俺の幼馴染が勇者様だった件

ラムダックス

第173話


「どうなってんだこりゃ!?」

兵士の一人が驚きをあらわにする。俺も同じ気持ちだ。

アルテさんの身体は、先ほどまでの目が赤いだけの人間の見た目を残しつつも、背中から六枚の羽が生え。顔から身体の至る所の肌に、まるでSF映画に出てくるアンドロイドのようなカクカクした赤い線が切り込まれていく。
さらに、出現させていた菱形の板が三枚に増えた。先ほどまでと同様の形のものが背中に一枚と。それからえぐれた形ではなく完全なダイヤの形の菱形が二枚、くるくると彼女の周囲をゆっくり回りしながら浮いている。
一本だった剣は両手に二本と増えており、その造形も美術品のような美しい流線形へと変化している。

そして極め付けに、髪の毛から少し上くらいの頭上に、メタリックな見た目の薄い灰色をした輪っかが出現した。その姿は天使にも見える。

「モクテキ、ハイジョ、ジッコウシマス」

のけぞりから逆に一瞬うなだれたアルテさんは上体を起こすと、先ほどの悲壮な声色は完全に消え失せ、抑揚のない機械的な喋り方でそう言った。

「アルテ、どうしたの、ねえ!?」

ベルも、変わりゆくメイドの姿を見てしばらく声が出なかったようだが、数瞬もするとまた悲痛な声色をあげる。

「ハイジョカイシ」

「!! ベル、離れるんだ!」

「あっ」

だが、そんな主人には目もくれず。アルテさん--仮に、天使アルテと呼ぶが--は両脇に控えた宙に浮く菱形を前方に持ってきて、その八つの頂点から高速で光線を発射しはじめた。

「くっ!」

慌てて障壁を貼る。単純に先ほどまでの二倍の攻撃量と攻撃力であるが、今のところ俺の障壁を貫くまでは至っていない。しかし、その一発一発の威力自体は、明らかに上昇している。変わったのは見た目だけではなく、能力値も同様なようだ。

「少し鑑定してみるか」

この隙に、急いで相手のステータスを確認してみる。



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ア嶁テ:女/二澀サぃ
種族:ニニニニニゲゲゲ

レベル:??
経験値:??/??

HP:??/??
MP:??/??
攻撃:??
防御:??
魔攻:??
魔防:??
速さ:??
幸運:??

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◯スキル
・¥¥$$×〆÷--6爰斯呱扈
・メぃ帑--レベルマッママママMA
・天齒齒齒--レベルルルルルru
・神のノノノ舒埜--12121212121212120001
・幸運値ンンンンンンチチチ抑齎皨甠--XXXMAX

--------------------
○ギフト
・天使ノワノワノワノワwawawawa
・天々¥336(2huhネネネネハ、
・??ノ祝福<>

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◯覚醒
・?????⁇⁇⁇?!!!!‼︎
・‼︎!?!?!?⁇!

--------------------
○称号
・SYSTEM ERROR

SYSTEM ERROR

SYSTEM ERROR

SYSTEM ERROR

SYSTEM ERROR

SYSTEM ERROR

SYSTEM ERROR

SYSTEM ERROR




・強制終了しますシャットダウンshutdownshutdownSHUTDOWN

--------------------



「!!??」

「ヴァンっ? きゃあっ!」

ステータスを覗き見ようとした瞬間、猛烈な頭痛が襲いかかり、閲覧し続けられなくなる。同時に『強制終了します』と初めて聞く謎のアナウンスが脳内に流れ、視界の端でステータス画面が閉じられるのが確認できた。
そして俺は頭痛のせいで障壁を貼り続けられなくなり、俺たちを守ってくれていた魔法は消え去ってしまう。

「二人とも!」

「そんな!」

「やばいわよ!」

「余波がここにまで!」

周りの地面に光線が直撃し、砂埃を巻き上げる。俺はまだしも、ベルが……!


だが、いつまで経っても襲いかかるはずの衝撃や痛みがやってこない。段々の頭痛が収まり、周囲の状況を確認できるくらいの余裕が生まれる。

見れば、俺はいつのまにか本能からか、ベルのことを包むようにして抱きしめていたようだ。彼女も目を瞑り、己の運命を悟ったようだが、俺と同じくその時が訪れないことを不思議がっている様子だ。

「………ヴァン…………あ、あれ、パラくん?」

「え?」

そして顔を上げたベルの声で、気がつく。俺たちの前に、一体のドラゴンがいることに。

「<ぐっ、こ、これくらい、やらなきゃ、ベルさんの、相棒を、名乗れ、ない、よ……!>」

「パラくんっ!!」

「お、おい、大丈夫か!?」

彼は、ドラゴンの姿のまま、二人と一人の間に立ちはだかり、攻撃を防いでくれたようだ。どうやって間に合ったのかはわからないが、そのおかげで周りの地面にだけ攻撃が当たり、こちらにまで光線が飛んでこなかったのだ。

だがその姿は、ボロボロだ。まだまだ成長期だという身体は傷つきあちこちから出血して、鱗は剥がれ落ち肉が見え。羽根は穴が開きまくり跡が焦げている。尻尾まで使って防いでくれたのだろう、いつぞやのルビちゃんのように千切れてしまっていた。

その身体視界が遮られ、天使アルテの姿を確認することはできないが、敵もどういうわけか攻撃を中断しているようだ。

「<し、しんぱい、しないで、ふたり、とも……それよりも、はやく、あのひと、を!>」

と、言い残すと、そのドラゴン族にしては小さいながらも十分な大きさのある巨大が大きな音と振動を伴って地に倒れ込む。

「!! だ、誰か、パラくんを!」

「そうだ、ミュリー!」

「は、はいっ!」

「頼めるか!」

「はい!」

この辺りでは一番の聖魔法回復の使い手であろう彼女に声をかけ、彼の治療を頼む。

同時に、視界が開けたことにより再びその姿を拝めるようになった天使の状況を確認する。

「え、ふたりとも!」

天使の周りには、ルビドラとサファドラがいたのだ。しかも、イアちゃんは先ほど暴走状態のアルテさんの剣による攻撃で傷ついているにもかかわらずだ。
ルビドラは天使本体の相手をし、サファドラは周りに浮かぶ菱形の相手をしている。だから、攻撃が止んだように思えたのか。標的を変えた敵はただひたすら剣や光線によりドラゴンズを傷つけている。が、二人ともそれに屈することなく、必死に戦闘を継続してくれている。

「<おい、はやく、どうにかしてこやつを片付ける方法を考えるのじゃ!>」

「<私はそろそろ限界です……! 後を頼みます!>」

「<くそ、ぼっとせんとはよう動かんか!>」

「お、おう! すまん!」

彼女らのいう通り、パラドラと同じくらい傷ついているのがわかる。だが、一応は年齢的にも肉体強度的にも上だからだろう、無理やり耐えて戦闘を継続しているようだ。それももう限界だということか。

「ベル、早くここから遠くに行くんだ、いいな?」

「<きゃあっ!>」

「ハイジョ」

「でもでも」

「シマス」

「<もうもたん! サファイア、離脱じゃ!>」

「言うことを聞いてくれ、頼む! 俺を信じてくれ」

「ヒョウテキサイセッテイ」

「わ、わかったわ」

「ハイジョカイシ」

「ふたりとも、後ろが!」

!!

「ハイジョシ<----ベル様、私を、私のことを貫いてください、一生に一度のお願いです---->マス」

「おおっ!?」

今度は光線ではなく、二振りの剣による直接攻撃に切り替えたようで。俺たちのことを狙ってきた敵の攻撃を、俺も得物を出現させ受け止める。

「いま、なんて!?」

「だから、早くここから」

「そうじゃなくて、アルテが喋ったの!」

「排除が云々だろ! 聞こえてるよ」

「違う、違うの、彼女の声で、何か……また!」

ベルが騒いでいるが、彼女を守りながらでは動き辛い。はやく、遠くに行ってくれないと!

「……ほら! え、なんて……貫く? 貫くって、何で? そんな、私の『破魔の光』で!?」

「え?」

今なんと言った? 『破魔の光』を使え?

「そ、そんなこと、できるわけないじゃない!」

「ベル、誰と喋っているんだ!」



「だから、アルテが、彼女が私に自分を殺してくれって言ってるのよ!!!」

          

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