二度追放された冒険者、激レアスキル駆使して美少女軍団を育成中!
閑話 悪神殺し
高速で襲い来る二つの八つ裂きリング、アエーシュマはまず一方を大剣でたたき割り、もう一方をスウェーして回避した。
「つまらん芸だな。小娘」
「そうですか?」
しかし、かわされたはずリングが大きく軌道を変えて戻ってくる。
悪神を切り裂こうと。
「それがつまらんといっている」
余裕をもって迎撃しようとアエーシュマが振り返った瞬間、アスカとサリエリが間合いを詰めた。
三方から同時攻撃である。
「油断しているときならばまだしも、くると判っている攻撃に対応することなど、一杯の茶を飲み干すより容易いな」
大剣で八つ裂きリングを破壊し、回し蹴りでアスカを弾き飛ばし、さらに踏み込んでサリエリに切りつける。
「にゅうう~ 攻撃が重いのん~」
なんと受け、さばいてはいるが、さしもの寝惚け眼も反撃に転じることはできない。
というより、神を名乗る悪魔と切り結べるだけでも、サリエリも充分に怪物級だといって良いだろう。
「そして足を止めた瞬間を狙う。そういうことだろう?」
ジャンプ一番、背後から踵落としを喰らわせようとしたメグの足をアエーシュマの左手が掴み、人形でも捨てるように投げ捨てる。
落下点にライオネルが走り込み、柔らかく受け止めていなかったら、メグの個人史は地面との衝突死という終焉を迎えただろう。
「大丈夫か。メグ」
「ネルダンさんに抱きとめてもらえるなら、投げられるのも悪くないスよ」
冗談を飛ばし、とんと一挙動で降り立ったスカウトが、ふたたび隠形した。
「今からここは神前ですわ。悪魔アエーシュマよ。頭を垂れなさい」
メイシャの言葉とともに錫杖が地面に突かれ、しゃらんと音が鳴る。
アエーシュマの足元に描かれた聖印から、清浄な白い光が天へと立ち上っていった。
「ぐあああっ!? きさまら! いったい何重の罠を!?」
悪魔の絶叫が響き渡る。
八つ裂きリングはアスカとサリエリの突進を隠すための罠。
アスカとサリエリの突進はメグの攻撃を隠すための罠。
そしてメグの蹴りは、至高神に祈りを捧げるメイシャを隠すための罠だ。
「読んだと思わせられていることに気がつかない時点で、あなたの負けなのですわ。あなたごときがネルママの知謀に及ぶわけがないでしょうに。アスカ、出番ですわよ」
「合点承知の助!」
そして聖剣オラシオンを構えたアスカが聖なる結界の中に躍り込む。
蹴り飛ばされたダメージなどまったく感じさせず。
というより、ダメージなど最初からなかった。
蹴り飛ばされたのではなく、自ら後ろに跳んだだけだからである。
四つめの罠だ。
最も戦闘力の高いアスカを、ここぞという局面で投入するため、いったん下げる。悪魔に自分の戦果を誤断させて。
アスカが、蹴り飛ばされるほど弱いのだと。
結界の中で弱体化したアエーシュマでは、闘神の称号を奉られるアスカとぎりぎり互角。
「そしてぇ、そろそろうちも本気を出すのん~」
これに勇者サリエリの攻撃も加わるのだから、瞬く間に劣勢に追い込まれていく。
二対一という状況で、それでも一気に片がつかないのは、仮にも神を名乗るような大悪魔だからだろう。
ミリアリアとメイシャは、もう一手必要なのだと考えた。
期せずして同時に。
ちらりと互いに目配せして微笑する。
軍師ライオネルの薫陶よろしきを得ている大賢者と聖女だ。
なにをするべきか、相手がなにを望んでいるか、口に出さなくても判る。
「ホーリーチェイン!」
メイシャの声に応じ、大地から輝く鎖が伸びてアエーシュマに巻き付き、その場につなぎ止める。
「子供だましを!」
だが、拘束できたのは数瞬。
砂時計から落ちる砂粒が数えられるくらいの短い時間に過ぎない。
力ずくで鎖が引きちぎられる。
短時間すぎて、アスカもサリエリも決定的な一撃を出すことはできなかった。
拘束された瞬間こそが好機だったのに。
作戦失敗、と、悪魔は思っただろうか。
「けれど、その数瞬であなたは勝機を失ったのです。悪魔アエーシュマ」
皮肉っぽく唇を歪めたミリアリアが、悪魔に向けてまっすぐに伸ばした指先をくいと曲げた。
挑発、ではない。
次の瞬間、悪魔の背に三本の氷の槍が深々と突き刺さる。
「ぐ……あ……どこから……?」
「魔法は、べつに自分の周囲に展開させなくてはいけない、と決まっているわけではありませんよ。大悪魔さん」
大賢者が笑う。
彼女はアイシクルランスをアエーシュマの背後に形成し、自分の方へと向けて射出したのだ。
もし悪魔が気づいていて回避したなら、壮大な自爆となったことだろう。
しかし、そうならないことをミリアリアは確信していた。否、知っていた。
なぜなら、メイシャが布石を打ってくれるから。
彼女たちの連携に言葉はいらない。
ライオネルだったらどう指示するか、それを頭に浮かべれば、いつだってそれが最適解だ。
「小娘ども……っ!」
「ここで怒るのは悪手スね。余裕がなくなったのがまるわかりス」
メグの声は悪魔の足元から。
放たれるのは地を這うような姿勢からの水面蹴りだ。
ブーツの先に生えた白刃が臑裏の腱を切り裂く。
予想外の場所からの理に適った攻撃に、アエーシュマはたまらず体勢を崩してしまった。
そして彼はバランスと命、ふたつながらに失うのである。
鋭く突き込まれたアスカの聖剣オラシオンが胸を貫き、駆け抜けざまに振るわれたサリエリの炎剣エフリートが首筋を断ち切った。
断末魔すら残せず、悪神アエーシュマの身体が灰に変わってゆく。
「悪魔を……倒した……? たったの六人で……?」
信じられないものを見るかのようにシュイナが呟いた。
『希望』の驍勇は、たしかに聴いてはいたけれども。
実際に目の当たりにすると感動すら憶える。彼らはまさに人類の希望なのだと。
「まあ、俺はほぼほぼなにもしてないんだけどな」
「ええ、たしかに」
「いやいや。そこで頷かないで。悲しくなっちゃうから」
彼女を守るように立っていたライオネルが、はっはっは、と笑った。
「つまらん芸だな。小娘」
「そうですか?」
しかし、かわされたはずリングが大きく軌道を変えて戻ってくる。
悪神を切り裂こうと。
「それがつまらんといっている」
余裕をもって迎撃しようとアエーシュマが振り返った瞬間、アスカとサリエリが間合いを詰めた。
三方から同時攻撃である。
「油断しているときならばまだしも、くると判っている攻撃に対応することなど、一杯の茶を飲み干すより容易いな」
大剣で八つ裂きリングを破壊し、回し蹴りでアスカを弾き飛ばし、さらに踏み込んでサリエリに切りつける。
「にゅうう~ 攻撃が重いのん~」
なんと受け、さばいてはいるが、さしもの寝惚け眼も反撃に転じることはできない。
というより、神を名乗る悪魔と切り結べるだけでも、サリエリも充分に怪物級だといって良いだろう。
「そして足を止めた瞬間を狙う。そういうことだろう?」
ジャンプ一番、背後から踵落としを喰らわせようとしたメグの足をアエーシュマの左手が掴み、人形でも捨てるように投げ捨てる。
落下点にライオネルが走り込み、柔らかく受け止めていなかったら、メグの個人史は地面との衝突死という終焉を迎えただろう。
「大丈夫か。メグ」
「ネルダンさんに抱きとめてもらえるなら、投げられるのも悪くないスよ」
冗談を飛ばし、とんと一挙動で降り立ったスカウトが、ふたたび隠形した。
「今からここは神前ですわ。悪魔アエーシュマよ。頭を垂れなさい」
メイシャの言葉とともに錫杖が地面に突かれ、しゃらんと音が鳴る。
アエーシュマの足元に描かれた聖印から、清浄な白い光が天へと立ち上っていった。
「ぐあああっ!? きさまら! いったい何重の罠を!?」
悪魔の絶叫が響き渡る。
八つ裂きリングはアスカとサリエリの突進を隠すための罠。
アスカとサリエリの突進はメグの攻撃を隠すための罠。
そしてメグの蹴りは、至高神に祈りを捧げるメイシャを隠すための罠だ。
「読んだと思わせられていることに気がつかない時点で、あなたの負けなのですわ。あなたごときがネルママの知謀に及ぶわけがないでしょうに。アスカ、出番ですわよ」
「合点承知の助!」
そして聖剣オラシオンを構えたアスカが聖なる結界の中に躍り込む。
蹴り飛ばされたダメージなどまったく感じさせず。
というより、ダメージなど最初からなかった。
蹴り飛ばされたのではなく、自ら後ろに跳んだだけだからである。
四つめの罠だ。
最も戦闘力の高いアスカを、ここぞという局面で投入するため、いったん下げる。悪魔に自分の戦果を誤断させて。
アスカが、蹴り飛ばされるほど弱いのだと。
結界の中で弱体化したアエーシュマでは、闘神の称号を奉られるアスカとぎりぎり互角。
「そしてぇ、そろそろうちも本気を出すのん~」
これに勇者サリエリの攻撃も加わるのだから、瞬く間に劣勢に追い込まれていく。
二対一という状況で、それでも一気に片がつかないのは、仮にも神を名乗るような大悪魔だからだろう。
ミリアリアとメイシャは、もう一手必要なのだと考えた。
期せずして同時に。
ちらりと互いに目配せして微笑する。
軍師ライオネルの薫陶よろしきを得ている大賢者と聖女だ。
なにをするべきか、相手がなにを望んでいるか、口に出さなくても判る。
「ホーリーチェイン!」
メイシャの声に応じ、大地から輝く鎖が伸びてアエーシュマに巻き付き、その場につなぎ止める。
「子供だましを!」
だが、拘束できたのは数瞬。
砂時計から落ちる砂粒が数えられるくらいの短い時間に過ぎない。
力ずくで鎖が引きちぎられる。
短時間すぎて、アスカもサリエリも決定的な一撃を出すことはできなかった。
拘束された瞬間こそが好機だったのに。
作戦失敗、と、悪魔は思っただろうか。
「けれど、その数瞬であなたは勝機を失ったのです。悪魔アエーシュマ」
皮肉っぽく唇を歪めたミリアリアが、悪魔に向けてまっすぐに伸ばした指先をくいと曲げた。
挑発、ではない。
次の瞬間、悪魔の背に三本の氷の槍が深々と突き刺さる。
「ぐ……あ……どこから……?」
「魔法は、べつに自分の周囲に展開させなくてはいけない、と決まっているわけではありませんよ。大悪魔さん」
大賢者が笑う。
彼女はアイシクルランスをアエーシュマの背後に形成し、自分の方へと向けて射出したのだ。
もし悪魔が気づいていて回避したなら、壮大な自爆となったことだろう。
しかし、そうならないことをミリアリアは確信していた。否、知っていた。
なぜなら、メイシャが布石を打ってくれるから。
彼女たちの連携に言葉はいらない。
ライオネルだったらどう指示するか、それを頭に浮かべれば、いつだってそれが最適解だ。
「小娘ども……っ!」
「ここで怒るのは悪手スね。余裕がなくなったのがまるわかりス」
メグの声は悪魔の足元から。
放たれるのは地を這うような姿勢からの水面蹴りだ。
ブーツの先に生えた白刃が臑裏の腱を切り裂く。
予想外の場所からの理に適った攻撃に、アエーシュマはたまらず体勢を崩してしまった。
そして彼はバランスと命、ふたつながらに失うのである。
鋭く突き込まれたアスカの聖剣オラシオンが胸を貫き、駆け抜けざまに振るわれたサリエリの炎剣エフリートが首筋を断ち切った。
断末魔すら残せず、悪神アエーシュマの身体が灰に変わってゆく。
「悪魔を……倒した……? たったの六人で……?」
信じられないものを見るかのようにシュイナが呟いた。
『希望』の驍勇は、たしかに聴いてはいたけれども。
実際に目の当たりにすると感動すら憶える。彼らはまさに人類の希望なのだと。
「まあ、俺はほぼほぼなにもしてないんだけどな」
「ええ、たしかに」
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