GAWEX 〜復讐の鐵鬼

汰綿欧茂

GPT1 ガヴェの意志

 西暦2065年。人類は生命生息惑星・ディアーに移民した。
 3年後、地球は未曾有の内陸壊滅、自然壊滅により廃星化した。

 廃星前に移民が可能になったので、地球人はディアー人と交友関係、及び共生しあい、争いもなく和解。
 国際惑星政府の異星間調整は維持された。それによりディアーとアース(地球)の統合名称ディアースが新設された。

 そして、ディアース新暦18年の現代――。

 ディアース新生科学軍〘ウォグマー〙が組織された。
 ウォグマー隊員に入隊志願者を募集し、今現在の時点で不合格者は大多数も出たらしい。
 残った合格者はざっと数えて55人。
 百を超えた志願者のうちたったの55人だから仕方なかった。
 しかし、その合格者から特別実験で審査を通過しなければ、特級軍人ガヴェンダーになれないという。
 ガヴェンダーになるには、ガヴェソウルを燃焼しなければならなかった。

 平和ボケになるほどに退屈な世界、ディアース。
 そんな惑星にも〘脅威きょうい〙が突然のように振りかかったという。

 隕石の飛来、落下の事態が突如として発生。しかし、それはイミテーションであり、隕石を模した異星人の侵攻作戦の隠れみのであったのだ。
 侵攻作戦の機械巨人部隊、装甲魔将隊・パレブーラだ。隣接惑星ジブアの軍隊ジブアトゥループが出した先遣部隊である。
 ガヴェの意志とも言われるガヴェソウルを持ったナオヒコ・ダノルワというディアー人と日本人のハーフ青年は、審査によってガヴェファイターの要員になっていた。
 彼は、先遣部隊の敵と空中戦で反抗し、白兵戦に持ち込む事に成功。
 先遣部隊の人間の方が一枚岩だったらしく、敢え無く肉弾戦により死亡した。
 その後、先遣部隊は何事もなく侵攻作戦を中断、帰投したのだった。

 ディアース政府領内、軍事機構本部にジブアトゥループ本部からの一時撤退期を設けては〘一ヶ月停戦協議〙を発信、もはや敵側の挑発行為である。
 死亡したナオヒコの遺族である実弟がたった一人の肉親だった。
 どこの身内もなく兄を失う事の哀しみはとうに冷めた。

「ラウム君だね。君を強制的に軍本部が身柄を預からせてもらう。衣食住に不備がないよう尽くす所存だ」

 本部所長のギセル・ダリードは、彼を第二のガヴェファイターのガヴェンダーにさせようと審査を行わせた。
 結果的に通過したが本人は意志がなかった。

「おい、ラウム少年。お前な、次期ファイター搭乗員なんだぞ。気合いないのかよ」

 通過者のエネマーはナオヒコとは同年の仲間だった男だ。審査によってガヴェパンチャーのガヴェンダーとして通過された存在。

「僕じゃ足手まといです。他を探し……ウッ」
「ざけんな。ナオヒコの志を無駄にするのか?」
「そもそも軍志願はしてません。所長のヘッドハンティングです」

 その説明で、エネマーは掴んだ襟首を放した。

「所長のお墨付きだけで入隊かよ。頭来るな〜」

 そこで、傍らで聞いてたもう一機のガヴェンダーであるティノア・キム。中華系ディアース人で、ナオヒコやラウムと同じハーフだ。ガヴェマリナーの搭乗員に通過した者だ。
 ファイターは空中戦。パンチャーは陸上戦。マリナーは海中戦。各自、ガヴェソウルを蓄えては燃焼させて戦闘員として働いてもらう英雄的な希望の戦士、特級軍人なのであった。
 ラウムがファイターの乗り手になるかは時間の問題だった。

「ラウム君。わたしの勝手な独断で呼び寄せてすまないと思っている。君には5日間の猶予をあげよう。そこで除隊にするか後の生活においてはわたしが責任とるつもりだ」

 ギセルはラウムに考える期間を与えて、自由な外出を許可した。

「あの子、なんか寂しそう。何か伝えようかな……」

 ティノアはラウムに接触した。

「僕に構わずにナオヒコ兄さんの弔い合戦してください。お願いします」
「弔うのはキミがすべきよ。戦ってすべきよ。復讐じゃないわ。キミならあのガヴェファイターを扱える。うまく言えないけどね」
「そこまで気を遣わなくて良いです」
「気なんて遣ってないわ。ナオヒコさんは同僚でね。彼が生前のときに言っていたわ。俺は、ラウムや街の……いや世界の危機から救える存在になるんだってね。だからキミにはお兄さんの遺志を継いでほしいんだ」
「お姉さん……ありがとうございます。では、僕はここでお別れします。僕の意志は堅いです。兄のお墓、立ててくださりありがとうございました。では」

 どうしても引き止めてあげたい衝動が弱いのか、彼を手放したティノアだった。

 それから5日が過ぎた。
 少年、ラウムは軍事機構本部には足を向けなかったという。

 5日間の猶予期間中、ラウムは敵魔将乗り、オグミーズと接触していた。
 ラウムが後生大事にしていたロケットの中のナオヒコの写真入りのペンダントを見ては、お祈りしだした。

「何のマネです? 今更」
「自分がお兄さんを暴行死された張本人です。殺すつもりはありませんでした」
「敵なら敵を確実に狙ってください。ほら、今僕は徒手空拳の状態です。僕も兄さんみたいにやってください」
「あれは不慮の事故だ。戦闘機が威嚇撃ちしたが、降伏信号出した我々に応じ、ハッチから出て来て機銃も構えてきたという。我々5体の兵器は全員兵器から出て彼に従う気でいた。なのに白旗の我々に発砲して、交渉決裂した。自分は仕方なく肉弾戦でワサザを繰り出そうと体術でけしかけた。そうしたら暴行死してしまい、我々は怖れて撤退した。それから、侵攻作戦は行わないと決意した」

 少年ラウムは敵側の事情を受け取り、先遣部隊に加わった。
 正規トゥループメンバーという肩書きに加わり、各トゥループメンバーに決意した。

 

 

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