二度追放された冒険者、激レアスキル駆使して美少女軍団を育成中!
第125話 悪魔アエーシュマ
ガイリアの領域に入り、新ミルト市まで一日半という場所で、それは突然に起こった。
陽光が降り注ぐ草原に突如として出現した火球。
旅人たちを巻き込んで炸裂する。
街道は、一瞬にして阿鼻叫喚の地獄絵図となった。
咄嗟にミリアリアが防御結界を張っていなかったら、俺たちも倒れて呻吟する側に入っていただろう。
「耐えたか。なかなかしぶといな」
正面から人影が近づいてくる。
薄ら笑いを浮かべながら。
「ネルママ。悪魔です」
「判ってる」
メイシャの忠告に頷きつつも、俺はすこし意外さを感じていた。
悪魔というのは総じて回りくどく、いわゆる搦め手を好んで使うものがおおい。
いきなり正面から攻撃ってのは、なんとなくらしくないように思ったのだ。
「意外そうだな。だがこう考えれば得心できるだろう。人間だって遊ぶ前に競技場の整備くらいする、と」
「……なるほど」
俺たちを排除するってのは、障害物をどかす感覚なわけか。
遊び場に邪魔な小石があったから、きちんと整備する。その程度のものだとこの悪魔は言いたいわけだ。
巻き込まれて死んだり怪我をした人たちは、石と一緒に片付けられてしまった草とか、そういう感じかな。
たいへんにお有り難いお話ですね。
こいつが言っているのが本当だったら、だけど。
「怒ったか?」
「いや。悪魔って、そんなしょーもない嘘をつくんだなと感心しただけだ」
せせら笑った悪魔に対して、俺はにやりと唇の端を持ち上げる。
そんな理由で襲撃したのだったら、このタイミングである必要はない。
どうしてガイリア王国に入ってから仕掛けたのか。
「理由なんてひとつしかないだろう。ロンデンの王妹がガイリアで殺されたって事実が欲しいだけだ。しかも『希望』が守っていたにもかかわらず」
「…………」
「新ミルトからも、国境警備隊からも援軍がきづらい場所って選択も、涙ぐましい計算だと思うよ。通行人まで巻き込むようなでかい魔法だって、俺たちを怒らせるのが目的というより、一撃で片付けたかったんだよな」
黙り込んだ悪魔に、今度は俺はせせら笑ってやった。
雑な計算だと。
「こういう大雑把なことをやるから見えてしまうんだよな。なにがなんでも四国同盟の樹立を妨害したいんだろうなって。四国が有機的に結びついてしまうと、勝算が何割か下がるって計算なんだろうなって」
「……小僧、この悪神アエーシュマを愚弄した罪、高くつくぞ!」
どこから取り出したのか血まみれの大剣を振りかざして突進してくる。
気が短いね。
「でもまあ、礼はいっておくよ。俺の長い話に付き合ってくれてありがとう、とね」
次の瞬間、アエーシュマの左右からアスカとサリエリが襲いかかる。
驚く暇もあればこそ、英雄と勇者の連続攻撃でさすがの悪神とやらも蹈鞴を踏んだ。
俺がアエーシュマと問答をしていた間、仲間たちはぼーっと眺めていたわけではない。
無言のまま、いつものフォーメーションに移行していたのである。
アスカとサリエリが前衛。ややさがった位置の俺がミリアリアとメイシャを守る。それからもちろん護衛対象のシュイナも。
「貴様ら!」
半歩後退して、前衛二人をちゃんと迎え撃とうとした悪神。
しかしその瞬間にバランスを崩して転倒する。背後に現れたメグに、したたかに膝裏を蹴られて。
隠形して遊撃。それがメグの役割だ。
驚愕の表情を浮かべたまま、それでもなお次々に襲いかかる聖剣オラシオンと炎剣エフリートを転がって回避する。
とてつもない勝負勘だが、なかなか反撃には転じられない。
立ち上がることができないからだ。
「オレの蹴りをただの膝かっくんだと思われたら困るスね。腱の一本二本は絶たせてもらったスよ」
にやりと笑ったメグがふたたびその姿を消す。
彼女のこの働きがあるから、アスカもサリエリも思う存分に戦えるという側面がある。敵が前衛の戦士たちだけに集中できないのだ。
「なめるなよ! 人間!」
「いけません! みなさん集まって!」
いらついたアエーシュマの声と、メイシャの叫びが重なる。
同時だった。
金髪の司教が俺たち全員をホーリーフィールドで包むのと、悪神が瘴気のようなものをまき散らすのと。
倒れている人たちがぴくぴくと痙攣し、息絶えていく。
おそらく生命力を吸われて。
みるみるうちにアエーシュマのダメージが回復していった。
「あいつ……人々の命を吸い取っているのか……」
ぎり、と、シュイナが奥歯を噛みしめた。
気持ちは判るが感情を激させるな。それも悪魔の栄養にされてしまうぞ。
ぽん、と俺は女騎士の肩を叩く。
「クレバーにな」
助言するのはそれだけ。
俺だって、はらわたが煮えくり返るような思いである。まったくなにも関係ない通行人を巻き込み、あまつさえその命を喰らう悪魔に。
だが、だからこそ激情に身を委ねてはいけない。
怒り、哀しみ、恐怖、憎悪、そういうのはすべて悪魔のエネルギーになってしまう。
「……はい。軍師ライオネル」
ふうと息を吐き、シュイナは肩の力を抜く。
やがて瘴気が晴れれば、周囲には干からびた死体。そして薄ら笑いのアエーシュマが立っていた。
完全回復したのか、それともそう見せているだけか。
「無辜の民を殺した罪、あなた一人の命で贖えるものですか。八つ裂きリング! ダブル!」
高速回転する氷の刃を、なんと二つも作り出したミリアリアが、フェンリルの杖をびしっと悪神に向けた。
スプーン一杯分の怖れもなく。
陽光が降り注ぐ草原に突如として出現した火球。
旅人たちを巻き込んで炸裂する。
街道は、一瞬にして阿鼻叫喚の地獄絵図となった。
咄嗟にミリアリアが防御結界を張っていなかったら、俺たちも倒れて呻吟する側に入っていただろう。
「耐えたか。なかなかしぶといな」
正面から人影が近づいてくる。
薄ら笑いを浮かべながら。
「ネルママ。悪魔です」
「判ってる」
メイシャの忠告に頷きつつも、俺はすこし意外さを感じていた。
悪魔というのは総じて回りくどく、いわゆる搦め手を好んで使うものがおおい。
いきなり正面から攻撃ってのは、なんとなくらしくないように思ったのだ。
「意外そうだな。だがこう考えれば得心できるだろう。人間だって遊ぶ前に競技場の整備くらいする、と」
「……なるほど」
俺たちを排除するってのは、障害物をどかす感覚なわけか。
遊び場に邪魔な小石があったから、きちんと整備する。その程度のものだとこの悪魔は言いたいわけだ。
巻き込まれて死んだり怪我をした人たちは、石と一緒に片付けられてしまった草とか、そういう感じかな。
たいへんにお有り難いお話ですね。
こいつが言っているのが本当だったら、だけど。
「怒ったか?」
「いや。悪魔って、そんなしょーもない嘘をつくんだなと感心しただけだ」
せせら笑った悪魔に対して、俺はにやりと唇の端を持ち上げる。
そんな理由で襲撃したのだったら、このタイミングである必要はない。
どうしてガイリア王国に入ってから仕掛けたのか。
「理由なんてひとつしかないだろう。ロンデンの王妹がガイリアで殺されたって事実が欲しいだけだ。しかも『希望』が守っていたにもかかわらず」
「…………」
「新ミルトからも、国境警備隊からも援軍がきづらい場所って選択も、涙ぐましい計算だと思うよ。通行人まで巻き込むようなでかい魔法だって、俺たちを怒らせるのが目的というより、一撃で片付けたかったんだよな」
黙り込んだ悪魔に、今度は俺はせせら笑ってやった。
雑な計算だと。
「こういう大雑把なことをやるから見えてしまうんだよな。なにがなんでも四国同盟の樹立を妨害したいんだろうなって。四国が有機的に結びついてしまうと、勝算が何割か下がるって計算なんだろうなって」
「……小僧、この悪神アエーシュマを愚弄した罪、高くつくぞ!」
どこから取り出したのか血まみれの大剣を振りかざして突進してくる。
気が短いね。
「でもまあ、礼はいっておくよ。俺の長い話に付き合ってくれてありがとう、とね」
次の瞬間、アエーシュマの左右からアスカとサリエリが襲いかかる。
驚く暇もあればこそ、英雄と勇者の連続攻撃でさすがの悪神とやらも蹈鞴を踏んだ。
俺がアエーシュマと問答をしていた間、仲間たちはぼーっと眺めていたわけではない。
無言のまま、いつものフォーメーションに移行していたのである。
アスカとサリエリが前衛。ややさがった位置の俺がミリアリアとメイシャを守る。それからもちろん護衛対象のシュイナも。
「貴様ら!」
半歩後退して、前衛二人をちゃんと迎え撃とうとした悪神。
しかしその瞬間にバランスを崩して転倒する。背後に現れたメグに、したたかに膝裏を蹴られて。
隠形して遊撃。それがメグの役割だ。
驚愕の表情を浮かべたまま、それでもなお次々に襲いかかる聖剣オラシオンと炎剣エフリートを転がって回避する。
とてつもない勝負勘だが、なかなか反撃には転じられない。
立ち上がることができないからだ。
「オレの蹴りをただの膝かっくんだと思われたら困るスね。腱の一本二本は絶たせてもらったスよ」
にやりと笑ったメグがふたたびその姿を消す。
彼女のこの働きがあるから、アスカもサリエリも思う存分に戦えるという側面がある。敵が前衛の戦士たちだけに集中できないのだ。
「なめるなよ! 人間!」
「いけません! みなさん集まって!」
いらついたアエーシュマの声と、メイシャの叫びが重なる。
同時だった。
金髪の司教が俺たち全員をホーリーフィールドで包むのと、悪神が瘴気のようなものをまき散らすのと。
倒れている人たちがぴくぴくと痙攣し、息絶えていく。
おそらく生命力を吸われて。
みるみるうちにアエーシュマのダメージが回復していった。
「あいつ……人々の命を吸い取っているのか……」
ぎり、と、シュイナが奥歯を噛みしめた。
気持ちは判るが感情を激させるな。それも悪魔の栄養にされてしまうぞ。
ぽん、と俺は女騎士の肩を叩く。
「クレバーにな」
助言するのはそれだけ。
俺だって、はらわたが煮えくり返るような思いである。まったくなにも関係ない通行人を巻き込み、あまつさえその命を喰らう悪魔に。
だが、だからこそ激情に身を委ねてはいけない。
怒り、哀しみ、恐怖、憎悪、そういうのはすべて悪魔のエネルギーになってしまう。
「……はい。軍師ライオネル」
ふうと息を吐き、シュイナは肩の力を抜く。
やがて瘴気が晴れれば、周囲には干からびた死体。そして薄ら笑いのアエーシュマが立っていた。
完全回復したのか、それともそう見せているだけか。
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