仲良し家族、まとめて突然!異世界ライフ

ぷい16

妻たちの欲求不満

夜の営みの話です。
読み飛ばしても、本筋に影響はありませんので、お嫌いな方はこのお話は飛ばして下さい。



「最近愛が足りませんわ!」

「そうです!お姉様の言うとおりです!」


 ミネルバの発言をカッテリーナが後押しする。


「私は十分だと思うけど。あまりくっつかれるとうっとうしいし」

「「かおるさんはこの間、ジロウさんと二人っきりだったじゃない!うらやましい!」」


 数年、この麻宗家の女の園をひきいてきたミネルバと、その補佐をしてきたカッテリーナ。この2人には、エテラーシアもヨーネスティンもミランダも、ましてや新入りのアメリアも、誰も逆らえないのだが、かおるはそれ以上だった。

 数年間のサガンガ王国での筆頭宮廷魔道士と、西方諸国連合魔道士団総長という奉公が終わったかおるが麻宗家に戻った途端、瞬く間に女帝・かおるがこの女の園の頂点に返り咲いた。


「その、最近、ジロウさんとの夜の営みが全くないのです」


 ミネルバがためらいがちにそう告白する。


「お姉様もなんですの?私もずいぶんとご無沙汰ぶさたで、その、一人で処理してますの」


 それに追従して、カッテリーナも、話している間に恥ずかしくなり、尻つぼみになりながら告白した。


「私もありませんわ」

「私もありません」

みなさん無かったのですか?私もありません」

「私も、妊娠したと分かってからはありません」


 順番に、エテラーシア、ヨーネスティン、ミランダ、そしてアメリアが、そう告白する。するとかおるは、


「おかしいわね。あの人性欲が強かったはずなのに」

「「「「「「「えっ!」」」」」」」


 かおるが爆弾発言をした。他の6人は、それを知らなかったのである。


「え?知らなかった?おかしいわね。彼、新婚当時は毎晩4回は求めてきたのに」

「「「「「「「えっ!」」」」」」」


 かおる以外の妻たちは知らなかった。かおる以外の妻たちの印象は、二郎は普通、やや淡泊よりだったからだ。


「ジロウさん、そんなそぶりは見せなかったのに…」

「ジロウさんは私たちにも猫を被っていたということ?!」

「若い頃のかおるさんに満足して、枯れてしまった訳ではないですわよね?」


 エテラーシアの「枯れてしまった」発言により、一同静まりかえる。


「もう、愛してもらえなかったらこの欲求はどうしたらいいの?」

「そんな悲しいことは言わないで!お姉様!」

「確かに、抱いてもらえなかったら鬱憤うっぷんまりますよね」

「あれを生きがいに、麻宗家の妻をしている部分もあるからな」

「えっ?私、まだ若いのに、あれが無くなったら困る!」

「大人の男の人って、あんなにも魅力的なことができるんだって、結婚して良かったって一番思った瞬間でした」


 かおるは妻たちの発言にドン引きしていた。みな、ここまで思っていて、ここまで我慢して、ここまで愛してもらいたがっていて、自分はついて行けないと。


「じゃ、じゃぁ何であなたたちは誘惑したり、迫ったりしなかったの?」

「「「「「「ジロウさん、そっちの方面は淡泊だと思ってましたから」」」」」」

みなで相談して、嫌われないように、アプローチしないようにしていたのです」


 かおるは遠慮しすぎだと思った。


「別にしたいとき、したいって言えばいいじゃない!相手は夫よ!彼には義務があるの。女を満足させられない夫はてられても仕方がないわ!」

「「そうなんですか?」」

「無理に迫ると離縁されると思って…」

「女から誘ってもいいんですね!」

「男の人の気分次第じゃないのですね?」

「あれは、してくれると幸せですよね」


 かおるは、そろいもそろってこの妻たちは、性欲が強いなと思った。そして、


「では、ここで聞きます。今後、二郎に抱かれたい人は?」

「「「「「「はい!」」」」」」


 全員の手が挙がった。


「全員が抱かれたいのね。分かったわ。あなたたちは話しづらそうだし、私が代表して二郎に話すから。私は別に、そっち方面は嫌われてもいいし」

「「「「「「是非ぜひ!お願いします!」」」」」」


 そして、雰囲気ふんいきが一気に弛緩しかんした。


「こちらからアプローチしても良かったんですね」

「夜のお勤めが夫の義務。良いことを教えてもらいました♪」

「また、あの快感と幸福が♡想像しただけで…」

「私は元気な子を産んで、それからですね」

「私は妻たちに、無用な我慢がまんを強いていたのですね。代表代理として未熟でした。さすがはかおるさん。格の違いを改めて思い知りましたわ」

「私もお姉様の補佐を全うできなくて無念」


 それぞれに思ったことを口走るのであった。

 そして、まだ二郎には何も伝えていないのに安心した妻たちは、二郎にこんなことをしてもらったと話し始めた。みな、同じ夫の妻という意識があったが、夜の営みに関しては恥ずかしくて口には出せなかったのである。

 時間いっぱいまで夜の営みについて話し合った妻たちは、満足してそれぞれの予定に戻っていくのであった。


     *


「毎晩持て余して、一人で処理していたんですって!」

「「「「「「まぁ、何てこと…」」」」」」


 あまりにもショックで、シンと静まりかえる。

 二郎とかおるとの話し合いが気になって、急遽きゅうきょ、無理矢理に時間を作って行なわれたお茶会。そこでかおるから話された一言に、かおる以外の妻たちはショックのあまり、シンと静まりかえるのであった。


「で、何故なぜ、性欲を持て余した妻たちがこんなにもるのに、何故なぜ、誰も誘ってくれなかったのですか?」

「子供は1人の妻につき、2人までって決めていたらしいのよ。勝手な自分ルールよね」


 かおるは、怒り半分、あきれ半分でそうこぼした。


「で、私、そんな勝手なルールを押しつけないでよって怒ったわ!他の妻たちも欲求不満で爆発しそうなのに何を勝手なルールを作ってって。そうしたら希望者には男の務めを果たすって言質を取ったわ」

「「「「「「それは、夜の営みの復活っていうことですか?」」」」」」

「ええ。そこは念入りに聞いたから間違いないわ」


 そして、その日の夜以降、麻宗家に夜の営みが戻って来た。


「そうしたら、旦那様は勝手な自分ルールで男の義務を果たさなくて済まないとあやまってくれましたわ」


 かおると妊娠中のアメリア以外は晴れやかな表情で、実に嬉しそうであった。


「「どちらかが枯れるまでお付き合いください」とお伝えしたら、「分かった。他の妻たちも枯れるまで相手するよ」と言質げんちが取れましたわ」


 いつにも増してかしましい午前のお茶会。そして、いつにも増して、妻たちは輝いていたのであった。

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