二度追放された冒険者、激レアスキル駆使して美少女軍団を育成中!
第120話 獣人の村
どんなトラブルでもそうなんだけど、一方の主張だけをきいて善悪理非は決められない。
現状ではアカーシルの言い分だけしか判らないからね。どうしてもモルグが悪いように思えてしまう。
けど、モルグにはモルグの主張があるはずなんだ。
「そういうもんなの? 母ちゃん」
ほてほてと街道を歩きながらアスカが首をかしげる。
今回、俺が最もしっかり手綱を握っておかないといけない娘だ。直情型で複雑な思考が苦手なんだもの。
いま彼女の中では、モルグが一方的な悪役に思えていることだろう。
「そういうものなのさ。誰だって、自分に都合の悪いことは語らないからな」
俺は肩をすくめてみせる。
ドルトルが嘘をついている、とまでは言わない。
けれど、事実のすべてを語っているわけではもっとないだろう。あえて言わなかったことの一つや二つは必ずあるものだ。
「このケースだと、二人の結婚に関してより強硬に反対していたのはドルトルだろうってこととかな」
「え? なんてそんなことが判るの?」
「そりゃあ、ドルトルは婿を取る立場じゃなくて嫁に出す立場だからさ。愛娘を獣人に取られると思えば、そりゃ虚心ではいられないだろうよ」
反対に、獣人の側ではいくらでも体裁の整えようはある。
ニナは愛妾ということにして、正妻はべつに設けるとかね。あんまり誠実なやり方ではないけれど、あくまで方法論の一つとしてね。
だから、獣人たち怒りの方向性として、あのときお前が反対しなければ、というものになる可能性もあるわけだ。
「でもワータイガーたちも反対してたんだよね?」
「と、人間は主張しているな」
「ああ! だから両方の言い分を聞かないとダメってこと!?」
理解してくれたのか、アスカが顔を輝かせる。
獣人が結婚に反対していた、というのはドルトルかもらった情報にすぎない。本当かどうかは判らないし、本当だったとしても程度がまったく判らないのだ。
反対といったところで「うーむ、あまり気乗りせんなぁ」から「絶対に許さん!」まで、様々だから。
「よくできました。えらいぞ。アスカ」
なでなでと頭を撫でてやる。
えへへー、と笑うが、なぜか他のメンバーが不満顔だ。
「私だって、当たり前のように判ってましたけど?」と、ミリアリア。
「わたくしも判っておりましたわ。なのにアスカだけ褒められるんですのね」とメイシャ。
「ネルダンさんはアスカに甘いんスよ」
「差別はんた~い」
メグとサリエリまで。
なんだこの状況。
俺は苦笑して、全員の頭を撫でた。
きっと教師ってこういう心境なんだろうなと思いなから。
モルグの村というのは、想像以上にちゃんとしていた。
囲いも石造りだったし街門もある。
規模としてはアカーシルの宿場をはるかにしのいでいる感じだ。
「漠然とぉ、集落みたいなのを想像してたんだけどねぃ」
「俺もだ」
先入観は禁物だと笑うサリエリと顔を見合わせ、俺もくすりと笑った。
街壁の規模から考えて、人口は三千くらいはいるだろう。
その長となれば立派な名士だ。
息子の異種族婚を手放しで認められる立場ではないだろうってのが容易に想像できる。
街門の前で槍を構える虎頭の兵士に近づく。
「冒険者クラン『希望』のライオネルという。族長ラシルに面会したい。取り次いでもらえるか」
「承知した」
堂々と名乗って来意を告げると、重々しく兵士が頷いた。
昨日の件は聞き及んでいるのだろうし、一千名の部隊でリントライト王国軍四万を打ち負かしたっていう俺の虚名が、こういうときに役に立つのである。
実際は、フレアチックエクスプロージョンの魔法にびびって王国軍が勝手に瓦解しただけで、戦場では俺はなにもしてないけどね。
兵士の一人は俺たちに槍を向けたまま、もう一人が村の中へと走って消えていく。
なかなかの俊足だ。
残ってるやつもけっこう強そう。さりげなくアスカが俺を守る位置に立つ。
最近のこの立ち位置、微妙に傷つくんだよな。
たしかに英雄アスカは、もう俺なんかよりずっと強いんだけどさ。
けど、俺だってひとかどの剣士だという自負があるんですよ。
鍛え直そうかな。
それに、俺の戦い方に焔断が合ってない気もするんだよ。本質的に使い方を間違っているっていうのか、そんな感じだ。
だから一度産地のランズフェローに行って、ちゃんと使い方を学んだ方が良いんじゃないかって思うことがある。
どんな天才だって学んでないことはできない。まして凡才の俺だもの。
物思いにふけっていると、先ほどの兵士が戻ってきた。
「お会いになります。こちらへどうぞ」
と案内してくれる。
俺たちが横を通り過ぎるとき、いままで見張っていた兵士が露骨にほっとした顔をした。
まあ、闘神アスカとのにらみ合いだったわけだからね。
きっと精神力をごっそり削られたことだろう。ご愁傷様。
兵士に先導されて村内を歩く。
闘神アスカ……とか、大賢者ミリアリア……とか、聖女メイシャ……というささやき声が、そこここから聞こえてきた。
なかなか注目されているようで、けっこうなことである。
軍師ライオネルとか韋駄天メグとか勇者サリエリって声は聞こえない。仕方ないね。知名度に差があるからね。
ましてサリエリやメグなんて、わざと三人娘を際立たせて、自分は目立たないように計算しているし。
やがて俺たちは、ひときわ大きな屋敷に到着する。
そして扉の前には、やっぱりひときわ大きなワータイガーが仁王立ちしていた。
たぶん、この人がラシルなんだろうね。
現状ではアカーシルの言い分だけしか判らないからね。どうしてもモルグが悪いように思えてしまう。
けど、モルグにはモルグの主張があるはずなんだ。
「そういうもんなの? 母ちゃん」
ほてほてと街道を歩きながらアスカが首をかしげる。
今回、俺が最もしっかり手綱を握っておかないといけない娘だ。直情型で複雑な思考が苦手なんだもの。
いま彼女の中では、モルグが一方的な悪役に思えていることだろう。
「そういうものなのさ。誰だって、自分に都合の悪いことは語らないからな」
俺は肩をすくめてみせる。
ドルトルが嘘をついている、とまでは言わない。
けれど、事実のすべてを語っているわけではもっとないだろう。あえて言わなかったことの一つや二つは必ずあるものだ。
「このケースだと、二人の結婚に関してより強硬に反対していたのはドルトルだろうってこととかな」
「え? なんてそんなことが判るの?」
「そりゃあ、ドルトルは婿を取る立場じゃなくて嫁に出す立場だからさ。愛娘を獣人に取られると思えば、そりゃ虚心ではいられないだろうよ」
反対に、獣人の側ではいくらでも体裁の整えようはある。
ニナは愛妾ということにして、正妻はべつに設けるとかね。あんまり誠実なやり方ではないけれど、あくまで方法論の一つとしてね。
だから、獣人たち怒りの方向性として、あのときお前が反対しなければ、というものになる可能性もあるわけだ。
「でもワータイガーたちも反対してたんだよね?」
「と、人間は主張しているな」
「ああ! だから両方の言い分を聞かないとダメってこと!?」
理解してくれたのか、アスカが顔を輝かせる。
獣人が結婚に反対していた、というのはドルトルかもらった情報にすぎない。本当かどうかは判らないし、本当だったとしても程度がまったく判らないのだ。
反対といったところで「うーむ、あまり気乗りせんなぁ」から「絶対に許さん!」まで、様々だから。
「よくできました。えらいぞ。アスカ」
なでなでと頭を撫でてやる。
えへへー、と笑うが、なぜか他のメンバーが不満顔だ。
「私だって、当たり前のように判ってましたけど?」と、ミリアリア。
「わたくしも判っておりましたわ。なのにアスカだけ褒められるんですのね」とメイシャ。
「ネルダンさんはアスカに甘いんスよ」
「差別はんた~い」
メグとサリエリまで。
なんだこの状況。
俺は苦笑して、全員の頭を撫でた。
きっと教師ってこういう心境なんだろうなと思いなから。
モルグの村というのは、想像以上にちゃんとしていた。
囲いも石造りだったし街門もある。
規模としてはアカーシルの宿場をはるかにしのいでいる感じだ。
「漠然とぉ、集落みたいなのを想像してたんだけどねぃ」
「俺もだ」
先入観は禁物だと笑うサリエリと顔を見合わせ、俺もくすりと笑った。
街壁の規模から考えて、人口は三千くらいはいるだろう。
その長となれば立派な名士だ。
息子の異種族婚を手放しで認められる立場ではないだろうってのが容易に想像できる。
街門の前で槍を構える虎頭の兵士に近づく。
「冒険者クラン『希望』のライオネルという。族長ラシルに面会したい。取り次いでもらえるか」
「承知した」
堂々と名乗って来意を告げると、重々しく兵士が頷いた。
昨日の件は聞き及んでいるのだろうし、一千名の部隊でリントライト王国軍四万を打ち負かしたっていう俺の虚名が、こういうときに役に立つのである。
実際は、フレアチックエクスプロージョンの魔法にびびって王国軍が勝手に瓦解しただけで、戦場では俺はなにもしてないけどね。
兵士の一人は俺たちに槍を向けたまま、もう一人が村の中へと走って消えていく。
なかなかの俊足だ。
残ってるやつもけっこう強そう。さりげなくアスカが俺を守る位置に立つ。
最近のこの立ち位置、微妙に傷つくんだよな。
たしかに英雄アスカは、もう俺なんかよりずっと強いんだけどさ。
けど、俺だってひとかどの剣士だという自負があるんですよ。
鍛え直そうかな。
それに、俺の戦い方に焔断が合ってない気もするんだよ。本質的に使い方を間違っているっていうのか、そんな感じだ。
だから一度産地のランズフェローに行って、ちゃんと使い方を学んだ方が良いんじゃないかって思うことがある。
どんな天才だって学んでないことはできない。まして凡才の俺だもの。
物思いにふけっていると、先ほどの兵士が戻ってきた。
「お会いになります。こちらへどうぞ」
と案内してくれる。
俺たちが横を通り過ぎるとき、いままで見張っていた兵士が露骨にほっとした顔をした。
まあ、闘神アスカとのにらみ合いだったわけだからね。
きっと精神力をごっそり削られたことだろう。ご愁傷様。
兵士に先導されて村内を歩く。
闘神アスカ……とか、大賢者ミリアリア……とか、聖女メイシャ……というささやき声が、そこここから聞こえてきた。
なかなか注目されているようで、けっこうなことである。
軍師ライオネルとか韋駄天メグとか勇者サリエリって声は聞こえない。仕方ないね。知名度に差があるからね。
ましてサリエリやメグなんて、わざと三人娘を際立たせて、自分は目立たないように計算しているし。
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