二度追放された冒険者、激レアスキル駆使して美少女軍団を育成中!
閑話 骨の髄まで
「この亜人女が! もっとはやく救援していれば!」
軍議の席上、参謀長ゴルツクが喚き散らしている。
周囲の反応は冷淡だ。
軍神ライオネルを、やつばらが用いたのと同じ方法で叩き潰してくれよう、などと高言して自ら一軍を率いたのである。
それが、完璧に策を破られ部隊の半分近くを失うという大失態を演じた。
アレクサンドラの救援がどうこうという次元の話ではない。
「あたしは散々言ったよな? 相手に倍する兵力があるなら小細工なんかしないで正面から数で押せって。献策をぜんぶ退けたのはどこのどなた様だい?」
太い腕を組んだまま、アレクサンドラは片目だけ開けて言う。
その態度を不遜だと感じたグリンウッド軍の幕僚も多かったが、口に出すことはなかった。
スペンシルの街に至るまでの小競り合いはともかく、二度のディーシア平原会戦において、インゴルスタ軍はつねに最前線あって奮闘を続けたのである。
にもかかわらず損害は三百に届いていない。
豪腕アレクサンドラの異称は伊達ではないと誰しもが認めていた。
「なんという傲岸さか! いいでしょう! あなたの態度は宰相メテウス閣下に報告させていただきます」
唾を飛ばしながら喚くゴルツク。
ふうとアレクサンドラはため息を吐いた。
「どうしろっていうんだい? 参謀長どの。あたしが出した作戦案は却下する。あんたらが危ないと思って助けに馳せ参じれば遅いと怒る。この状況でも、あたしが悪かったと頭を下げた方が良いのかい?」
「ぐぬぬぬ……生意気な……亜人風情が……」
ゴルツクの目は血走り、顔は真っ赤になり、いまにも頭から蒸気が噴き出しそうだ。
「参謀長。非礼がすぎるぞ」
たしなめたのは総司令官のイノール将軍である。
「しかし……」
「いまの卿は冷静さを欠いているようだ。ここは本職に任せよ」
そういってイノールはアレクサンドラに向き直った。
「部下の非礼は詫びる」
「気にしなくて良いさ。いまさらの話だろ」
唇を歪めるアレクサンドラ。
人間たちのなかにエルフやドワーフ、獣人や魔族たちを亜人と呼んで差別するものが一定数存在する。
とくにグリンウッド王国には多いようだ。
お国柄というもので、これがガイリア王国であればゼロに等しい。むしろ差別主義者と後ろ指をさされることになるだろう。
「ともあれ、我が軍の損害に比して、貴軍の損害が少ないのは事実だ」
すでにしてグリンウッド軍は二千三百近い兵力を失っている。
五万のうち二千三百というのは、けっして小さな数字ではない。
だいたいにおいて戦死者一割というのが一つの指標である。もし一割にあたる五千名が戦死してしまったら、たとえスペンシルの街を攻略占拠したとしても、イノールの名声はほとんど上がらないだろう。
これ以上の損害は出したくないというのが正直なところだ。
しかし、黙って座っていても戦況が良くなるわけではない。
となれば、失っても懐が痛まない戦力で戦うべきである。
「次の戦いは、インゴルスタ軍の全軍をあげて進んで欲しい」
「本気で言ってるのかい? 情報じゃあスペンシルは三万五千ほども兵力をかき集めてるんだよ?」
インゴルスタ軍は二万。
とても勝負にならない。
「豪腕アレクサンドラの武勇に期待させていただく。よしんば敗戦したとしても、そのあとに我らが押し出せば自ずと勝利は得やすいだろう」
イノールが酷薄な笑みを浮かべた。
公然と捨て駒にするといっているのである。
もちろんインゴルスタが逆らえないのを承知で。
女王ピリムの身柄をおさえているかぎり、アレクサンドラたちはどんな要求も呑まざるを得ないのだ。
「イノール将軍。あんたは参謀長よりずっと怖ろしいね。あたしらを使い潰して骨までしゃぶる気かい」
憎々しげに吐き捨てる。
逆らうことはできない。
かといって、二万対三万五千ではまず勝算は少ない。
アレクサンドラは夢想家ではなく、自軍の五割増しの兵力をもったライオネルと戦って完勝できるとは思えなかった。
実際ここまでだって、五分かそれ以上の兵力で当たってきたのである。
「違うぞ。アレクサンドラ殿」
「どこが違うってんだい」
「骨までではなく、骨の髄までだ」
イノールの顔に浮かぶのは、毒々しいまでの悪意の嘲笑であった。
ゴルツクの無能が破れたのはどうでもいいとしても、その雪辱を果たして名声を上げるのはアレクサンドラではない。
彼女らには露払いをしてもらう。
二万の屈強なドワーフ兵と豪腕アレクサンドラだ。いかな軍神ライオネルが指揮する軍団といえど簡単には勝てないだろう。
闘神アスカあたりと相打ちになってくれれば理想的だ。
そしてスペンシル軍の戦力が払底したところで、グリンウッド軍本隊が押し出して勝負を決める。
ライオネルはアレクサンドラが率いる二万と戦い、そのあとでイノールが率いる五万と戦う。
「すばらしい戦略だろう?」
「そうそう計算通りに進むと思うなよ。イノール」
ぎりりとアレクサンドラが奥歯を噛みしめる。
敬称を外して。
「耳に心地良し敗者の嘆、というやつだな。アレクサンドラ。もっと言って良いぞ」
こちらも敬称を外したイノールが、高らかに哄笑した。
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