仲良し家族、まとめて突然!異世界ライフ

ぷい16

魔物と役人たちとの会合の準備

 その日の王城は馬車がひしめいていた。


 研究部会の魔法陣魔力供給班と防護服作成班は、現地での食事や野営の準備のため、昨日、食料や、椅子、テーブルなどと共にウンザバンテの森に向けて出発した。


 今日出発するのは、話し合いをする役人たちと、会話を補助する魔法陣研究班と、子供たちを残した勇者パーティーである。汚染調査班はかおるを代表に別行動である。


『さて、話し合いで、良い結果が出るといいのだが』


 役人たちが、来た馬車に乗り合わせ、どんどんと出発していく。それが終わると、二郎じろうと勇者パーティーと、魔法陣研究班が、馬車に乗り合わせ、どんどん出発していく。


 最後の魔法陣研究班が出発すると、いつものように、王城は静けさを取り戻すのであった。




     *




 かおるたち、汚染調査班は2手に分かれた。一方は前回と同じくガーネルザロドロイスの森に向かう班、もう一方は、城に残り、毒物調査用の試薬を作る班である。毒物が何か分らない。判別するために、様々な試薬が必要である。それに毒物を城に持って来るわけにはいかない。この王城のある街にも入れない方がいいであろう。そこで、隣街の空き家を借り、そこで毒物の判定を行うことにしたのだった。


 4日後、かおると一緒にガーネルザロドロイスの森に向かった一行は、ギリギリ防護服を着なくても過ごせる場所、前回望遠鏡を使った場所で、前回と同じように望遠鏡を覗いていた。


『いた。前回と同じように防護服を着込んで、2人居るわね』


『私にも見えました。監視の者は、望遠鏡を動かさないようにして監視の交替、その他の者は食事と寝る用意を済ませよ』


 かおるとダーリーは、監視を他の者に任せ、他の監視以外の者と一緒に食事を摂り、仮眠することにする。あの妖しい人影も、さすがに夜には眠るであろう。彼らが寝ている間、夜に忍び込んでいろいろと調べて回らなければならないのだ。






 日もとっぷりと暮れた頃、あの妖しげな防護服を着込んだ人影も見えなくなった。かおるもダーリーも他の隊員も皆、目を覚まして防護服を着込んでいる。


 みなの準備が整ったのを確認すると、荷物と4人、人員を残してあの、泥のようなものが積み重なった妖しげな場所に向かうのであった。




『うっ、見るからに体に害がありそうね』


 かおるは顔をしかめながらそう言うと、サンプルとしてその泥のようなものを容器に詰め、厳重に密閉した。


『もう少し奥まで行きましょう』


 見渡す限り、仲間以外人影は居ない。かおるたちは、人影に注意しながら奥へと進んでいく。かおるはふと、足下が気になった。


『ライト』


 かおるは周りに注意しながら足下を照らしてみた。そこには魔法陣があった。


『転送用の魔法陣のようね。繋がる先が分るかしら』


 かおるは目をつぶり、何やら呪文を唱え、感覚を研ぎ澄ませた。そして、愕然とした。


『王都のすぐ近くじゃない!』


 かおるみなに引き返すように指示を出すのであった。






 かおるたち一行は監視をしていた場所まで下がり、防護服を脱いだ。かおるは早速地図を取り出し、×印を付ける。


『国王にする報告が増えたわね』


 夜ももう遅い。薫たちは、簡単に食事を済ませ、眠りにつくのであった。




     *




 二郎じろうたちが現地に着くと、人間たちがひしめき合っていた。魔法陣を草の上に敷き、その上にテーブルと椅子をセットしている場所が見えるだけでも10個ほど見えた。その先にはテントの群れが見える。まだ魔物は呼ばれていないようだった。人を乗せていた馬車は人を吐き出すと、また、王都へ戻って行った。


 役人の集まりに目をこらすと、見知った人影を見つけた。今回の役人の代表、アマズス・ゲロットスである。二郎じろうは早速声をかけた。


『ゲロットスさん、準備のほどはどうですか?』


『順調に進んでいますよ』


『魔物を呼んできましょうか?』


『そうですね。そろそろお願いします』


 二郎じろうたち、勇者パーティ、二郎じろう、ジョルダン・カーライル、カトリーナ・アンリエッタ、メリーア・メンドローサ、マヤ・ステインは、森の奥へと入っていった。


 前回のように魔物とはあまり遭遇そうぐうしない。たまたま見つけても向こうから逃げていく。


 しばらく進むと、


『前方に巨大な魔物発見!相手は白旗を掲げています!どうやら魔王のようです!こちらに向かって走ってやって来ます!』


 程なくして魔王と遭遇するのであった。


『万物を知り尽くす英知の神よ、我に大いなる力を分け与えたまえ、コミュニケーション』


 二郎じろうは魔物と話すための魔法を自分にかけ、


”それではみなさん森を出ます。ゆっくり進みますのでくれぐれもはぐれないようにお願いします”


 二郎じろうはそう言うと、森の出口に向かって歩き出すのであった。

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