仲良し家族、まとめて突然!異世界ライフ

ぷい16

試作したエンジンが動かないよー by 研究部会

 旅の目的を経験めから魔王さがしにしてから数日後。王へ謁見えっけんしていた。


『この度、実力を上げる旅から魔王捜しの旅に目標を変えました』


『やっと本来の目的に移りよったか… 長かったのぉ』


 王からちょっと嫌みを言われる。


『他のパーティーメンバーはともかく、我々家族はずぶの素人でしたから』


『素人から戦いができるようになるには時間が必要だったのです』




 謁見えっけんが終わり、武器庫へ寄って、薬倉庫へ寄って… と予定を考えていると、


『おぉ、やっとお会いできました』


 やって来たのは以前に会った研究部会の人たちであった。


『エンジンを組み立ててみたのですが、動かないのです』


『それでは、現物も見てみたいので、明日、王城へ来ますので、その時に詳しいお話しを』


 と言ってその場は逃げ、武器庫と薬倉庫へ寄って、バーンクリット邸へと帰った。






 食事が終わり、作戦会議をすることにする。


『中ボスはいずれも森にいました。魔王もひょっとしたら森に生息しているのかも知れません。森を調べましょう』


『まずはウンザバンテの森に行きましょう。そこでも見つからなければさらに北上して…』


 とりあえず、森巡りをすることに決まった。






 明くる朝、王城へキャンピングカーで乗り付け、ノートパソコン持参で研究部会を探す。


『おぉ、いらっしゃいましたか。お待ちしておりました』


 周りの人に研究部会の部屋を聞きつつ向かっていると、あちらから声をかけられた。


『あなた方のエンジンをまるっとそのまま完全コピーしたのですが、全く動かないのです』


 どうやらキャンピングカーのエンジンをそのままコピーしたらしい。セルモーターまで再現されている。


『弁を付けたのですが、それが全く仕事をしないのです』


 そこまで分ってるなら自分たちで何とかしろよと思いながら、動かない理由が分った。


『我々のキャンピングカーに付いているエンジンは電子制御式と言って、ちょっと高度なものなのですよ。単体で動くようにしたいなら、一世代昔のカムシャフト式がいいのではないですか?』


 俺はノートパソコンを開いて、カムシャフト式を説明する。


『こちらなら弁も動きますし、エンジン自体も動くと思います。上の方だけ交換すれば大丈夫なので下は流用できますよ』


『おぉ。ご指導ありがとうございます。その通りにやってみます』


 説明を済ませると、もうこちらの様子は全然気にしない様子で、放ったらかしにされる。よほど研究して何とか動かしたいようだ。


『それと…』


『まだ何かあるのですか?』


 今まで放ったらかしにしておいたのに、声をかけるとこちらに注目する。俺はそのまま続ける。


『バッテリーも見てもらった方がいいかも知れません』


 と言って、キャンピングカーの鉛蓄電池を取り出し、こちらを解析させ、解析が終わるとまた元に戻す。


『とりあえず、今教えられることは以上です。実験が成功することを祈っております』


『おぉ。ありがとうございます』




 こちらから気がそれたようなので、おいとますることにする。




     *




 勇者一行とすれ違う。なんとまぁ口惜くちおしいこと!


 私はカッテリーナ・ルイジアンヌ。このザガンガ王国の第二王女。最初の頃は、勇者様がイイ男なら積極的にアプローチしちゃうんだから♪ なんて思ってたけど、今はそんな気も起きない。


『勇者の奥さんがエリアリアーナ・バーンクリットですって?』


 あれは2年前、王妃に直に勇者一行から報告されたらしい。


 エリアリアーナ・バーンクリット。周りに秀才、天才児と、将来有望、王国随一ずいいち魔術師ウィザードになると言われた彼女は、兄弟げんかの末、行方不明になった。


『秀才、エリアリアーナ・バーンクリットなんて、私がかなうわけないじゃない。ちぇ』


 一応ルイジアンヌ家が国を担う役目をしているが、力関係でいえばバーンクリット家の方が上。バーンクリット家が研究バカでなかったなら、バーンクリット家から国王が出ていたでしょう。


『結婚したら、私が第二夫人になるじゃない!』


 第二夫人になるくらいなら、私は諦めよう。ちぇ。結構イイ男だったのになぁ。


『ここは気持ちを切り替えて、いい男を探すんだから!』


 とは言ったものの、家格が合う人間なんて、みな、もう顔なじみである。これから出会いを求めるなんて、到底無理な話である。


『ハァ』


 一つため息を吐き、トボトボと自分の部屋を目指すのでした。




     *




 勇者一行とすれ違う。どこをどうやって攻めようかしら。


 私はミネルバ・ルイジアンヌ。このザガンガ王国の第一王女。いますれ違った勇者様との結婚もやぶさかではない。


『ほほぉ。勇者と一緒にいたあの奥さんがエリアリアーナ・バーンクリットだったのですか』


 あれは2年前、王妃に直に勇者一行から報告されたらしい。


 エリアリアーナ・バーンクリット。周りに秀才、天才児と、将来有望、王国随一ずいいち魔術師ウィザードになると言われた彼女は、兄弟げんかの末、行方不明になった。


 そんな慧眼けいがんの持ち主なら、きっと頭も良いに違いない!


 一応ルイジアンヌ家が国を担う役目をしているが、力関係でいえばバーンクリット家の方が上。バーンクリット家が研究バカでなかったなら、バーンクリット家から国王が出ていたでしょう。


『結婚したら、私が第二夫人になるわね。でも、あのバーンクリットが相手と言われれば、誰も文句は言わないでしょう。どうやって彼をおとそうかしら♪』


 ミネルバの頭の中は、どうやって麻宗あそう二郎じろうをおとそうか、必死で考えていた。


『姫様前を向いて下さい。それでは柱にぶつかります!』


 おっと、考えに集中していたらうっかり柱にぶつかるところだったわ。しかし、何かきっかけはないものかしら。




 2年間の間に何度か勇者一行とすれ違っているが、一向にアプローチさえ叶わない。


『声をかけるのさえ叶わないのね。前途多難だわ』


 そうしてまた考え込み、壁にぶつかるミネルバであった。




     *




 そんなこんなでウンザバンテの森に入ってから4日が過ぎ、討伐は順調に進んでいた。


『今日の討伐も順調ですね』


『それではもう少し奥まで行きましょうか』


 カーライルとアンリエッタがそんなことを話ながら、一行は奥へ奥へと進んだ。


 奥へ進んでしばし、視力を強化していたメンドローサが、


『前方に巨大な敵発見!敵に見つかりました。避けられません。相手は白旗を掲げています!こちらに向かって走ってやって来ます!』


『白旗ってこっちではどういう意味なんだ?』


 気になったので聞いてみる。


『戦う気がない。話を聞いて欲しいときに掲げます』


 つまり、不意打ち狙いでもない限り、戦うことはないって事だろう。


『警戒はしつつ、とりあえず、話を聞いてみよう』




『こちらは戦う気はありませーん!魔法を打たないで下さーい!』


 そう言いながら、巨大な魔物は走ってやって来る。とりあえず、話はできるようだ。ちょっと距離を保ちつつ、相手の話を聞くことにした。


『私はアンドレシロシウス。父から魔王の地位を受け継いだ者です』


『まぁ、魔王は世襲制せしゅうせいだったのですね』


 妙なところで相づちを打つメンドローサ。


『5年前から北の方から木々が枯れ、川は汚れ、土は汚れて食料にしていた木々や木の実がれなくなり、徐々に一族は南に南下していきました』


 それで?と先をうながす。


『しかし、南は人間の住処でした。元々我々は人々から恐れられていました。姿を見せる度に攻撃を受けるようになりました。魔物と人間の言葉は違います。人間の言葉が話せるのは私くらいでしょう。話し合いもできないまま、多くの仲間は人間に殺されました』


 それで、どうしたいの?と先をうながす。


『このままでは我々は絶滅してしまいます!何とか人間と共存できる道は無いものでしょうか?』


 いきなり討伐対象に共存したいと申し出されてしまった。


『それでは、人間代表の国王と話してきます。アンドレシロシウスはこの森の奥にて下さい。結果をお教えするなり、何か対応致します』


『おぉ、ありがとうございます』




 俺たちは森を出、かおるに王へ手紙を出してもらった。


”とある森で魔王と遭遇。しかし、魔王は人間との共存を希望。至急戻り、話し合いたく思う。 勇者一行”


『話し合いが穏便おんびんに進むといいがなぁ』


 王の出方次第では、どう話が転ぶか分らない。不安に駆られる勇者一行であった。

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