二度追放された冒険者、激レアスキル駆使して美少女軍団を育成中!
第231話 やるじゃないか
アスカと切り結んでいる青っぽいカブトムシ、サリエリと戦っている黒いカマキリ。どっちも強敵だけど、うちの娘たちの方がやや押している。
地力の差、とでもいうのかな。
いやあ、モンスターたちもすごく強いんだけどね。
闘神なんて呼ばれるアスカと、スリーピーアイズのサリエリは、やっぱりひと味違う。
このまま押し切れるだろう。
と、思った瞬間だった。
黒カマキリの方が、サリエリを放置してアスカに襲いかかる。
「え?」
「なっ!?」
あまりに意外すぎる行動に、サリエリと俺が一瞬かたまってしまった。
一瞬だけだよ。
そしてその一瞬で、敵には充分だったっぽい。
敵陣から、さらに二匹のモンスターが飛び出し、棒立ちになってしまったサリエリに突きかかった。
金色と銀色のクワガタっぽいやつだ。
速い。
さらに鋭く力強い。
「ちょ、ま、ちょまぁぁん」
奇声を発しながら、なんとか受け、さばくダークエルフの勇者。
これサリエリだったからなんとかなってるだけで、ぶっちゃけ俺だったらやばかったろうね。
そしてアスカの状況も良くない。
青甲虫と黒カマキリ。
それぞれの強さはアスカよりやや劣る程度だけど、コンビになったときの強さは単純な足し算じゃないぞ。
なんだその連携。
前に進み後ろに退き、右に攻め込み左に守り。
アスカにしてみれば五十人くらいを同時に相手にしている気分だろう。
しかもサリエリの援護がない状態で。
いかにも厳しい。
いつもは元気印のアスカの顔だけど、いまは緊迫感で唇が引き結ばれちゃってる。
ほんの一瞬すら気を抜けないのだ。
防御から攻撃に移るその瞬間。回避のステップを踏んだそのタイミング。隙とも呼べないような、そんな隙を的確に突いてくる。
かといって、見え見えの隙を作って誘おうなんて思ったとたん、一気に敗勢に追い込まれるからね。
延々と続く防戦に、ひたすら耐え続けるしかない。
積極攻撃型に属するアスカにとっては、ストレスで死んでしまいそうな展開だ。
ていうか、死因がストレスって状況がまずおかしいんだけどね。
これ俺だったら、とっくになますみたいに切り刻まれてるよ。
「ミリアリア、ユウギリ、援護を」
「速すぎて無理です」
俺の指示に、魔法使いは口に出して弓士は無言のまま首を振って応える。
……だよね。
最前線で戦っている六人の戦士、速すぎて鋭すぎて、なにより動きが読めなすぎて援護のしようがないんだ。
敵味方問わず。
誘導性のあるミリアリアの攻撃魔法ですら、照準を合わせられない。
魔法ですらこれだもの。弓矢はいわずもがな。
射た直後に、狙った場所から標的がいなくなっている。着弾するころには、そこにいるのは敵か味方か判らない、なんて状態なのである。
だから、敵も味方も、中衛や後衛は棒立ちだよ。
なにもできない。
ぴ、と小さく。
そして鋭く、指笛の音が聞こえた。
どこからともなく。
その瞬間である。
アスカとサリエリは戦闘を中断して自陣へと後退する。狙いを絞らせないために何度もとんぼを切りながら。
なかなか無茶な行為だ。
戦闘の真っ最中である。バッサリやられなかったのは二人の身体能力がそれだけ高いからだけど、それでも何発かはもらっている。
「わたくしもアレンジしますわ。長距離回復! 降り注げ慈愛の雨よ!!」
メイシャが錫杖を振りかざせば、曲芸みたいな後方回転で戻ってくるアスカとサリエリの身体が優しい光に包まれた。
まじか。
本来は単体を癒やす回復魔法を複数同時に使っちゃうのか。
この人はこの人で無茶だよなあ。
神聖魔法って、そーんなに融通の利くものじゃないはずなのに、独自の解釈でアレンジしてしまっている。
聖域と除霊の重ねがけとか、走ってるジークフリートを聖域にしてしまったりとか。
メイシャが規格外なのか、至高神が自由すぎるのか。ガイリアの至高神教会の大司教様に訊いてみよう訊いてみようと思いつつ、なかなか機会が見つからない。
モンスターたちは、三歩だけ追撃したところで急停止する。
背後から鋭く制止されたっぽい。
何言ってるのか、さっぱり判らないけどね。
接近戦型モンスターの足の先、ほんの三寸(約九センチ)くらいのところで、なにかがきらっと光ったような気がした。
「いつものカルトロップス。しびれ薬を塗っておいたんで、あのまま追いかけてくれれば良かったスのに」
いつのまにか俺の横に立っていたメグが肩をすくめる。
最初からたいして期待していなかった、という顔だ。
俺たち『希望』の戦闘で、いままですごく役に立ってくれているカルトロップだけど、敵の正面に仕掛けてもあまり意味はない。
見えちゃってるからね。
まして敵は二十人近くいる。
めざといものがいれば気づかれてしまうだろう。
「敵も然る者、引っ掻く者ってね」
「ウッキッキー、スね」
「ただ、メグのおかげで後退の契機は掴めた。さんきゅな」
ぽんぽんと軽く栗色の頭を撫でる。
前衛同士の距離が開いた。
ということは、魔法や弓矢での戦いに移行するか、いったん大きく距離を取って仕切り直すか。
俺の選択は後者である。
想像を超えて強敵すぎるからだ。
このまま戦い続けたら勝てない、とまではいわないけど、簡単に勝てるとはそれ以上に思えない。
まきびしヶ原ができたことを奇貨として、ちょっと作戦を練り直したいな。
「さがるぞ。追撃に注意しろ」
「了解です」
「判りました」
「やすんじてお任せあれですわ」
ミリアリア、ユウギリ、メイシャがそれぞれの得物を構えてフォーメーションを組み直す。
飛んでくる魔法や矢は、この三人で対処するためだ。
だが、どちらも飛んではこなかった。
敵陣の方も慌ただしく陣を畳んでいたから。
「……やるじゃないか。なかなか」
そうきたか。
厳しい手を、ほぼ確実に打ってくる相手だな。
唇を歪めてうそぶく俺の頬を、汗が伝う。
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