仲良し家族、まとめて突然!異世界ライフ

ぷい16

副長の指名と最後の地方視察

「エテラーシアちゃんはどれくらい魔力量を持っているかな? フーエル・レムナント」


 とある休みの日、かおるは、エテラーシアの魔力量を調べていた。


「うん。上級クラスの魔力量ね。魔法を習ったことは?」

「習ったことはありますが、ちょっとした便利魔法が使えるくらいで」

「じゃぁ、私が魔法の使い方を教えるわね」


 かおるは、ミネルバとカッテリーナのときと同じように、エテラーシアに魔法を教えるのであった。


「その、初めてなので、優しくして下さいね」



 一方、二郎は仕事である。筆頭宮廷魔道士と、宮廷魔道士副長が同時に休むと具合が悪い。


「あと2人、副長を増やそうかなぁ」


 帰宅後、そのことをかおるに話す。


「副長をあと2人増やさないか?俺とかおる、どちらかが宮廷魔道士として詰めてなきゃならないってキツいだろう」

「そうねぇ。それなら二郎、候補には誰を挙げる?」

「パッソン・ソーウェンとデリシャス・アウェイクンかな?かおるの考えは?」

「私もその2人ね。異論は無いわ」

「じゃぁ、決まりだね」


 そうして、宮廷魔道士、パッソン・ソーウェンとデリシャス・アウェイクンを副長に任命し、二郎とかおるの二人で、副長に育てるのであった。


 そして、二郎が宮廷魔道士が休みなときは、エテラーシアと一緒にタンザナティア王国の王城に出向き、ジンジョルノ王と、オリビア王妃と共に、披露宴の打ち合わせを行なうのであった。


「この、スモークというのはどのような演出なのかね?」

「それでは、過去映像をご覧に入れますね」


 二郎は、遠見の魔法と投影の魔法の合成魔法で過去映像を投影し、


「このように、床面が白い煙で覆われます」

「ほぉ。これはきれいだな。では、レーザー光線というのは?」


     …


「我々の知らない、様々な演出があるものですね」

「まぁ、使わずに、古来の披露宴でもいいとは思うのですが」

「いやいや、新しい物を見せて、度肝どぎもを抜かせてやろう!」


 話はさらに深まるのであった。



かおるさんのお陰で、随分ずいぶんと魔法を覚えました。自分にコミュニケーションの魔法をかけて、言葉の不自由さも無くなりました。その、日本にはまだ行けませんが」

「そんなの、私だって行けないわよ」

「単独で転移が使える二郎さんとかおるさんがおかしいんです」


 転移魔法は本来、宮廷魔道士10人とか20人とかでやる儀式魔法。負担を減らすため、魔法陣の補助を使うこともある。それをたった1人で扱う二郎さんとかおるは、とんだフザけた存在なのであった。


「では、暇ですし、二郎さんの部屋で、映画でも見ましょうか?」

「「賛成!」」


 二郎の部屋では、インターネット回線を引いている。見ようと思えばVODビデオ・オン・デマンドで映画が見られる。しかし日本語は難しい。それにエテラーシアはガカスドロフ語の習得でいっぱいいっぱいである。ミネルバとカッテリーナも、タンザナティア王国の公用語、アーメイヤス語の勉強中である。なので、3人はそれぞれ自分にコミュニケーションの魔法をかけて、日本の映画を楽しむのであった。


「さて、新しい2人の副長も慣れてきたことだし、結婚披露宴の準備という不安材料はあるけれど、地方視察の最後、準備しましょうか」


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 かおるのその言葉で宮廷魔道士たちが動き出す。残りの地方は、二郎の領地、アレストバートがあるアサトラス地方。こうなると、


「ザッケガーニ伯爵が話していた、ハスピリーネ山脈の先には何がある?という問いも、気になるわね」


 2週間後、アサトラス地方の地方視察の日となった。

 また、例の宮廷魔法師団所有の一番豪華な馬車で、かおるは3日かけて、アサトラス地方のマーレードザックの街へ移動するのであった。


 貴族に会うこともなく馬車旅は続き、無事、マーレードザックに到着。その外れで地元魔道士団による火力演習。途中でかおるの、地元魔道士団みな度肝どぎもを抜くエクスペリメンタル・ファイヤーストームを披露し、格の違いを見せつけた。その後、宮廷魔道士を連れて来ての場所覚え。

 次の日はかおるによる便利魔法の講習会。みな、「こんな便利魔法が歴史に埋もれていたのか」とか、「今まで忘れ去られていたとはもったいない」とかそれぞれ感想を言い合っていたが、好評のうちに終わった。


 日程はとどこおりなく終わり、かおるは帰路にく。


「馬車の旅は時間がかかるし、寝泊まりできずに不便だけど、あと、お尻も痛いし。でも、これでこの馬車ともしばらくお別れとなると感慨深かんがいぶかいものがあるわね」


 かおるは、これだけ馬車の旅をしてきても、やはり車、キャンピングカーであった。

 帰りも貴族に会うこともなく早朝から夕焼けまで馬車で走り、宿場町の宿屋に泊まってまた明日は早朝から、と、最後の馬車旅を楽しみ、地方魔道士の視察を全て終わらせるのであった。


「みんな、変わりない?」


 また宮廷魔道士の仕事部屋にかおるの元気な声が響く。


「わたしのわがままで、地方視察を仕事にねじ込んで職場を混乱させて申し訳ない。しかし、地方視察も終わり、使節団の呼び出しは気にしないといけないけど、他は通常勤務に戻ります。私が抜けることも今後無くなるでしょう。通常勤務だと気を抜かず、仕事の日はキッチリと頑張りましょう!」

 宮廷魔道士団は通常勤務に戻るが、そこはそれ、ダレることなく気を引き締め、これからの業務に当たるようげきを飛ばすかおるなのであった。

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