俺の幼馴染が勇者様だった件
第61話 ※のじゃロリ苦手な方注意
「見ちゃだめえええ!」
「ぐえっ」
いきなり現れた全裸の少女だが、俺は瞬間移動してきたベルに目を手で覆われながら引き倒されたため、その姿を見ることが出来なくなってしまった。
「何をしておるのじゃ……?」
声だけしか聞こえないが、少女の困惑した様子は伝わってくる。
「ルビードラゴン様、なんですか?」
ミュリーが訊ねる声が聞こえる。
「うむ、そうじゃぞ。なんだ、人間形態になれることも知らんのか。エンシェントドラゴンの家系に連なるものは、人の形を取ることができるのじゃ」
そうなのか、まるでアニメの設定みたいだ。実際にこうして見ると(勿論その姿を見ることはできないが)あの質量はどこにいったのかとか凄く気になるが、まあこういう世界なので今更か。
「あらまあなんと、ドラゴンという種族は不思議ですね。それにしてもルビードラゴン様が随分可愛らしいお姿に。大変です、とりあえず服を」
「うむ、僕のマントを貸そう」
「は!? というかちょっとちょっと、なんでジャステイズは普通に裸見てるのよ!? ダメに決まってるでしょ、向こうに行っていなさい!」
エメディアが何やら騒いでいるが、ベルと同じく恋人に少女とはいえ他の女性の裸を見せたくないのだろう。単純に倫理的な問題もあるし。
「我は何も見ていないのである」
デンネルは自主的に後ろを向いて我関せずといった態度だ。
「あの、僕はいいですかね。せっかくですので何か商機に繋がらないかと思うのですが」
「ドルーヨさんは……まあ、そういうこと考えないってわかってるんで」
「だわね」
「枯れてるしね」
「枯れてるとは……僕も一応男なんですけどね、ハハハ。まあ、一応向こうに行っていますよ、行きましょうか三人とも」
「ああ、うん」
「わかった」
「うむ、できるだけ遠くに行くのである」
ベルとエメディアから解放された俺たちと、デンネルにドルーヨの四人で、素直に森の近くまで行き時間を潰す。一瞬後ろを振り向いたが、ベルが怖い笑顔を浮かべていたのですぐさま前に向き直した。
「<ーーもう大丈夫じゃぞ!>」
「うおっ!?」
そして数十分後、またあの頭の中に響く声が聞こえてき、びっくりしてしまった。こういきなり話しかけられるとまだ慣れていないので驚く。
「ん、どうしたんだヴァン?」
「いや、ちょっと……<ルビードラゴン様ですか?>」
取り敢えず、返答ができるか試してみる。
「<うむ、着替え終わったのでベル達が戻ってもいいと言っておる>」
「<わかりました、じゃあすぐそちらに向かいますね>」
これは便利だな、異世界の電話みたいなものと考えておけばいいだろう。もしかしてこれも、頑張ればクリエイトできるのか? 作れたら今後一生使える魔法になるぞ! 後で試してみよう。
「ヴァンさん?」
ジャステイズの次はドルーヨが声をかけてくる。
「ああ、いや、ルビードラゴン様が念話を送って来たんだ。皆んなには?」
「いいえ、僕のところには」
「こちらも」
「我にもである」
「じゃあ俺だけにか……なんでなんだろう?」
それもまあ、戻ってから聞けばいいか。
「これは、ルビードラゴン様がお可愛らしいお召し物を」
先ほどの戦闘場所に戻る。と、ルビードラゴンはドルーヨの言う通り、どこから取り出したのか真っ白のワンピースを着ていた。頭には何かの花の髪飾りまで刺さっている。
「うむ、可愛いじゃろう? 人間のこういう美的センスは正直羨ましい。ドラゴンは殆どが大雑把でズボラな性格をしておるでの。人間形態、人化と呼んであるが、使えるものも裸であったり獣の皮で合ったりで適当にあしらっているのじゃ」
言い方から察するに、女性陣がどうにかして用意したもののようだ。
それはなんとも……知能の割に原始的な雰囲気のある行動だな。
「我らはとても長生きをする種族での、エンシェントドラゴン様は6000歳、我も600歳は生きておる。60年が人間の1歳分と考えればよい」
ふうーん、凄い長生きするんだなあ。ここまでの設定や行動を振り返ると、正にファンタジーに出てくるドラゴンって感じがしてワクワクしてくるな。ただ一つもうあんな戦闘は絶対にしたくないが。
「年齢によって人と同じく成長していく故、我はまだここまでしかなれないのじゃ、すぐに服を用意してくれて助かったわ」
「そうなんですね。じゃあ精神年齢も10歳程度なんですか? 聡明そうなお姿、とてもそうは見えませんが」
「じゃろうじゃろう、ドラゴン族はだいたいではあるが300〜600歳で成人とみなされるのじゃ。個体によって差があるし、家系によっても差が出るから一概に基準が設けられているわけではない。お爺様の家系は600歳以上で殆どのものがようやく成人として認められて来ている。我もつい先日成人としてようやく一人旅をしていいことになったのじゃ!」
「ふむふむ、なるほど……興味深いお話ですねえ」
「むふふ、じゃろうじゃろう? 人間の知らないことを教えるのがこんなに快感じゃなんて、もっと早く知りたかったわい!」
ルビードラゴンは高らかに笑う。しかしその姿はどう見ても子供がはしゃいでいるようにしか見えないのが玉に瑕だ。言わぬが華であろう。
しかもドルーヨはただ単に感心しているわけではなく、商売に繋がる何かを見出そうとしているに違いない。まだ付き合って日が浅くはあるが、ああして機会があれば何か売り買いにつながるような発想が出てこないかと考えているのだ。
「でもそんなルビードラゴン様は、どうして首輪なんかを?」
ジャステイズが訊ねる。
確かに気になるな、これほど強いのに一体誰にどうやって捕まえられたのか。公爵が手に入れるまでの経緯が気になる。もしかすると、世界のどこかにはドラゴンを捕獲出来る力を有していて、将来国などを脅すための戦略としてドラゴン達を確保している奴らがいたりするかもしれないし。
「うむ、それなのじゃがな……あれは仕方があるまい! 我とて、まさかこのような事態になるとは思ってなかったのじゃ」
ルビードラゴンは何かを思い出すと、腕を組んでムムムと唸りながら目をつぶって怒るように眉を吊り上げる顔をする。しかしただでさえ可憐な少女の姿をしているのに加えて、八重歯が見えていたり、お尻から伸びた尻尾がピンと立っていたりと一々可愛らしい。マスコットキャラにして地球に輸出したら爆売れしそうだ。
「一体どのようなことが?」
「うむ、実はーー」
と、ルビードラゴンは俺たちに一部始終を話す。
「……な、なるほど。つまりは、成人した勢いで街中を探索しているときに、親切な人が美味しいクッキーを売っているお店を教えてあげると言ったと。それに釣られてお店についていくと、実は悪い奴らの隠れ家だった。ルビードラゴン様は慌てて抵抗しようとしたが、あの首輪の魔道具をつけられてどうすることもできなくなり、最終的にはいつのまにか公爵に売り払われて僕たちに出会ったと」
「その通りじゃ! この人化形態では自動で魔法の膜を張ることができないからな。戦闘を始める前に嵌められてしまったら、もう抗う術はなかったのじゃ」
クッキーに釣られたのが本当だとしたら、この娘相当抜けているんじゃ……本当に『この世で一番凄いドラゴン』の孫なんだろうな?
「でも、その隠れ家に入ったときに怪しいとは思わなかったの?」
エメディアが聞くと。
「仕方がなかろう、あのクッキーの美味しさと言ったら、人間の食べ物はただでさえ日々進化しておるというのに、今まで食したお菓子の中でいちばんの代物だったのじゃ! 夢中になるに決まっておろう! 建物の外観も、お菓子屋に似せておったし、中も普通に整えられていた。今思えばあれも彼奴等の策略だったわけじゃな」
ううむ、まあこれ以上は突っ込まないようにしておこう。そもそも知らない人に勝手についていくなとか、なぜ人間のお菓子の味を知っているのかとか色々とあるが。
「ルビードラゴン様も大変な目に遭われたのですね」
「そうじゃな。でもお主らのおかげで、こうして自由の身を取り戻せた。改めて感謝するぞ」
彼女はそう言うと、ペコリと頭を下げた。
          
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