仲良し家族、まとめて突然!異世界ライフ

ぷい16

タンザナティア王国

「じゃぁ、行ってきます」


 かおるが城に向けて出発する頃、二郎も出発した。

 地方都市ガーロイア。ここで調査しても良いのだが、どうせなら首都に行こう。二郎は自分にコミュニケーションの魔法をかけ、


「首都ってどの方向ですか?」

「首都、ビライガはあっち方面だが行くなら乗合馬車があっちから出ているよ」


 大体の方角が分った。二郎はガーロイアを出て浮遊魔法で首都、ビライガ方面に飛んで行った。


 日が真上に差しかかる頃、街道に人影が見えた。豪華な馬車にそれを守るように取り巻く白鎧の騎士たちに、周りから攻撃を仕掛ける黒鎧の騎士たち。白鎧が10に対し、黒鎧が16。白鎧が劣勢である。


「助太刀致す!スーパーブラスト!」


 二郎は空から黒鎧めがけて風の魔法、スーパーブラストをかけ、攻撃すると、黒鎧の腹の辺りに当たり、黒鎧を上下を真っ二つにする。


「スーパーアイシクルアロー」


 今度は、別の黒鎧の胸の辺りを氷の矢が貫通かんつうする。


「スーパーファイアーアロー!」


 今度は黒鎧の脇腹を火の矢が貫通し、その黒鎧は絶命する。


     …


 二郎の助太刀で白鎧が優勢に立ち、黒鎧は逃げて行った。


「姫様、ご無事ですか?」


 白鎧が豪華な馬車の扉を開けると、中には矢を受けて血だらけの女性がうずくまっていた。


「姫!姫様!」


 白鎧は叫ぶが治療する様子がない。姫様とやらはぐったりとしている。そこで二郎は、


「治療しないならどきなさい。魔法で治療します」


 二郎はそう言うと、白鎧を馬車から引きがし、馬車に乗り込んだ。

 まず、二郎は矢を引き抜き、


「アンチドーテ」


 解毒の魔法をかけた後、


「ハイヒール」


 中級の治癒魔法をかけた。姫様とやらの傷口はみるみるふさがり、呼吸も穏やかになっていく。


「これで、とりあえずは大丈夫でしょう」

「危ないところをありがとうございます」


 白鎧に礼を言われ、


「いきなり黒鎧の騎士におそわれ、味方も少なくなりました。もしよろしければ護衛をお願いしてもよろしいでしょうか?」


 二郎は考える。タンザナティア王国の調査に来たのだが、護衛をしていては調査の時間が少なくなる。しかし、このお姫様、見るからに位が高そうである。これからザガンガ王国とタンザナティア王国がどのような関係になるか分らないが、身分の高い者の知り合いがいた方が話がスムーズに行くであろう。ここは護衛を引き受けることにした。


「分りました。王都までですね?引き受けましょう」

「ありがとうございます」


 こうして二郎は、このお姫様の護衛をしながら王都まで歩くのであった。


 午後3時頃、王都に到着した。この頃になると、姫様とやらは起き上がって座れ、少し会話をできるくらいまでには回復していた。


「王都に到着しましたし、私はこれで」


 時間を随分ずいぶんロスしてしまった。これから街の中を見て回ったり、話しかけて情報収集をしなければならない。時間がないのでこの辺で去ろうかとしたところ、


「いいえ、ジロウ様には戦いの加勢をして頂き、姫の傷を癒やしていただき、護衛までして下さった。これはお礼をせねば。ジロウ様には王城までついて来てもらいます」


 拒否権は無かった。白鎧に半ば羽交はがめされて、王城まで連れて行かれるのであった。


 王城の応接室に通された二郎。扉は見張られていて逃げ出せやしない。

 待つことしばし。王が会いたいというので謁見の間へ。


「姫様の命を救ったメイガスが到着しました」

「入れ」


 謁見の間の扉が開き、中に通され、二郎は程良い位置で片膝を付き、こうべを垂れる。


「して、お主が娘を救ったというメイガスか?」

「王都に向かう途中、争いに加勢しましたが、私がお救いしたのは王女様なのですか?」

「左様に御座います」


 途中、誰の説明もなかったため、姫様がどこの誰かも知らずにやって来た二郎。ついでにこちらの素性も明かしていない。これでは話が進まないと、白鎧の騎士が助け船を出してくれた。


「ワシはこの国の王、ジンジョルノ・ザビエルという。そち、名を何と申す?」

「ゼバの大樹海の向こう、ザガンガ王国からやって参りましたジロウ・アソウ公爵にございます」

「なぬ?ゼバの大樹海の向こうだと?どうやってこちらに来た?」


 ゼバの大樹海とは、クロッドキューブ、パンバンデー、ウンザバンテ、ガーネルザロドロイスなどの森の奥にそびえる大樹海のことである。こちらではゼバの大樹海というのだそうな。

 二郎は、大樹海の上を空を飛んでやって来たこと、商人、アラバーニ・パテントスの言うようにここに国があるのを発見したこと、国の今後の行動を決めるために一人で調査に来たことなどをかいつまんで説明した。


「ふむ、あちらに国があるならば、こちらも調査がしたい。そちには褒美をやらねばならぬが他国の公爵にふさわしい褒美を何か考えねばならぬ。褒美は明日やることにして、今日は城に泊まってゆくが良い。城から外に出たいというならともを付けてやる。パディザス、ついて行ってやってくれ」

「ははっ!」


 こうして、今日はタンザナティア王国の王城にて泊まることになったのであった。

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