仲良し家族、まとめて突然!異世界ライフ

ぷい16

ヘグディー、初めての外出

「ジロウ・アソウよ、そなたに公爵位と王都に屋敷を授ける」

「謹んでお受け致します」


 ここはハンシオーガ王国王城ナゲディデルカ城、謁見の間。

 国王ジャスパー・ウォムスレーから、二郎に公爵位と王都の屋敷をたまわったのである。

 場所を移して王城内、王家住居区画のサロン。


「いやぁ、ジロウ君、受け渡すのが遅れてすまんかったね」

「いえいえ。それよりこんなにも厚遇していただいて大変ありがたいです」


 ハンシオーガ王国はここ数年、忙しかった。

 内政の立て直しに西方諸国連合各国との不戦条約の締結、西方諸国連合への加盟、それに、西方諸国連合各国の協力を得ての古代の通信施設の発掘から再起動。


「君の子供たちにも大変世話になった。改めて礼を言う」

花菜香はなか風雅ふうがに伝えておきます」


 花菜香はなか風雅ふうがも、古代の通信施設の発見、発掘と、再稼働に協力したのである。


「しかし、に落ちんのう。ニムテズ大陸全土で通信網が復活したというのにまだ、どこかにつながる回線があるというのは」


 ハンシオーガ王国でニムテズ大陸全土の通信網が全て開くとの予想であったが、その予想に反して、国外向け通信網が、まだ開いていないところがいくつかあり、それでも全土で問題なく使えているのである。


「まぁ、それは調査を続けていけば分かるであろう」


 そう結論づけて、その後もジャスパー国王と、二郎の間で話し合いは続くのであった。


     *


 風雅ふうがはここ最近大変であった。

 サガンガ王国での領主の仕事に、ハンシオーガ王国での通信網関連の仕事、ダダグッド聖神国でのコンピューターの修理。そして、


「今度はナサスティア王国からコンピューターを見て欲しいと頼まれた。あちらは早く来て欲しいそうだがお前にも仕事があるだろう。あちらにもお前が多忙なことは伝えてあるから無理はするな」


 二郎とエミールが、次々とコンピューターの修理の依頼を持って来る。

 今やっているダダグッド聖神国に、ナサスティア王国、ザガントリア王国に、スペニシア王国。バーハーグト大陸全土から、コンピューターの修理の依頼を受けているのである。


「こんなに仕事がまっていたら、休む暇なんかないじゃねぇか」


 風雅ふうがも疲れがまってきている。


「休みたい」


 そう、愚痴ぐちをこぼす風雅ふうがなのであった。


     *

「ほら、あれがアハントルト王国の王城、アバストロフ城だよ」

「まぁ、素敵なお城ね」

「母が王族出身だから、前もって話しをしておけば、中にも入れるし、後日、挨拶もしておかなくちゃね」


 約束通り、エミールとヘクディーは、外へ出かけていた。

 エミールの父、オーマーダム国王は、外出は危険だからと反対されたが、ヘクディーに、例の居場所を知らせる魔道具をあげ、護衛を付けることで、何とか了承を得るのであった。


「私、外に出るのが初めてだから、それだけでも楽しくなっちゃうし、それに、エミール様と一緒だから、とても楽しいわ」


 そう、ヘクディーは第1王女。それにまだ幼い。身代金目的や王族への強要目的の誘拐や、王族へ反感を持つ者からの殺害と、外出には危険が伴う。ゆえに王城の王家住居区画以外への立ち入り、王城からの外出は禁止されていたのである。


「外に出るとこんなにも気が晴れるものなのね」


 その後、王都、ペンテレストロフのあちこちを見て回り、カフェで食事とお茶をして、その後、洋服店やらアクセサリーショップなどを見て回り、


「頼んでおいた物、できあがっているかな?」

「はい。ご用意できております」


 アクセサリーショップでエミールがあらかじめ注文しておいた、銀の髪留めを、ヘクディーにプレゼントするのであった。


「まぁ、素敵な髪留め。本当に受け取ってもいいの?」

「ええ。ヘクディー様のために作ったものだから受け取って欲しい」

「ありがとうございます」


 外に出るともう日が傾いていて、空も赤らんできている。


「そろそろ家に帰らなくちゃ」

「初めてのお外、楽しかったです。ありがとうございます」


 そして、2人は麻宗邸へと帰り、麻宗家の面々と食事の後、エミールは、ヘクディーをザガントリアシティの王城へ帰すのであった。



 その後、エミールとヘクディーの生活にも変化があった。

 アハントルト王国の屋敷にヘクディーの部屋を、ザガントリアシティの王城にエミールの部屋を設けられ、1週間ごとに交替で、それぞれの勉強の後、一緒に過ごすことになったのである。

 これは、ヘクディーが、エミールともっと長く一緒に居たいとあまりにも強く要望したので、オーマーダム国王と、二郎との間で、何度か話し合いが行なわれ、そういう取り決めになったのである。

 エミールがザガントリアシティの王城で、夕食を食べるときのオーマーダム国王の視線が痛い。

 婚約の許可は出したものの、オーマーダム国王は、エミールのことをヘクディーを奪い去る敵と認識しており、視線が冷たいのである。

 エミールとヘクディーが一緒に居る時間が増えたため、エミールはヘクディーに、魔法を教え始めた。

 始めは便利魔法から。

 ヘクディーは、エミールと一緒にられればそれで良く、エミールの言うことをよく聞いて、最初は初めての魔法ということで、なかなか思うようにいかなかったが、徐々に魔法の使い方に慣れていき、魔法を憶えるのが早くなっていった。


「始めはなかなか使えずイライラしましたが、コツを掴むと楽しいですわね」

「それは良かった」


 ヘクディーは、魔法を憶えるのが楽しくなっていく。

 こうして日々は過ぎていくのであった。

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