二度追放された冒険者、激レアスキル駆使して美少女軍団を育成中!
第145話 山賊の正体
シュクケイというのはセルリカ皇国の役人だったらしい。しかも、けっこう上の方の。
「けど世渡りが下手でね。くそ真面目に職務に精励しちゃったせいで上を怒らせ、追放されちゃったのよ」
笑いながら語るのはコウギョクという女剣士である。
「わかるー! そういう不器用な人っているよね! うちの母ちゃんみたい!」
そして余計な情報を渡しているのはアスカだ。
俺もルークに説教して『金糸蝶』を追放されたんだよなぁ。
「ご苦労されたのですな。シュクケイどの」
そう言って、シュクケイの盃に酒を注ぐ。
「何もかも失ったかに思えたが、コウギョクがついてきてくれた。仲間もできた」
くいと飲み干し、すぐに返杯された。
広場から村の酒場へと移動しての親睦会である。事態がこう進んだ以上、シュクケイたちの立ち位置や、青年団が彼らに援助していた理由などをきちんと訊くしかない。
すぐにビャクが手配して酒場を借り切ったのだ。
ちなみに『希望』にもシュクケイ陣営にも美女がたくさんいるのに、俺たちは隅っこの席を占拠して差し向かいで呑んでいる。
理由? 盛り上がってる女衆のなかに飛び込む勇気なんか持ち合わせてないんだよ。判るだろ?
「そしてそれは、貴殿も同じだろう?」
「ですな。得がたい娘たちですよ」
「仲間が人質に取られた瞬間、なんの躊躇いもなく降参だからな。あれにはさすがに驚いた」
「想定外でしたか?」
くすりと俺が笑うと、シュクケイは苦笑で応えた。
戦闘指揮では完敗だったが、べつのところで意表を突くことはできたようだ。
「想定外も想定外。俺たちのプランでは、人質を取り返された時点で逃げる予定だったからな」
つまり、メグを害するつもりはなかったということである。
もちろんそんなことまで読めるわけがないから降参したわけだが、シュクケイとしては交渉中に人質を奪い返され、策が破れたといって逃げるつもりだったらしい。
様式美に則って。
そんな面倒くさいことを考えたのは、もちろん牢屋にいるリゲンを助けるため。頻発した事件は彼らの仕業ではなく盗賊団の仕業だったのだとアピールするためだ。
わりと遅きに失しているがこればかりは仕方がない。
シュクケイ陣営はリゲンの逮捕劇の詳細を知っているわけではないし、ことの顛末を報せてくれた青年団連中だって正確な報告ができたとも思えないし。
証拠は、予告状に「物資強奪」なんて書いてあったこと。あれは強奪ってほど勇ましいもんじゃないよね。実家から勝手に持ち出しただけで、最大限まで格好よくいったところで、こそ泥が良いところだ。
でも青年団は、ものすごい武勇伝として語ったんじゃないかな。
だからシュクケイ陣営としては、首謀者のリゲンが極刑に処されるんじゃないかと考える。
それを回避するため、彼らは盗賊団としてハクゲンの村を襲う必要があった。
「そんなとこですよね。シュクケイどの」
「正解だ。やはり貴殿は怖ろしい御仁だな。ライオネルどの」
シニカルな笑みを交わし合う。
大げさな報告を信じて村を襲撃した軍師と、そんな連中に読み合いで負けてしまった軍師である。
ばつが悪いことこの上ないよね。お互いに。
ラキョーの都を追放されたシュクケイが、なんでこんな国境近くに潜伏していたのかといえば、ここが武力の空白地だからだ。
国軍である国境守備隊と、インダーラ王国と領地を接しているサントン郡の太守(領主のことらしい)のホウシーの軍には互いに遠慮がある。
けっして不仲なわけではないが、命令系統が違うのだから当然だ。
互いの職分を侵さないよう、邪魔をしないよう気を遣いあった結果として、ハクゲンの村の周辺には、どちらの部隊も掌握していないけど軍が駐屯するのに向いた土地、というのがいくつもある。
しかもこれは、インダーラとの国境に限った話ではないらしい。
「国境守備は現地の太守に任せるべきってのは、ずっと言っていたことなんだけどな」
シュクケイの忠言を国が受け入れなかったため、彼らはこうして潜伏場所を得られたわけだが。
なかなか皮肉な結末である。
「ていうか、潜伏する必要はないのでは? 追放されただけで、べつにお尋ね者になったわけではないのでしょう?」
「いやあ」
「いやあじゃない!」
照れたように笑うシュクケイの頭に、怒声とともに飛んできた木皿が命中した。
そりゃもう、ぱっかーんって勢いで。
笑顔のまま、ばたりとシュクケイが突っ伏しちゃったよ。
犯人はコウギョク。見事な投擲である。
「都を出てから、各地で人助けだのなんだのやってるうちに、太守や高級官僚の恨みを買って、お尋ね者になっちゃったのよ」
ふんすと黒髪の美女が鼻息を荒くする。
貧しい庶民を助けたり、泣いている弱者を助けたりしていく過程で、役人たちの顔を潰しまくったそうだ。
皇国典範(法律)にも明るいシュクケイが理屈でやり込め、逆上して斬りかかってきた連中はコウギョクが物理的にやっつけ、そんな旅をしてきたらしい。
なんだか情景が目に浮かぶようだよ。
「でもギョクさん。そのおかげで仲間も増えたじゃないか」
むくっと身体を起こしたシュクケイが反論する。
「あたしはべつにケイと二人でも……」
「シュクケイ様! どうして最初から我らを頼ってくださらぬのです!」
なんだがごにょごにょ言い始めたコウギョクを圧して、村長ビャクの声が響く。
右手には槍を持ち、左手は青年団団長のリゲンの襟首をむんずと掴み。
酒場を借り切った後、どこかに消えたと思っていたらリゲンを解放しにいっていたらしい。
それはそれとして、なんで武器なんか持ってるんだろう。このご老体は。
「ハクゲン村三百六十戸、一千八百名! 喜んでシュクケイ様の麾下に入りまする!」
朗々たる宣言だ。
「ネルネルぅ。厄介ごとに巻き込まれたっぽいよぅ」
すすっと身体をよせたサリエリが耳打ちしてくれる。
ぽいっていうか、確定だよな。どう考えても。
どうしてこう行く先々で事が起きるかね。
俺は軽く肩をすくめ、ダークエルフの銀髪を撫でた。
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