仲良し家族、まとめて突然!異世界ライフ
エミールとヘクディーの結婚式
「それはいけません。我が家がヘグディー様をいただきます」
「いいや、我が家がエミール君をもらって、彼を王位に就ける」
ここはザガントリア王国の王城、王家住居区画の小会議室。
そこでオーマーダム王と二郎が言い争いをしていた。
内容は、エミールとヘクディーが結婚したら、どちらの家に席を置くか。
オーマーダム王は、ヘクディーと離れるのが嫌だった。エミールに王位を譲る譲歩をしてでも、ヘクディーを奪っていく嫌な男と暮らすことになったとしても。
1代だけとはいえ、王家以外の血筋の者を王位に就けることは嫌だったし、先祖に申し訳ない気持ちがあったし、家臣からも反対された。しかし、それでもヘグディーと離れるのは嫌だった。そこはオーマーダム王は譲れなかった。
対して二郎の方は、エミールにアハントルト王国の公爵位を譲るつもりでいた。
ミランダとの子供は他にミラダリーナが居る。彼女を公爵位に就けてもいいのだが、何分貴族家当主に女性は少ない。ニムテズ大陸全体でも片手で数えられるくらいにしか居ない。
男女差別と思わないでもなかったが、彼女を公爵位に就けたとして、他の貴族や家臣、臣民からの、無用の軋轢から避けては通れないであろう。それも日常的に。公爵位という王族の次に位の高い爵位であればなおさらのこと。
何も自分の娘をわざわざ男女差別の問題提起の矢面に立たせることは良しとはしなかった。そんなことはもっとそういった意識の高い者に任せればいいとさえ思っていた。
それに、スキカの指示がある。一国の王と星の王、それ以前に、一国の王になる準備と星の王になるための準備を両立できるものなのだろうか?
しかし、ザガントリア王家は一人娘である。まだ王夫妻は年若く、他に子供も生まれるかも知れない。しかしエミールに王位を譲るとまで言っている。その点自分が不利かなぁと、思った二郎に隙ができた。
そこをオーマーダム王は見逃さず、猛攻勢に出た。
結局二郎が負けて、エミールがザガントリア王家に婿入りすることが決まってしまったのであった。
こうなるとオーマーダム王は迅速に動いた。
二郎が心変わりしないうちに、家臣からの反発が弱いうちに、結婚式と結婚披露宴をしてしまおうと、それはもう他の執務そっちのけで準備に邁進した。
案の定、家臣からは王家の血筋以外から王を出すのはいかがなものかとか、まだ婚約したばかりだとか、結婚には2人とも若すぎるだとか反発したが、ときには強気に、ときには賛成に回ったものの力を借りて、ときには搦め手で、それはもう父王から教わった、ありとあらゆる手段を駆使して推し進めていった。
このオーマーダム王、先祖から見ると罰当たりかも知れない…。
そして、結婚式が執り行われることになった。
式には麻宗家、岐阜の二郎の両親、ザガントリアの王家に公爵家、アハントルト王国王族のアルキバン家が列席した。
「汝、ヘクディー・ザガントリアを妻とし、富めるときも貧するときも、久しく愛し続けることを誓うか」
「誓います」
「汝、エミール・アソウを夫とし、富めるときも貧するときも、久しく愛し続けることを誓うか」
「誓います」
「それでは誓いのキスを」
そして、エミールとヘクディーはキスを交わし、指輪を交換して、晴れて夫婦となった。
婚約してから1ヶ月後、
結婚披露宴が執り行われていた。
出席者は麻宗家、ザガントリアの王家に、王都に居た貴族たち。バーハーグト大陸の2組の国王夫妻にダダグッド聖神国大統領夫妻にエリーカ・ホーラルマームダラ教教皇。アハントルト王国王族のアルキバン家に公爵家に王都に居た貴族たち。バーンクリット公爵家に他のニムテズ大陸4組の国王夫妻にザッテリーニ連邦国大統領夫妻で執り行われた。
急なこととあって、サガントリア王国の貴族やアハントルト王国の貴族の列席者は寄せ集めなところがある。しかし、必ず出席して欲しい人には両王家に聞き取りをして、麻宗家がゲートを駆使して集まって来てもらっている。そこは抜かりはない。
そして始まる結婚披露宴。
ほとんどの作業はサガントリア王国王家が取り仕切ったが、演出だけは麻宗家で引き受けた。
そして始まるドライアイスやらレーザー光線やら音声付きの過去映像の投影演出やら聞いたことのない音楽やらの麻宗家ならではの演出の数々。
ニムテズ大陸側の人でも王家の演出に使われたことがあったが、それを見ていない者もおり、ざわついたが、サガントリア王国の人間は度肝を抜かれ、余計にざわついた。初めてなのもあるが、麻宗家が上品に、抑え目に、と思った演出も、サガントリア王国の人間からすればド派手だったからである。事前に過去映像で確認していたサガントリア王国王家でも、実際に見てみると、驚いたくらいである。
そして、新郎新婦のお色直しに会場の模様替え。
しかし、ダンスが始まるような模様替えではない。
食べ終わった食器や椅子、テーブルが片付けられるのは普段通りなのだが、ひな壇上のテーブルや椅子も片付けられた。
「新郎新婦のご入場です」
そこで現われたのはエミールとヘクディーなのだが、2人とも礼服で、用意していたダンス衣装ではない。来賓客はざわめき始めた。そこで、
「それではこれよりエミール・ザガントリア様の立太子式を執り行いたいと思います」
との司会のアナウンス。来賓客からはどよめきが起こる。麻宗家も寝耳に水である。
来賓客、親族共に戸惑いながらも整列させられて、もう1つの式に挑む。
「王女ヘクディーの婿、エミールよ。そなたは国を愛し、国を豊かにし、国を取り仕切り、将来国王となるべく王太子になることを望むか?」
「はい。私は国を愛し、国を豊かにし、国を取り仕切り、将来国王となるべく王太子になることを希望します」
「あい分かった。それでは、このオーマーダム・ザガントリア、国王として、そなた、エミール・ザガントリアを王太子として認めよう」
国王手すがら、エミールに王太子を示す勲章を服に付けた。
「これよりエミール・ザガントリアは王太子となった。エミールよ、精進し、良い王太子に、そして、将来良い王になれ」
「かしこまりました」
「これにてエミール殿下の立太子式を終わります。続きましてはお待たせのダンスタイムです。用意はいいですか?それではミュージック、スタート!」
そして始まるダンスタイム。
そして1時間後、騎士爵位から順に、会場を抜けていく。
「いやぁ、披露宴の演出にも驚きましたが、立太子式まで予定されていたとは。驚きましたな」
「え、えぇ。ザガントリア王国の方々が、その気になっているうちに、近しい貴族の方が集まっているうちにしてしまおうということにしたのです」
そう言いながら二郎は、内心冷や汗をかいていた。オーマーダム国王に理由を聞かされたのはダンスタイムの途中。それで、口裏を合わせて欲しいと頼まれたのだ。
その後も感想を述べられながら、帰って行く貴族たち。
そして、ザガントリア王国王家と麻宗家だけになったところで、
「ひどいですよオーマーダム陛下。私にだけでも前もって言っていただかないと」
「すまんすまん。他の反対派貴族に漏れるとマズかったのでな。会場を取り仕切るメイドたちにも内緒にしていたのだよ」
そうして無事、エミールとヘクディーの結婚式と、エミールの立太子式は無事、終了し、この星初の幼児の夫婦が誕生したのである。
そして次の日には、国民向けのエミールの立太子式が執り行われ、晴れてエミールが、新王太子と認知されたのである。
(ふっふっふっ。これでエミール様との2人きりの時間が増えますわ。邪魔は許しませんわ。笑いが止まりませんわ)
1番喜んでいるのはヘクディーかも知れない…。
一方、天界では、
「あなたのせいでエミールの準備が進まないじゃない」
「何故あなたが進行を遅らせているのですか?あなたはエミール担当でしょ?」
「だって恋愛やらお付き合いだとか結婚は我が本来の職務だし、見事な良縁だったし…」
「「「「「「だってじゃありません!」」」」」」
「…はい」
こちらはこちらで揉めているのであった。
お読み下さりありがとうございます。
今日、この、「仲良し家族、まとめて突然!異世界ライフ」も、「小説家になろう」にて、ユニークアクセス数、2万を超えました。
10万PVと、日が近くなりましたが、改めまして、
ありがとうございます。
地球や日本、リアルな世界とこの話での世界観は同一ではありません。また、ぷい16が理想とする世界観でもありません。フィクションとして楽しんで頂ければ幸いです。
「いいや、我が家がエミール君をもらって、彼を王位に就ける」
ここはザガントリア王国の王城、王家住居区画の小会議室。
そこでオーマーダム王と二郎が言い争いをしていた。
内容は、エミールとヘクディーが結婚したら、どちらの家に席を置くか。
オーマーダム王は、ヘクディーと離れるのが嫌だった。エミールに王位を譲る譲歩をしてでも、ヘクディーを奪っていく嫌な男と暮らすことになったとしても。
1代だけとはいえ、王家以外の血筋の者を王位に就けることは嫌だったし、先祖に申し訳ない気持ちがあったし、家臣からも反対された。しかし、それでもヘグディーと離れるのは嫌だった。そこはオーマーダム王は譲れなかった。
対して二郎の方は、エミールにアハントルト王国の公爵位を譲るつもりでいた。
ミランダとの子供は他にミラダリーナが居る。彼女を公爵位に就けてもいいのだが、何分貴族家当主に女性は少ない。ニムテズ大陸全体でも片手で数えられるくらいにしか居ない。
男女差別と思わないでもなかったが、彼女を公爵位に就けたとして、他の貴族や家臣、臣民からの、無用の軋轢から避けては通れないであろう。それも日常的に。公爵位という王族の次に位の高い爵位であればなおさらのこと。
何も自分の娘をわざわざ男女差別の問題提起の矢面に立たせることは良しとはしなかった。そんなことはもっとそういった意識の高い者に任せればいいとさえ思っていた。
それに、スキカの指示がある。一国の王と星の王、それ以前に、一国の王になる準備と星の王になるための準備を両立できるものなのだろうか?
しかし、ザガントリア王家は一人娘である。まだ王夫妻は年若く、他に子供も生まれるかも知れない。しかしエミールに王位を譲るとまで言っている。その点自分が不利かなぁと、思った二郎に隙ができた。
そこをオーマーダム王は見逃さず、猛攻勢に出た。
結局二郎が負けて、エミールがザガントリア王家に婿入りすることが決まってしまったのであった。
こうなるとオーマーダム王は迅速に動いた。
二郎が心変わりしないうちに、家臣からの反発が弱いうちに、結婚式と結婚披露宴をしてしまおうと、それはもう他の執務そっちのけで準備に邁進した。
案の定、家臣からは王家の血筋以外から王を出すのはいかがなものかとか、まだ婚約したばかりだとか、結婚には2人とも若すぎるだとか反発したが、ときには強気に、ときには賛成に回ったものの力を借りて、ときには搦め手で、それはもう父王から教わった、ありとあらゆる手段を駆使して推し進めていった。
このオーマーダム王、先祖から見ると罰当たりかも知れない…。
そして、結婚式が執り行われることになった。
式には麻宗家、岐阜の二郎の両親、ザガントリアの王家に公爵家、アハントルト王国王族のアルキバン家が列席した。
「汝、ヘクディー・ザガントリアを妻とし、富めるときも貧するときも、久しく愛し続けることを誓うか」
「誓います」
「汝、エミール・アソウを夫とし、富めるときも貧するときも、久しく愛し続けることを誓うか」
「誓います」
「それでは誓いのキスを」
そして、エミールとヘクディーはキスを交わし、指輪を交換して、晴れて夫婦となった。
婚約してから1ヶ月後、
結婚披露宴が執り行われていた。
出席者は麻宗家、ザガントリアの王家に、王都に居た貴族たち。バーハーグト大陸の2組の国王夫妻にダダグッド聖神国大統領夫妻にエリーカ・ホーラルマームダラ教教皇。アハントルト王国王族のアルキバン家に公爵家に王都に居た貴族たち。バーンクリット公爵家に他のニムテズ大陸4組の国王夫妻にザッテリーニ連邦国大統領夫妻で執り行われた。
急なこととあって、サガントリア王国の貴族やアハントルト王国の貴族の列席者は寄せ集めなところがある。しかし、必ず出席して欲しい人には両王家に聞き取りをして、麻宗家がゲートを駆使して集まって来てもらっている。そこは抜かりはない。
そして始まる結婚披露宴。
ほとんどの作業はサガントリア王国王家が取り仕切ったが、演出だけは麻宗家で引き受けた。
そして始まるドライアイスやらレーザー光線やら音声付きの過去映像の投影演出やら聞いたことのない音楽やらの麻宗家ならではの演出の数々。
ニムテズ大陸側の人でも王家の演出に使われたことがあったが、それを見ていない者もおり、ざわついたが、サガントリア王国の人間は度肝を抜かれ、余計にざわついた。初めてなのもあるが、麻宗家が上品に、抑え目に、と思った演出も、サガントリア王国の人間からすればド派手だったからである。事前に過去映像で確認していたサガントリア王国王家でも、実際に見てみると、驚いたくらいである。
そして、新郎新婦のお色直しに会場の模様替え。
しかし、ダンスが始まるような模様替えではない。
食べ終わった食器や椅子、テーブルが片付けられるのは普段通りなのだが、ひな壇上のテーブルや椅子も片付けられた。
「新郎新婦のご入場です」
そこで現われたのはエミールとヘクディーなのだが、2人とも礼服で、用意していたダンス衣装ではない。来賓客はざわめき始めた。そこで、
「それではこれよりエミール・ザガントリア様の立太子式を執り行いたいと思います」
との司会のアナウンス。来賓客からはどよめきが起こる。麻宗家も寝耳に水である。
来賓客、親族共に戸惑いながらも整列させられて、もう1つの式に挑む。
「王女ヘクディーの婿、エミールよ。そなたは国を愛し、国を豊かにし、国を取り仕切り、将来国王となるべく王太子になることを望むか?」
「はい。私は国を愛し、国を豊かにし、国を取り仕切り、将来国王となるべく王太子になることを希望します」
「あい分かった。それでは、このオーマーダム・ザガントリア、国王として、そなた、エミール・ザガントリアを王太子として認めよう」
国王手すがら、エミールに王太子を示す勲章を服に付けた。
「これよりエミール・ザガントリアは王太子となった。エミールよ、精進し、良い王太子に、そして、将来良い王になれ」
「かしこまりました」
「これにてエミール殿下の立太子式を終わります。続きましてはお待たせのダンスタイムです。用意はいいですか?それではミュージック、スタート!」
そして始まるダンスタイム。
そして1時間後、騎士爵位から順に、会場を抜けていく。
「いやぁ、披露宴の演出にも驚きましたが、立太子式まで予定されていたとは。驚きましたな」
「え、えぇ。ザガントリア王国の方々が、その気になっているうちに、近しい貴族の方が集まっているうちにしてしまおうということにしたのです」
そう言いながら二郎は、内心冷や汗をかいていた。オーマーダム国王に理由を聞かされたのはダンスタイムの途中。それで、口裏を合わせて欲しいと頼まれたのだ。
その後も感想を述べられながら、帰って行く貴族たち。
そして、ザガントリア王国王家と麻宗家だけになったところで、
「ひどいですよオーマーダム陛下。私にだけでも前もって言っていただかないと」
「すまんすまん。他の反対派貴族に漏れるとマズかったのでな。会場を取り仕切るメイドたちにも内緒にしていたのだよ」
そうして無事、エミールとヘクディーの結婚式と、エミールの立太子式は無事、終了し、この星初の幼児の夫婦が誕生したのである。
そして次の日には、国民向けのエミールの立太子式が執り行われ、晴れてエミールが、新王太子と認知されたのである。
(ふっふっふっ。これでエミール様との2人きりの時間が増えますわ。邪魔は許しませんわ。笑いが止まりませんわ)
1番喜んでいるのはヘクディーかも知れない…。
一方、天界では、
「あなたのせいでエミールの準備が進まないじゃない」
「何故あなたが進行を遅らせているのですか?あなたはエミール担当でしょ?」
「だって恋愛やらお付き合いだとか結婚は我が本来の職務だし、見事な良縁だったし…」
「「「「「「だってじゃありません!」」」」」」
「…はい」
こちらはこちらで揉めているのであった。
お読み下さりありがとうございます。
今日、この、「仲良し家族、まとめて突然!異世界ライフ」も、「小説家になろう」にて、ユニークアクセス数、2万を超えました。
10万PVと、日が近くなりましたが、改めまして、
ありがとうございます。
地球や日本、リアルな世界とこの話での世界観は同一ではありません。また、ぷい16が理想とする世界観でもありません。フィクションとして楽しんで頂ければ幸いです。
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