二度追放された冒険者、激レアスキル駆使して美少女軍団を育成中!
第150話 セルリカの針路
太守ホウシーはコウギョクとの一騎打ちの末に捕らえられ、太守軍そのものが降伏した。
もちろんそこに至るまでに多くの兵が冥府の門をくぐったわけだが。
結局、太守軍は三千二百名、シュクケイ軍本隊は百十六名が戦死した。『希望』隊の損害は十六名である。
「母上のおかげで勝てた。ありがとうな」
「なにもしてないって、娘には怒られましたけどね」
完全勝利といっても良い。
降伏した太守軍の兵士たちはそのままシュクケイ軍に加わり、サントン郡そのものがシュクケイの支配下となった。
そしてリャウの野の戦いでの勝利したことが大々的に報じられ、セルリカの民は快哉を叫ぶ。
それは大きなうねりとなり、一月もすると皇国の各所で反乱が勃発した。
事態を憂慮したセルリカ皇帝のリセイミは、シュクケイに対して和睦を申し出たのである。
「俺を追放した軍高官たちは死刑に処されたそうだ」
「それが皇帝からの詫びというわけですか」
幾度目かの会談を終えたシュクケイが、サントン城の客間に逗留中の俺たちのところへ、酒瓶持参でやってきた。
ていうかこの人、頻繁に飲みにくるのである。
俺としても軍略の話などをしながら飲める数少ない相手なので大歓迎なんだが、なぜかアスカやコウギョクは俺たちが飲んでるのをみて不機嫌になるのだ。
男同士がいちゃいちゃすんな、とね。
理不尽である。
「俺は丞相、コウギョクは大将軍に叙すから戻ってきてくれといわれたよ」
「破格の条件ですね」
「陛下も苦しいんだろうさ。すでに反乱は二十二郡で起きている。天下の半分だからな」
「シュクケイどのが国を立て直すとなれば民も落ち着くって計算でしょう」
俺の言葉にシュクケイが頷く。
反乱を起こしている民たちを倒すのは困難だ。というよりそこに兵力を注ぎ込んでしまったら諸外国に介入の口実を与えるようなものである。
ましてシュクケイを支持している太守だって少なくないのだ。
皇帝としては、政治の実権を渡しても良いからなんとかしてくれってところなのだろう。
このあたり、リントライトのモリスン王よりはできた人なんだろうね。あの人は絶対に権力を手放さなかったし。
それに、シュクケイは絶対に民を害するようなことをしないって知ってるんじゃないかな。俺が皇帝の立場だって、この御仁にどーんと任せてしまってもべつに不安はないと考える。
あとは皇帝としてのプライドの問題だけだ。
「自ら不明を認め、貪官汚吏を始末した皇帝として一定の評価はされるか」
腕を組み、ちょっと分析してみる。
皇帝とやらの心理を。
いまなら評価は上がる。軍上層部は悪事を全部背負って退場したからね。本当は任命した責任は皇帝にあるんだけど、自ら始末を付けたって部分が好印象だ。
あとのことは、シュクケイとその仲間たちにまるっと任せてしまうってのもありだろう。
能力的にこれほど信頼のおける宰相や大将軍もいない。
「で、受けるんですか? シュクケイどの」
「受けなきゃ国が崩壊するからな」
「ですよね」
肩をすくめる。
たぶん、国に弓引いたときからシュクケイにはこうなることが判っていたんだろうな。
もう隠者として生きることなどできない、と。
勝つとしても、負けて死ぬとしても表舞台に立つしかないのだと。
「ある意味、母上がうらやましい。これだけの武勲を立てておきながら、いまだ自由に生きていられるのだからな」
「いいじゃないですか。宰相ですよ。位人臣を極めるんですから」
そういって差し出した右手を、シュクケイは握り返す。
セルリカ皇国の進路は定まった。
名残惜しいが、そろそろ去りどきである。
「母上に火急のことがあればいつでも報せてくれ。なにを置いても助けにいくから」
「ありがたいですけど、シュクケイどのに助力を請わないといけない状況って、微妙に詰んでませんか?」
「どんな状況からだって逆転してみせるさ。俺は母上に勝った唯一の男だぞ」
「うっわ。それを今いいますか」
右手で握手を交わしたまま、左手で互いの胸を小突き合う。
セルリカに残らないか、とは、シュクケイは言わなかった。
俺も、もう少し手伝おうかとは言わなかった。
それで良いのである。
サントンを後にして北上を続けること七日。
もうすぐセルリカ皇国ともお別れだ。
立ち寄った宿場では、どこも新しい丞相と大将軍の話題で持ちきりである。
「でも、ギョクは大将軍になんかなりたくなかったんだよ。だから母ちゃんをずっと推してたんだ」
ほてほてと街道を歩きながらアスカが言った。
初耳の情報である。
なんでコウギョクが俺を推すんだ? そもそも外国人の俺が大将軍ってのは、周囲が納得しないだろう。
「なんでそうまでして大将軍の位を忌避するんだろう? 顕職なんかに就きたくないってタイプなのかな」
「そうではなく、他になりたいものがあるって話ですわ」
なんだか呆れたような表情のメイシャである。
ふむ。
もちろん俺はコウギョクの為人を熟知しているわけではないが、あの武勇は武人こそが天職だと思うけどな。
「母さん? 本気で言ってます? コウギョクさんのなりたいものなんて、シュクケイさまのお嫁さんに決まってるじゃないですか」
「ええ!? コウギョクってシュクケイどのに惚れてたのか!?」
ミリアリアの爆弾発言に目を剥く。
ぜんぜん気づかなかったよ。
いや、たぶん俺だけじゃなく、シュクケイだって気づいてないぞ。
「ネルダンさん……」
「ネルネルぅ……」
メグとサリエリが、とてもとても可哀想な人を見るように俺を見た。
どうして生まれてきちゃったの? と、副音声で問いかけているような、そんな瞳だ。
やめて。
そんな目で俺を見ないで。
もちろんそこに至るまでに多くの兵が冥府の門をくぐったわけだが。
結局、太守軍は三千二百名、シュクケイ軍本隊は百十六名が戦死した。『希望』隊の損害は十六名である。
「母上のおかげで勝てた。ありがとうな」
「なにもしてないって、娘には怒られましたけどね」
完全勝利といっても良い。
降伏した太守軍の兵士たちはそのままシュクケイ軍に加わり、サントン郡そのものがシュクケイの支配下となった。
そしてリャウの野の戦いでの勝利したことが大々的に報じられ、セルリカの民は快哉を叫ぶ。
それは大きなうねりとなり、一月もすると皇国の各所で反乱が勃発した。
事態を憂慮したセルリカ皇帝のリセイミは、シュクケイに対して和睦を申し出たのである。
「俺を追放した軍高官たちは死刑に処されたそうだ」
「それが皇帝からの詫びというわけですか」
幾度目かの会談を終えたシュクケイが、サントン城の客間に逗留中の俺たちのところへ、酒瓶持参でやってきた。
ていうかこの人、頻繁に飲みにくるのである。
俺としても軍略の話などをしながら飲める数少ない相手なので大歓迎なんだが、なぜかアスカやコウギョクは俺たちが飲んでるのをみて不機嫌になるのだ。
男同士がいちゃいちゃすんな、とね。
理不尽である。
「俺は丞相、コウギョクは大将軍に叙すから戻ってきてくれといわれたよ」
「破格の条件ですね」
「陛下も苦しいんだろうさ。すでに反乱は二十二郡で起きている。天下の半分だからな」
「シュクケイどのが国を立て直すとなれば民も落ち着くって計算でしょう」
俺の言葉にシュクケイが頷く。
反乱を起こしている民たちを倒すのは困難だ。というよりそこに兵力を注ぎ込んでしまったら諸外国に介入の口実を与えるようなものである。
ましてシュクケイを支持している太守だって少なくないのだ。
皇帝としては、政治の実権を渡しても良いからなんとかしてくれってところなのだろう。
このあたり、リントライトのモリスン王よりはできた人なんだろうね。あの人は絶対に権力を手放さなかったし。
それに、シュクケイは絶対に民を害するようなことをしないって知ってるんじゃないかな。俺が皇帝の立場だって、この御仁にどーんと任せてしまってもべつに不安はないと考える。
あとは皇帝としてのプライドの問題だけだ。
「自ら不明を認め、貪官汚吏を始末した皇帝として一定の評価はされるか」
腕を組み、ちょっと分析してみる。
皇帝とやらの心理を。
いまなら評価は上がる。軍上層部は悪事を全部背負って退場したからね。本当は任命した責任は皇帝にあるんだけど、自ら始末を付けたって部分が好印象だ。
あとのことは、シュクケイとその仲間たちにまるっと任せてしまうってのもありだろう。
能力的にこれほど信頼のおける宰相や大将軍もいない。
「で、受けるんですか? シュクケイどの」
「受けなきゃ国が崩壊するからな」
「ですよね」
肩をすくめる。
たぶん、国に弓引いたときからシュクケイにはこうなることが判っていたんだろうな。
もう隠者として生きることなどできない、と。
勝つとしても、負けて死ぬとしても表舞台に立つしかないのだと。
「ある意味、母上がうらやましい。これだけの武勲を立てておきながら、いまだ自由に生きていられるのだからな」
「いいじゃないですか。宰相ですよ。位人臣を極めるんですから」
そういって差し出した右手を、シュクケイは握り返す。
セルリカ皇国の進路は定まった。
名残惜しいが、そろそろ去りどきである。
「母上に火急のことがあればいつでも報せてくれ。なにを置いても助けにいくから」
「ありがたいですけど、シュクケイどのに助力を請わないといけない状況って、微妙に詰んでませんか?」
「どんな状況からだって逆転してみせるさ。俺は母上に勝った唯一の男だぞ」
「うっわ。それを今いいますか」
右手で握手を交わしたまま、左手で互いの胸を小突き合う。
セルリカに残らないか、とは、シュクケイは言わなかった。
俺も、もう少し手伝おうかとは言わなかった。
それで良いのである。
サントンを後にして北上を続けること七日。
もうすぐセルリカ皇国ともお別れだ。
立ち寄った宿場では、どこも新しい丞相と大将軍の話題で持ちきりである。
「でも、ギョクは大将軍になんかなりたくなかったんだよ。だから母ちゃんをずっと推してたんだ」
ほてほてと街道を歩きながらアスカが言った。
初耳の情報である。
なんでコウギョクが俺を推すんだ? そもそも外国人の俺が大将軍ってのは、周囲が納得しないだろう。
「なんでそうまでして大将軍の位を忌避するんだろう? 顕職なんかに就きたくないってタイプなのかな」
「そうではなく、他になりたいものがあるって話ですわ」
なんだか呆れたような表情のメイシャである。
ふむ。
もちろん俺はコウギョクの為人を熟知しているわけではないが、あの武勇は武人こそが天職だと思うけどな。
「母さん? 本気で言ってます? コウギョクさんのなりたいものなんて、シュクケイさまのお嫁さんに決まってるじゃないですか」
「ええ!? コウギョクってシュクケイどのに惚れてたのか!?」
ミリアリアの爆弾発言に目を剥く。
ぜんぜん気づかなかったよ。
いや、たぶん俺だけじゃなく、シュクケイだって気づいてないぞ。
「ネルダンさん……」
「ネルネルぅ……」
メグとサリエリが、とてもとても可哀想な人を見るように俺を見た。
どうして生まれてきちゃったの? と、副音声で問いかけているような、そんな瞳だ。
やめて。
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