仲良し家族、まとめて突然!異世界ライフ

ぷい16

逮捕!

 黒幕Xは誰なのか。


 今、イタブルグでは、密かに内偵捜査が始まっていた。目標は昨日、エリアリアーナ様に教えていただいた建物2つ。1つは恐らく魔製燃料を精製しているのであろう大きな建物で、仮に建物Bとしておこうか。対象の建物のもう一つが建物Bに対して半分くらいの建物だ。こちらの建物は仮に建物Aとしておこう。


 内偵には多くの腕利き魔術師が当てられている。監視しやすいように建物も借りた。この建物は仮に建物Nとしよう。建物Nには、”ナイソデヤ商会 イタブルグ支所”と看板がかけられている。


 ナイソデヤ商会。


 その商会は一般的には王都を拠点とし、日用雑貨から不動産屋、燃料販売、馬車の手配等、手広く商いをしている大店だが、本当は王国のダミー企業。従業員はナイソデヤ商会専属の者もいるが、警備隊や軍から出向している者も沢山いる。警備隊や軍部が内偵捜査をするときに必要な人材を育てたり、実際、内偵捜査をするときは、”ナイソデヤ商会の者”という肩書きが結構有用になったりする。商いの表の事情も裏の事情も調べるさいにはこの”ナイソデヤ商会”という看板が結構使える。


 おっと話が大幅に脱線した。とりあえず、警備隊が、”ナイソデヤ商会”の者として、建物Aと、建物Bを内偵しているというのは分っていただけたであろうか。で、何を探っているかというと、つい先日、王国の北の端、ガーネルザロドロイスの森で大量の毒物が見つかった。その毒は魔物の居場所を奪い、南下させ、これまで戦闘例がほとんど無かった魔物による人間の殺害の大幅増加という大問題を引き起こす原因となった。


 このせいで、国王は勇者召喚という禁じ手を使うこととなり、軍の面目を潰す羽目になった。まぁ、”秀才、エリアリアーナ・バーンクリットの帰還”という偶然の副産物が生まれたわけだが。でも、副産物としては巨大で、召喚での面目と、エリアリアーナ様の帰還でプラスマイナスゼロ、いや、むしろプラスに傾くかも知れないが、軍部も多数の派閥に分かれており、バーンクリット家の勢力が今まで以上に大きくなった。私は警備部の人間なので、警備部の派閥争いには敏感だが、軍部の勢力争いは勝手にしてくれと思うだけだが。


 また話が脱線したな。まぁ、こんなにも影響が出るから当然、毒物を出すことは国の法によって厳しく制限されているわけだが、毒物を調べてみると、どうもマグドネヒキシリンという物質らしい。このマグドネヒキシリンはを未熟な術者が魔製燃料を生成するときに出る物質として知られている。当然、マグドネヒキシリンを生み出す魔製燃料の生成は国法により禁止されている。それで、マグドネヒキシリンを生成した罪と、それを北の森の奥に不法投棄した罪、それによって魔物を南下させて多くの国民を死なせた罪がこれらに関わった人間にあるわけで、”責任者出てこい!”と言っても出てくるわけがないので、今、内偵捜査をしているわけだ。


 と、言うわけで、俺ら警備部の人間が黒幕X並びに関わった者全てを洗いざらい調べる。そして留置場に放り込むというのが仕事なわけだが、今は人や物の流れを見ている。探索魔法が得意な人間がこの建物Nに張り付いており、まずは誰が誰と接触しているのか調べるのだ。




     *




 大店には警備部の内定者が居る


 これは、大店の幹部にとっては知らない者の居ない公然の秘密だ。幹部も誰が警備部の内定者か調べることもしない。これは暗黙の了解だ。しかし、何故か警備部の人間が弾かれる店がある。アーホッグ商店だ。アーホッグ商店は、あくどい商いをしているとの噂が絶えない商店だが、内偵しようにも、入れた警備部の人間が全てクビになる。情報を得る前にだ。なので、定期的に警備部の人間を入れる、クビになるを繰り返しているのが現状なのだが、どうやら建物AやBは、アーホッグ商店と関わりがあるらしい。あくどいという噂が流れるだけで、全容は元より、おぼろげにもあまり実態がつかめていない商会だ。警備部の幹部も末端も全て捜査に力が入る。別件逮捕でもいい。今回の事件をきっかけにアーホッグ商店も暴いてやる!




     *




 黒幕Xは、グッダバ・アーホッグであった。


 調査の結果、ダミー企業を介してはいるが、実態は建物AもBも、アーホッグ商店所有であった。建物内の従業員もアーホッグ商店の者であった。これはアーホッグ商店の全容を知るチャンスだ。アーホッグ商店の経営者のグッダバ・アーホッグを捕まえて、全容を吐かせてやる!




     *




 警備部と軍部が協力してアーホッグ商店の人間全員を捕らえることになった。逃げられる恐れがあるためアーホッグ商店の関連施設に、この大捕物に関わる全員同時にアーホッグ商店の関連施設にガサ入れをし、従業員全員を捕らえる。失敗は許されない。皆、気を引き締める。1人残らず留置場に放り込んでやる!




     *




 警備部と軍部の合同で、アーホッグ商店と関連施設の従業員全員逮捕、施設のガサ入れが敢行された。従業員は全員、幹部は1人逃げられたものの、経営者のグッダバ・アーホッグは捕まえることに成功した。これで俺たち内定組の仕事は終わりだ。仲間がアーホッグ商店の全容を暴いてくれるだろう。久しぶりに数日の休暇がもらえた。思えば建物AやBに張り付いてから休みをもらえていなかった。ゆっくり休んだ後は、何をして遊ぼうかな?

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品