二度追放された冒険者、激レアスキル駆使して美少女軍団を育成中!
第164話 名物が生まれる
インダーラ王国の名物料理であるカライ。俺も大好きな料理だけど、いま漂っている香りはそこまで刺激的じゃなくて、もうちょっとマイルドな感じだ。
これはこれで食欲をそそる。
「やはりスパイスはすべてルーベルシーで手に入りましたわね」
「ほとんど薬の原料ですよ。料理に使うって言ったら薬師たちに大笑いされました」
ドヤ顔のメイシャに苦笑しているのは、たぶん厨房長なんだろう。やや年配の恰幅の良い男だ。
「食とはすなわち身体を作り、癒やす行為なのですわ。ですので薬と食事を分けて考える必要はありませんのよ」
「なるほど。さすがは聖女様。含蓄深いお言葉です」
感心したように頷いちゃってるよ。
大丈夫かな? メイシャの謎理論に騙されてないかな。あの人。
なにしろあの子ってば、美味しいものを食べるためなら平然と神の教えすら曲解してみせるからね。
「メイ。ごはん炊けたけど、本当にやるの?」
アスカが心配そうに訊ねる。
大丈夫か? アスカすら心配になるような料理って。
「大丈夫ですわ。至高神ウソツカナイ」
うさんくせぇ。
その言い方、本気でうさんくせぇ。
だいたい、なんで料理の方法に天啓が降りるんだよ。どうなってんだよ至高神。
「こっちもぉ、良い感じでできてきたのん~ けど肉も野菜も入れすぎだと思うのん~」
大鍋の方を見ているサリエリだ。
「みんなで食べてあげれば、死んでしまったお馬さんたちも浮かばれますわ。ありがたくいただくのですわ」
「左様ですな。我ら人間は他者から命をいただいて生きておりますから」
メイシャの言葉に、またまた厨房長が深く頷いている。
言ってることは間違ってないけどさ。たぶんメイシャは肉が食べたいだけだと思うよ。
それにしても、肉と野菜がたっぷり入ったカライ。そしてごはん。
いったいなにをするつもりなんだか。
などと考えていると、メイシャと目が合った。
天使の微笑みで手招きされる。
「ネルママ。ネルママ。試食してくださいませ」
「……わかった」
他所様に迷惑をかけるわけにはいかないもんな。何を作ったのか知らないが、犠牲は俺一人でとどめなければ。
それは、皿に盛られた料理だった。
ひとつの皿の半分にごはんが盛り付けられ、もう半分にはカライだ。
マリシテの街のものよりとろみがあり、具もかなり大きく多い。肉と根菜類だな。
ていうか、白と濃い茶色のコントラストが非常に禍々しい。
芳醇なこの香りがなかったら、匙を入れるの躊躇っちゃうよね。
「たぶん、カライはこうするのが正解なのですわ」
「正解とか不正解とかないと思うんだけどな」
苦笑しつつ、匙ですくって食べてみる。
カライはその名の通りかなり辛いからね。ごはんとのバランスを考えて掬わないと、口の中が大変なことになってしまう。
あ。
うん。
これ正解だ。
マリシテのものより辛さを抑えたカライとごはん。出会うべくして出会ったんだよ。
運命ってやつね。
そっかそっか。
この出会いをもたらすために俺たちは旅をしていたんだな。
良かった。
ようやく俺の旅も終わる。
「母ちゃん! しっかりして! 戻ってきて!」
ゆっさゆっさとアスカが俺の肩を揺さぶった。
もう良いじゃないか。ハッピーエンドを迎えたんだから。
カーテンコールはいらないって。
「戻ってこーいっ!!」
「いたたたたっ」
びしばしと頬を叩かれた。
はっ!
俺はいったいなにを……。
目の前の皿は、舐めたみたいにきれいになっていた。
「ネルネルぅ。泣きながらカライ食べてたよぉ」
「まじか……あまりの美味さに、ちょっと別の世界に行っちゃってたよ」
すげえな、カライとごはん。
「でもカライとは似て非なるモノになってしまいましたね。なにか新しい名前を付けた方が良いかもしれません」
ふむと下顎に手を当てて考え込んだミリアリアだったが、すぐに頷いた。
「ごはんを中央大陸風に言ってライス。カライライスだと語呂が良くないですから、ちょっとなまらせてカレー。カレーライスというのはいかがでしょう」
『おお!』
皆が一斉に手を打つ。
すとんと胃の腑に落ちるような、しっくりくる名前だ。
ランズフェローにおける戦勝を祝う料理、カレーライスが誕生した瞬間である。
大いに呑んで大いに食べて。
男衆が歌い、女衆が舞い、宴の夜が更けていく。
戦勝記念のカレーライスはルーベルシーの街にも振る舞われ、民たちも大いに盛り上がった。
「よう。色男」
夜風にあたり酔いをさましていると、不意に声をかけられた。
炯々と降り注ぐ月の光に、金色の髪がさらさらと流れる。
クンネチュプアイだ。
城の中庭にひょいと現れるとは、宴で無警戒すぎるのか。それとも当代一の刀匠は代官の城だってフリーパスで入れるのか。
「貴女のおかげで勝てた。ありがとう。アイ」
どうでも良い感想は横に置いて、俺は丁寧に頭を下げた。
彼女が投げ渡してくれた月光。あれがなければ負けていたのである。
まさに功労者といっても過言ではない。
「あたしはただの刀鍛冶さ。剣が敵を倒すわけじゃない。アンタが使ったから勝てたんだろ」
ぶっきらぼうに言って手をだす。
まだ月光は未完成なのだそうだ。これからきちんと、俺のカタナとして生まれ落ちるのだという。
ひとつ頷き、俺は名付け親の女性に白鞘に入ったままの愛刀を手渡した。
よろしくおねがいします、と。
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