俺の幼馴染が勇者様だった件

ラムダックス

第3話


「えと、あの、生き返らせるのは無理なんじゃあ……?」

俺は、いきなり発言を百八十度転換させたグチワロスさんに向かって尋ねた。

「ん? 出来るよ。ああ、言い方が悪かったね。地球よりも文明の劣った世界に、ということだよ」

「はあ?」

いまいち理解できない。

「んんっとねえ、君たちがよく知る、異世界転生、って奴だね。わかった?」

「え? い、異世界転生!?」

それってあれだよな、ライトノベルやネット小説にありがちな、中世レベルの世界に生まれ変わるーとかって奴だよな?

「ほうほう、よく知っているね」

「そりゃあ、俺くらいの歳の奴らなら大体読んでいると思いますよ。漫画アニメゲーム、今では誰もが何かしらに手をつけていますからね。俺はそこそこそういう本を読んでいたので、このあとの展開がなんとなく読めましたよ」

「ほほう、その展開とは?」

「ズバリ、チートを持って赤ちゃんの頃から暴れまくるっ!」

所謂『俺強い系』では"あるある"なパターンだ。生き返らせるというより、正に生まれ変わりだな。そしてその能力を使って世界を救ったりするわけだ。

「まあ、そうだね、チートというのはどうかわからないが、特殊な能力ならあげられるよ?」

「ほ、本当ですかっ!」

「神様だからね、それくらいはお茶の子さいさいというわけさ」

流石神様のグチワロスさんだ。神様様様だぜ。

「そんな様を三つ並べないでくれ。読み難いだろう?」

「ははは、そうですね……あの、俺が出来るなら、もしかして凛も……」

そう、俺を転生させることができるなら、今どこかにいるだろう凛も転生させられるはずだ。これは譲れないところである。

「もちろん良いよー。但し、君よりも"楽"な死に方をしたから、今は魂の状態まで還元されていて、この空間とは別の空間にいるよ。だから、後からあの娘にも聞いてどうするか決めて貰うから、それで良いよね?」

首が飛ばされることが"楽"なのかわからないが、俺みたいに影も形もなくなるよりマシなのかも知れない……?

「はいっ、凛が望む通りにさせてあげてください。俺としては、助けてもらうだけでありがたいので。これ以上、他人のことに関してああしろこうしろとは言えませんから……」

本当なら、俺と一緒に転生させてくれたりしたら良いのだが……

「……」

グチワロスさんは急に黙り込み、顎に手を当てて何やら考え出した。

「あの?」

「……」

「グチワロスさん?」

「……」

「だ、黙らないで下さいよ、何かおかしなことを言いましたか?」

「……」

「ぐ、グチワロス!!」

「おおっ!   な、なんだい、ハジメ君?」

「いえ、いきなり黙り込んだものですから、どうしたものかと思いまして」

「ごめんごめん。ふふん、少し良いことを思いついたからね、たまには神様サービスをしちゃおうかなと」

「サービス、ですか?」

いったいどういったものなのだろう。一発で世界を滅ぼすことができる力とか?   望んだ額が空から降ってくる力とか?

「まあまあ、それはお愉しみ、という事で。」

「お楽しみですか……」

「そういうことだよ。グダグダしてても仕方がない、さっさと能力を与えてしまおうか」

グチワロスさんはそういうと、俺の胸に右手のひらを広げ、何やらブツブツと唱え始めた。

「〜〜〜〜〜〜〜〜……よし、いいよ」

グチワロスさんは俺の胸から手を離した。え、もう終わりなのか?

「あの、今のは?」

「ん? 特殊な力をあげたんだよ? 僕からのプレゼント」

「え、今ので俺に凄い力が!? な、何も感じませんが……」

胸に手を置いただけで能力を授けられるとか、神様って本当にすごいんだなあ?

「うーん、疑っているねえ……そうだ、マッチでも出してみなよ。簡単でしょう?」

「マッチ、ですか? 出すって言っても、俺そんなもの持っていませんよ?」

「だから、創り出すんだ、マッチを」


……はあ?


「俺、普通の高校生なんですが……」

別に何か工業的な技能があるわけではないし。そもそもマッチってどうやって作るんだ? 原料や仕組みくらいは知っていても、実際にどうやるかなんてそんなの一介の高校生がわかるわけない。

「そんな事はわかっているよ。でも君はさっきの儀式でそんな普通の高校生じゃなくなったんだ。さあ、出してごらん?」

「で、でも……何らかの能力だとしても、説明されないとやり方がわかりません」

「そうだったそうだった、すまないね。いやあ、神と神間は基本ツーカー、うんとすんみたいな取引が多いからね。つい人間のレベルに合わせるのを忘れてしまったよ」

な、なんかムカつくなあ、その言い方。それに、他の神様もいるのか。じゃあ、グチワロスさんはどんな神様なのだろう?

「僕は地球担当だよ」

「えっ?」

「君の今の考えていることは全てわかると言ったじゃないか。変な事を考えずに、さあ、マッチを出してくれ。やり方は、一言"マッチ"と唱えるだけだ」

「それだけ、ですか? 材料なども必要ないので?」

「それがこの能力の特色だからね」

「はあ、わかりました……じゃあ、<マッチ>」

俺がそう呟くと、

目の前の床にマッチが一本現れた。

「おっ、マッチ……が現れましたよ」

「うん、成功だ! 良かった良かった。それにしても一本だけとは……君の想像力は一体?」

「いやあ、マッチというから、つい……その言い方ですと、俺の想像した通りに物を創り出せる能力を俺は手に入れたという事ですか?」

「うんうん、そこの物分かりはいいみたいだね、流石現代っ子だ。まあ、簡単に言えばそうなるね。君が頭の中で思い浮かべた物が創り出される。簡単なように見えて、とても危なく素晴らしい能力だ。下着から核爆弾まで創り出せるわけだからね。そこは君の想像力次第だけれど」

「核爆弾……お、俺、とんでもない能力を手に入れたんじゃあ……その俺が転生する世界、本当にラノベみたいな中世チックな世界なんですか?」

「そうだよ。だから、君はやり方次第では世界を征服する事もできる。その能力は命名するなら--『クリエイト』だね」

「お、おおー!   クリエイト! これでもし凛も俺の世界に来てくれたら、俺の第二の人生は安泰だ! 凛、待ってろよ!」

「まあまあ、その前に。君を送り出す世界には、MPという概念、現地の言葉での『魔力』 が関わってくる。異世界では君の持つ魔力以上の物は創り出せないから"安心"してクリエイトしてくれたまえ」

「えっ!? なんでも好き勝手に作れるわけじゃないんですか!?」

「そういう規定になってるんだ、ごめんだけどね」

「そんな……お、俺のチートライフが……」

そんな制限が課されるなんてありなのか? 異世界チートもそう簡単に手に入るもんじゃないのか。

「まあその点に関しては色を付けておくから、まあ心配しないでおくれよ」

「そ、そうですか、良かった」

いくら凄い能力を持っていたとしても、それを使える環境がなければ意味がない。自動車をとても上手く運転出来たとしても、何もない無人島に行けばそれほど役には立たないのと同じだ。
制限があるとはいえ、チート自体は保証されているというのならまだ希望はある!

「ところであの、一つ思いついたのですが……」

「それも無理だねえ」

「……そうですか」

「人間を復活させる事は、その能力であれば理論上は可能だ。しかし、人間というものはその魂、精神、それに脳の記憶や体に染み込んだ記憶など、様々な情報から構成されている。それらを全て素のままに創り出すとなれば、とてつもない魔力が必要だろう。果たして君の力で出来るかどうか……」

「そんなものですか、俺の能力は……」

"なんでも出来る"と、"好きに操る"のは違うということか。

「ま、まあ、凛君が良いと言えば、何かしらの処置をとるよ。宝くじになるかもしれないけれど、祈っておいてくれ」

「宝くじ?」

「細かい事は気にしなくて結構。さて、次の能力について説明しよう」

「次の能力、ですか?   クリエイトをより効果的にする能力とか?」

「まあ、まずは説明を--」


グチワロスさんは他の能力について説明を始めた--

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