当に俺のことを昔から好きだったことが明らかになって近親的なアレで一悶着あったりしたのだが、それはまた別の話----


「伊導くんのことを小さい頃から異性として愛してしまったが故に、もともと伊導くんのことを考えると脳内物質が出てしまう体質だった真奈さんの脳が、成長するにつれてさらに反応してしまうようになった。そしてその状態が長く続き、摂取の我慢の限界点を超えた結果、遂に薬物と同じく禁断症状が出るようになってしまった。といった診断を下します」

先生は真剣な面持ちでそう言う。

「先生、真奈は、真奈はどうなってしまうのでしょうか!」

と、説明を聞いた母さんが涙を流しながら、先生にすがりついた。

「お、お前、失礼だぞ」

父さんはそんな母さんを慌てて掴み、椅子に戻るよう促す。

「いえ、お気持ちお察しします。ですが安心してください、今すぐ命に関わるような病気では全くありません。しばらくは様子見、ということでどうでしょうか?」

それを聞いて俺たち四人とも安心したように息を吐く。

「その、それで、肝心の対処法や薬などは……」

今度は父さんが恐る恐る訊ねる。

「伊導くんですね」

「え?」

俺?

「『俺依存症』なんですから、今後倒れないようにするためには、まずは定期的に伊導くん成分を摂取させてあげることですね」

「俺成分」

「三日に一度でも伊導くんフェロモンをきちんと浴びれば、暫くは持つでしょう」

「俺フェロモン」

「ですが、伊導くんの過剰摂取はやはり危険です。このままいくとどんどんと依存症が加速する危険性があります」

「俺の過剰摂取」

単語だけ聞くと、学生がふざけて作ったライトノベルの設定みたいだ。だがしかし、現実に真奈は倒れ、精密検査の結果やはり俺のフェロモンを感じると脳内物質が過剰に分泌されていることがわかった。

「しばらくは1日に面会する時間を制限するなどの処置をとって、どれくらいで禁断症状が現れてしまうのか確かめてみる必要もあるかもしれませんね。いずれにせよ、長期的な目線で身体面精神面共にケアをする必要があります」

この病気を治すには、薬物と同じく根気強い治療が必要なのだろう。俺成分を感じなくても何事もなくなるようにしなければ、きっと真奈の将来は大変なことになってしまう。

このままだと恐らく死ぬまで、俺成分を補給するために定期的に俺のもとに来ないといけないとか。
男とはいえ血の繋がった兄妹である俺に恋愛感情を抱いていていいのかという倫理的問題とか。
考えなくちゃいけない課題はたくさんある。

「伊導……頼んだぞ」

と、父さんは俺の肩を叩く。
父さん母さんも、娘が倒れるという心配をしたくないという気持ちと、娘から息子への懸想という問題に対することと。頭の中が悩ましいだろうな。

「あ、ああ、わかってるさ」

「真奈ちゃんも、急にこんなことを言われて辛いところもあるかもしれないが、一緒に治していこうね」

先生が妹に気遣うように笑いかける。

が、そんな真奈の体がなぜか少し震えている。

「お兄ちゃん……」

「な、なんだ?」

すると、真奈が立ち上がり、俺の前に来てこう言った。



「我慢できない……『お兄ちゃんフェロモン』ちょうだい?」



そう言って発情した猫のような表情で口元からよだれを垂らしながら、周りの目にもくれず俺に縋り付いてきた。

「これは重症かもしれないね……ハハハ」

「なんということだ……」

頭を抱える親と先生の顔を横目に、俺の胸に顔を埋めた深呼吸する妹のことを、俺もまた苦笑いをしながら見つめるのであった。

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