俺の幼馴染が勇者様だった件

ラムダックス

第46話


「ううっ……」

魔法をかけられた職員が呻く。だが俺は回復魔法の中でも覚醒の魔法には自信があるので、無視をし覚醒を促し続けた。

「ぐっ……!」

職員は更に苦しそうにする。

「あの、ヴァン様?   本当に大丈夫なのですか?   あまり負担をかけると……」

「わかっています。ですがお任せください!」

俺は仕上げにと、もう一段階魔法の強さを上げた。

「ぐうううっ……うわあああああ!!」

すると、一際大きな叫び声を上げた後、飛び跳ねるように上半身を起こした。

「わあああ!   ……あ、あれ……ここは?」

体を起こすと同時に、目を開けて周りをキョロキョロと見渡し始める。

「大丈夫か?   ここは医務室だ」

「い、医務室……はっ、ヴァン様!」

職員は俺に気づき、慌てて居住まいを正した。

「おお、おはよう。よく眠れたか?」

「えっ、あ、はい……?   あれ、私は一体?   それに、空を飛んでいた筈なのに」

「何を言っているんだお前?   夢を見ていたんだよ、夢」

「夢、ですか?   はあ、そうですよね。空が飛べる筈無いか……子供の頃の夢だったんだけどなあ。夢とは思えないほど意識が鮮明だったのですが」

職員は何故かしょんぼりとしてしまった。成る程、中々起きなかったのは、夢の世界に意識が引きずり込まれていたからなのか。俺の場合は落ちて死んだから、そのまま起きられたというわけだ。こいつの場合は、自らが空を飛ぶ夢を見ていたらしい。俺は枕元にある薔薇の匂いに、こいつは心のどこかに残っていた願望に影響された夢を見たのだろう。

「なるほど、ま、起きられて良かったじゃ無いか。このままだと姫殿下の責任問題になっていたかもしれないんだぜ?」

「姫殿下?」

「ん」

俺は横におわすエンデリシェ第三王女殿下のことをちらりと見た。

「あっ!?   こ、これはエンデリシェ様!   このような無礼な振る舞い、大変申し訳ございません!」

職員は俺の視線に促され横にいる人物に気づき、慌ててベッドから降り平伏した。

「や、やめて下さい。私のせいなのですから……」

殿下はそんな職員の態度を見て、身体を起こすように言う。

「で、ですが」

「私の実験のせいなのです。覚えていませんか?」

「実験……あ、あの薬を使った実験でしょうか?」

「ええ、その通りです。このヴァン様のおかげで、どうにか無事に起こしていただけたのです。私に頭を下げるよりも、ヴァン様にお礼を述べられた方がよろしいと思いますが」

「そ、そうなのですか……ヴァン様、誠にありがとうございました」

今度は俺に向かって頭を下げ始めた。ヘコヘコと見苦しいやつだ。

「ああもう、そういうのいいから。とにかく、他の職員と起こさないと」

「は、はい!   ですが、私にはそんな力は……せめて、起きた職員の介抱だけでも手伝わさせていただきます」

「あーすまん、頼む」

「はい!」

「あの、私も……」

殿下も何か手伝いたそうだ。

「じゃあ殿下は……俺に抱きついてください」

「ふぇっ!?」

殿下は俺の言葉を聞いた瞬間、顔を真っ赤にして固まってしまった。

「お仕置きです。俺も一応は国軍の上に立つもの。これからはこのようなことがないよう、殿下には反省していただかないといけませんので」

勿論口から出まかせだ。ただ単にその一部分が豊満な体を、ほんのちょっとだけ確認してみたいだけである。

「う、ううっ……どうしてもでしょうか?」

依然、殿下は顔を赤くし、もじもじと上目遣いで尋ねてくる。

「お仕置きですから」

俺も負けじと満遍の笑みで返す。

「……わ、わかりました」

「(やったぜ!)では、早く起こしに行きましょう!   お前も頼んだぞ」

「あ、はい!」


そして俺はベッドに横たわる職員を次々と起こしていった。


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「はあ……かっこよかったわ……」
「もう少しで倒せたのに!」
「こ、怖かったよぉ」
「俺の金が……」

それから職員を大方無事に覚醒させることができた。夢に未練タラタラなやつや、早く起きられて良かったという反応の者もいる。

「さて、あと一人か」

俺は最初の方に起きた職員に、後から起きた職員の世話を任せ、最後の一人を起こしにかかる。

「では殿下、お願い致します」

このプニプニを堪能できるのも最後か……

「あの、まだやるのでしょうか……?」

殿下は最初の方は渋々といった感じで俺に抱きついておられたが、人の目が増えるにつれ段々と狼狽えるようになってしまった。

「お仕置きですから。ああ、国王陛下に何とお伝えすればいいやら……!」

「わ、わかりました!   わかりましたので、お、お父様にはどうか!」

殿下の発見も兼ねて、途中でグアードに事の経緯を報告したところ、国王陛下はどうやら知らないようだということがわかった。知っているのは今の所はこの場にいる職員とほんの少しのメイドや国軍関係者だけだ。殿下はどうやら国王陛下に叱られるのが余程怖いらしく、俺がそれとなく呟くと、またすぐに俺に抱きつくという事の繰り返しだった。

「では、出来ますよね?」

「は、はい!」

殿下は再び俺の背中に抱きつく。

おおう、柔らか〜い。

「こほん、では最後の……」

俺はベッドに横たわる看護師長に向けて覚醒魔法をかけた。

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