花菜香、教習所へ行く

　ザガンガ王国へ来た当初は一緒に召喚されたキャンピングカーでの暮らしが普通であった。

　たまに王城やら薫かおるの実家のバーンクリット公爵家で泊まることもあったが、基本はキャンピングカー泊であった。

　車は父の二郎に言えば用意してくれる。こちらで運転するのに日本の免許は必要ない。そして、日本で生活するつもりはない。

　しかし、いっぱしに運転できるようになっておきたい。あの、キャンピングカーを運転できるようになるくらいまでは。


「と、言うわけで、私、教習所へ行ってきます！」

「御者なら君がする必要はない。御者にその、運転という技能を身につけさせればいいじゃないか」

「私、自分で運転できるようになっておきたいんです」


　何とか私、リーガンズ花菜香はなかは、リーガンズ伯爵家の面々を説得して、日本の教習所へ。

　日にち短縮のため、合宿免許にした。

　順調にいけば半月で教習所は卒業できる。その後、運転免許試験場に行って、試験を受けたり、免許証を発行してもらわなければならないが。

　これまでに手続きは済ませてある。

　あとは教習を受けるだけである。


「当ドライビングスクールをお選びいただきましてありがとうございます。それでは当校の説明からさせていただきます」


　学科にも含まれていない学校の説明やら学科教習、技能教習の受け方、宿の説明が始まった。

　それが終われば早速学科教習が始まる。

　学科はとりあえず、真面目に授業を受けて、後に控える学科試験や、地元の運転免許試験場で行なわれる本試験で落ちなければいいのだ。


　次の時間は、教習所内のコースの中とは言え、実際に車を運転する技能教習だ。

　車の周りの安全をを確認して、周りに注意しながらドアを開けて乗り込み、ドアを閉める。

　教官の指示に従い、シートベルトをしてエンジンをかけて、サイドブレーキを降ろし、クラッチを踏みながらギアを１速に入れて、安全確認をして半クラッチにしながら走り出し、ギアチェンジを挟みながらコースをぐるぐると回る。

　最高速４０ｋｍ／ｈを目標に運転する。

　時間になれば、安全を確認しながら停車位置に車を止め、ニュートラルに。サイドブレーキをかけてエンジンを切る。

　最後に教官のハンコをもらい、１時限目の技能教習修了。安全確認をしながら車を降りて、建物内に戻った。


　学科教習では、日頃生活をしていて知らなかったことも憶えなくてはならない。

　歩いていて最高速度なんて関係ないし、一方通行なんて言うのも歩きには関係ない。

　学科教習で、知らないことを知るようになる。道路に優先順位があったりしたり、駐車禁止と駐停車禁止の違い、左折するときにはできるだけ道路の左に寄ることや、踏切前では必ず一旦停止し、１速で渡りきるなど。

　資格を取って、できることが増えると、その分、知識も必要になるし、守らないといけないことが増え、危険も増す。


　技能教習でもやることや難易度が高まっていく。

　安全を確認しながら方向指示器を出して、安全に左折、右折をしたり、コースアウトをしないようにＳ字カーブやクランクを渡りきったり、坂道発進したり、踏切での安全確認やら踏切の渡り方などなど。


　花菜香はなかは教習所通いを経て自分の成長を実感するのであった。


　そして、修了検定の技能試験を合格して仮免許学科試験へ。


　言い回しで逆の意味になるからそういうひっかけも多い。問題文を注意深く読み、問題を解いていく。


　試験が終わって採点で待たされ、結果発表。仮免許公布されました。


　仮免許が発行されたら技能教習が、校内のコースから、校外の一般道になります。

　一般道なので、教習所に関係のない一般の人やら一般の車両、教習所では見かけなかった二輪車も居います。


　習ったことを確認しながら手順を間違えないように走行し、教習所へ帰って停車処理をしてハンコをもらいます。

　教習所の中から外へ出たことで、情報量が増え、何倍も頭を使います。

　やっと技能教習が終わった。頭はクタクタです。


　そして、学科や技能の講習が終わり、卒業検定です。

　信号、人の流れ、車の流れ、標識などを頭の中で処理し、決められたコースを進みます。


　教習所へ戻ってきて判定。合格がもらえました。


　休憩を挟んで卒業式。卒業証明書が交付されました。


　あとは学科を復習して地元の運転免許試験場での本試験です。

　この試験でも、言い回しで逆の意味になるからそういうひっかけも多い。問題文を注意深く読み、問題を解いていくことにします。


　本試験も一発合格して免許証の交付手続きに進めます。


　手続きをして無事、運転免許証が発行されました。


　目的の運転免許証を手に入れたので、ザガンガ王国へ帰ります。


「ハナカ、戻って来たか。目的は果たせたのかい？」


　夫のジョージアが、心配して聞いてきます。


「はい。無事、免許が下りました」


　そして、家族に迎えられ、日常に戻るのでした。


　　　　　＊


「花菜香はなか、車の準備が整ったぞ」


　父が訪ねてきてそう教えてくれました。


　さて、父と一緒に新車を迎えに行きますか！