仲良し家族、まとめて突然!異世界ライフ

ぷい16

これから始まる2人のザガントリア王国での暮らし

「陛下には内緒にしておきますから」


 結婚式の後、王家住居区画の従者のトップである侍従頭じじゅうがしら、ヘイドリック・オスターからそう言われ、エミールとヘクディーは、一緒にお風呂に入り、エミールの部屋で過ごした後、エミールのベッドで一緒に眠ったのであった。


 眠ってから2時間くらいったであろうか。エミールとヘクディーは、空の上を浮かんでいた。


「へ?ここどこかしら。あ。エミール様」

「何度かここに来たことがあるんだけど、僕たちの体は僕の部屋のベッドの上のまま。2人の精神だけが、ここに来ているんだ。そして、ここに現われるのは…」


 エミールがヘクディーに状況説明しているところに、


「エミール、今晩は。ヘクディー嬢、初めまして。我はスキカ、神の一柱である」

「今晩は」

「初めまして。ヘクディー・ザガントリアです。よろしくお願いします」

「結婚式や結婚披露宴は見ておった。綺麗であったぞ」

「お褒めいただきありがとうございます!」


 自己紹介も済んだところで、


「エミールは、我がここに呼んで、指示を出すことで、地上では『御使い様』と呼ばれているそうだが、ヘクディー嬢よ、お主も『御使い様』を名乗ることを許そう」

「ありがとうございます。エミール様と一緒♪」

「一緒ついでに、エミールに授けたものを、お主にも授けるので、受け取って欲しい」

「まぁ、ありがとうございます」

「それではこちらに来なさい」

「はい」


 ヘクディーは、スキカの側まで行き、スキカはヘクディーの頭に手をやる。すると、スキカの手が何度か光り、


「あぁぁぁーー、あ、頭の中に、何かが入ってきますぅーーっ」


 と、ヘクディーが言い出した。

 しばらくして、光も収まって、


「ヘクディー嬢には、我と念話できるようにしておいた。それと、神代魔法の初級編の知識も授けた。エミールよ。中級編をおさめたお主なら、経験で得た知識の共有も可能であろう?早うヘクディー嬢をお主と同じレベルに引き上げてやれ」

「はい」

「それから」


 ヘクディーの体全体が光り出した。15分ほど光って、やがて光が消えた。


「今度はお主だ」


 今度はエミールの体が光り出した。15分ほど光って、やがて光が消えた。


「2人の成長曲線をいじった。3ヶ月で2人は成人の体になり、とりあえず百年、その状態をキープするようにした。後からいじらなければ、その後、段々と体は老化していくのだが、老化開始のタイミングはお主ら2人の働き次第でまたいじることになろう」


 エミールとヘグティーは戸惑って、


「ありがとうございます」

「ありがとうございます?」


 エミールは最後、疑問形になった。


「脳の成長曲線は別にいじって調整したので、学習には悪影響は出ぬであろう」

「「ありがとうございます」」

「エミールに授けた本は、ヘクディー嬢の学習の進捗しんちょく具合を見計らって、また授けよう」

「「はい」」

「エミールや、お主は聞いておろう。お主が今るこの大陸の北東と南西にそれぞれ陸地があると。次はそこを探索すればどうじゃ?」

「はい。そうします」

「それでは要件は以上だ。本のこともあるし、また近々呼び出すであろう。またな」


 そして、またスーッと2人の意識は深い眠りにつくのであった。



「く、苦しい」


 朝、エミールは自分のベッドで目が覚めた。しかし、体が何かで縛られたような圧迫感。そして、耳から首までが、何かべっとりとしていた。


「くんくん。ぺろぺろ。エミール様、美味おいしいですわ♡最高の美味びみですわ♡」


 理由が分かった。となりで寝ているヘクディーがエミールの臭いを嗅ぎながらめているのだ。


「エミール様♡私の頭の中はエミール様でいっぱいですわ♡でも足りませんわ。もっとエミール様をぎゅうぎゅうに詰め込んで下さいませ♡」


 そして、全身を使って、ヘクディーはエミールにしがみついていた。力強く。それはもう万力のように。


「&$¥@¥@」


 エミールは神代魔法を唱えた。

 望み通りヘクディーの頭の中を自分でいっぱいにしてやろうと。

 エミールの一生分の生きた蓄積をヘクディーの頭の中に送り込んだ。

 そして、本人の了承を得て、勉強分野についての情報をヘクディーからもらう。


「えへへへへへぇー。あれもエミール様。これもエミール様。エミール様と一心同体。エミール様でいっぱいですぅーー♡」


 ヘクディーの力が緩んだ。離れた。顔がだらしない。

 濡れた体をタオルで拭き、

 そして10分後、


「あ。エミール様、お早うございます」


 ヘクディーが起き出した。そして、


「…ちゃんと起きているときに言って下されば、私の全てを貴方あなた様に差し上げましたのに」


 と、ほおを赤らめて、そう言うのであった。




「それではどのくらいできるのか、テストをさせていただきます」


 勉強の時間。ヘクディーは少し離れたところで別の家庭教師と勉強している。

 家庭教師の先生の名前はマヤ・アマイン。年配のキャリアのあるベテラン家庭教師らしい。

 そして、テストも一通り終わり、


「ふむ。外国の、言葉も違う国から来たということで、不安でいっぱいでしたが、エミール様の年齢を考えますと、この国の上位貴族としては、よくできている方と言えるでしょう。これなら問題ありません。お教えしますので、これからどんどん勉強していきましょう」


 そして、2人の勉強時間も終わり、


「はぁ、勉強時間も終わりましたわ。これから2人の時間ね」


 と、ヘクディーから熱い視線を向けられてしまった。


「部屋に戻ってからね」


 それから2人はエミールの部屋に行き、2人の時間を楽しむのであった。




「家庭教師の2人から話は聞いた」


 夕食後、話があるとその場に残された2人。オーマーダム国王は、


「2人にはそろってザガントリア王立学院を受けてもらう」


 2人の進路の方針が決まるのであった。

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