仲良し家族、まとめて突然!異世界ライフ

ぷい16

車でドライブ

「最近変わった乗り物を見ますわね」


 そんなことをぽつりと言うヨーネスティンに、かおるは、


「車のことかしら?そう言えば、エテラーシアもヨーネスティンも車、乗ったことなかったっけ?」

「ないですね」

「ないです」


 そう言えば、魔王討伐の頃には活躍したキャンピングカーも、それ以来、ゲートの魔法を憶えたり、浮遊魔法を憶えたりして、使うことがめっきりと少なく、というか、なくなっていることに気がついた。


「うちにもあるけど乗ってみる?」

「え、乗れるんですか?」

「乗ってみたいです!」


 乗ってみたいというので、ドライブしてみることにした。


 「ドライブしよ!」と声をかけたら、ミネルバとカッテリーナも付いて来るというので、かおるを運転手にして、ミネルバ、カッテリーナ、エテラーシア、ヨーネスティンで、ドライブに出かけた。

 向かう先は前にドライブで行ったドルゴネルの洞窟。街では徐行。東門を抜け、街道を全速力で飛ばす。


「わぁ、速い速い!」

「こ、こんなに速く進めるなんて」

「揺れるから舌を噛まないように黙っていて。ていうか、私が速度を落とせばいいのか」


 街道とは言っても多くの旅人に踏みしめられて固くなっているだけで日本の道路みたいに綺麗に舗装されているわけではない。なのでいくら車とはいえ、道路のでこぼこを殺しきれずに結構揺れる。かおるは速度を落とし、


「これくらいの揺れなら大丈夫でしょう。しゃべってもいいわよ」


 お許しが出たので、みなで感想を言い出した。


「馬車より揺れが少ないですわね」

「この椅子の座り心地も馬車よりいいですわ」

「速度を落としたとは言っても馬車よりも速いですわね」


 車への感想はおおむね好印象のようである。


 話しているうちに、ドルゴネルの洞窟に到着。電動モードに切り替えて、洞窟の中へ。

 いくらか中へ入って、前を照らしているライトを消すと、


「まぁ、きれい」


 バトクリフ苔で幻想的な光を放つ洞窟内。みな、時を忘れ、しばらく見とれていた。

 それからしばらく走るとUターンできるほどの広い場所に出る。車をUターンさせ、かおるは、


「ここなら外に出られるけど、どうする?」


 ライトを消し、みなで外に出てみた。みな、思い思いに歩き、その幻想的な光を楽しんだ。


 満足した者から戻り、車に全員乗り込んだところで車は帰路に就くのであった。


「どう?楽しかった?」


 かおるが聞いてみると、


「あんな速い乗り物に乗ったのは初めてです」

「あの洞窟、綺麗でした」


 口々に感想を言い合った。

 そんな中、ヨーネスティンはぽつりと、


「そう言えば、二郎様もかおる様もいろいろと変わったものをお持ちですわね。車にしてみたり、その、スマホ?という板にしてみたり」


 ミネルバとカッテリーナは、「あぁ、その話かぁ」というような顔をしている。よい機会なので、かおるは、


「私は、一時期異世界に飛ばされていたのよ」


 と、話し始めるのであった。

 かおるは、文化も言葉も分らない、異世界日本に飛ばされ、孤児として苦労したこと、こちらではエリアリアーナと呼ばれていたが、あちらではかおるという名で過ごしていたから今でもかおるという名で呼ばせていること、二郎と結婚して2児のママになったこと、勇者に選ばれた二郎に引っ張られる形でこちらに戻って来たこと、勇者のパーティーとしてカーライルたちを付けられたこと、あまりにも辛い過去で、こちらで暮らしていたことを、時間が経ってから思い出したことを簡素に、しかし要点は掴つかんで語った。


「そんな辛い過去があったのですね」


 ぽつりとヨーネスティンは、そんなことを言った。


「で、その、私を異世界に飛ばした張本人は、今ではこの国の王太子妃になったのよ」

「妹のアヴァリン様ですか?」

「そう」

「しかし、1人で異世界転移できる魔力量や技術力、バーンクリット家は化け物ぞろいです」


 話が落ち着いたところで、


「あなたたちも異世界旅行してみる?」


 かおるは続ける。


「何かあるといけないから、私と二郎が休みが一緒の日で、花菜香はなか風雅ふうがも案内に付けて。4人も案内がいたら怖くないでしょ?」


 かおるは、そんな提案をしてみるのであった。

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