アハントルト王国の屋敷

「アブラージモさん、サンガローニってどんなところですか？」


　サンガローニとは、二郎がもらった領地の名前である。

　執事のアブラージモが言うには、サンガローニはアハントルト王国の東端に位置し、大きな街道が通っているため宿場町がいくつかあるらしい。それと、麦の一大生産地であり、自領での消費を大きく上回るため、他領に小麦を売っているらしい。


「何故王様はよそ者にそんな重要な土地をくれたんだろう？」

「それだけ功績が認められたんじゃないでしょうか」


　まぁ、クーデターを止めたんだし、評価されるのは仕方がないか。

　それよりも、今日はここに泊まれるのだろうか？アブラージモに確認する。


「今日からしばらくこちらを拠点に動くつもりだけど、泊まって大丈夫か？」

「もちろん。ここは侯爵様のお屋敷ですので何気兼ねなくお泊まり下さい」

「家族がこの屋敷を見に来るついでに夕食も摂る。私も合わせて９人分だ。料理の支度も任せる」

「かしこまりました」

「上の娘が１２才、息子が１０才になる。学校に入るとしたらどういう所があるか調べておいてくれ」

「かしこまりました」

「それと、近々サンガローニへ行くから連絡しておいてくれ」

「かしこまりました」


　アブラージモに用事を任せて二郎は屋敷を見て回る。うん。大きいし広い。ザガンガ王国の屋敷よりも広い。もし家族全員でこちらの屋敷に引っ越してきても十分暮らせる。

　庭に出てみる。花々が咲さいており、見ていて綺麗だ。


「街を見てみたい。誰か、案内を頼めるか？」

「私がお供します」


　執事の１人が案内してくれるようだ。


「本来でしたら侯爵様が徒歩で出歩くことはないのですが」

「そうだね」


　閑静な貴族街から、徒歩で平民街へ。大通りを散策したあとは１本裏手の路地まで入っていく。

　思ったこと。屋敷もデカいと思ったが、街もサガンガ王国と比べて大きかった。


　屋敷まで戻ろうとしたら、貴族街へ入るところで止められた。


「身分証をお願いします」


　二郎は侯爵を示すメダルしか持っていなかった。二郎はメダルを見せた。


「結構です。お入り下さい」


　貴族街の奥の方の屋敷へ帰る。


「お帰りなさいませ旦那様」

「歩いていい運動になったよ」

「ところで、馬車の手配はどうされますか？」


　やはり聞かれたか。この世界では移動といえば馬車になる。さっき、近々サンガローニへ行くと言ったから馬車でと思ったのだろう。


「浮遊魔法で行くから必要ない」

「浮遊魔法というのはどんなものでしょう？」


　聞かれたので、二郎は手の空いているものを庭へ呼んで、飛んで見せた。


「浮遊魔法はこのように飛んで移動する魔法です。馬車より速いです」


　すると、アブラージモは、


「すると、護衛や身の回りの世話をする者も浮遊魔法が使えるのでしょうか？」

「護衛や身の回りの世話をする者は連れて行かない。空を飛んでいたら攻撃を受けないし、夜にはゲートでこちらに戻ってくるから」

「なるほど」


　夕方までこの屋敷にある本で読書をして過ごし、夕方、サガンガ王国の屋敷にいる家族を連れて来た。ちなみに赤ちゃんは残してきた。使用人のみんなが面倒を見てくれるだろう。

　家族に屋敷の中を案内してお腹の大きなミネルバとカッテリーナを屋敷に残し、ゲートで家族を王都観光に連れ出した。

　屋敷に帰ってきて夕食だ。

　家族揃そろって食卓を囲み、出された料理を食べていく。

　前菜にパスタ、肉料理が来て最後にデザートだった。外国ということで身構えていたが、特に問題のある味付けは無かった。

　食後にシェフが出てきた。初めて料理を出したので、評価が気になったらしい。

　味付けに特に問題がなかったこと、好みを伝えると下がっていった。

　家族の皆みなが場所を憶えたろうからサガンガの屋敷へ送り届け、明日の旅支度をして経路を確認して寝ることにした。


　翌朝からサンガローニに向けて昨日の計画通りに飛んだ。夕方まで飛んでゲートで王都のアソウ邸まで戻り、翌朝には昨日まで飛んだ場所まで戻ってまた夕方まで飛んだ。

　そうすること４日、サンガローニの領都、アレストロフへと着くのであった。