二度追放された冒険者、激レアスキル駆使して美少女軍団を育成中!
第116話 悪魔アルラトゥ
まず飛び出すのはアスカとサリエリ。息の合ったツートップである。
そしてメグがすうっと姿を消し、俺の背後ではミリアリアとメイシャが詠唱を始めた。
わざわざ口に出して指示するまでもない、『希望』の固定フォーメーションである。
「笑わせるわ。小娘が二匹で妾に挑むか」
待ち構えるアルラトゥの眼前で、アスカが左にサリエリが右に跳ぶ。
互いの位置を入れ替えるだけの単純なフェインドだ。
悪魔がそんなものに引っかかるはずもなく、正確に二人の動きをトレースする。
その瞬間。
「ぐあ!?」
数本の投げナイフがアルラトゥの身体に突き刺さった。
メグの攻撃である。
単純なフェイントは、べつにそれで悪魔を翻弄できると考えたからではない。アスカとサリエリの身体が重なった瞬間、ほんの一瞬だけアルラトゥの視線が通らないブラインドの位置ができる。それを作り出すためだ。
もちろんメグに攻撃の契機を与えるための。
ナイフを投げた次の瞬間には、ふたたび彼女は隠形している。
アルラトゥにしてみれば、なにもないところから突然ナイフが飛んできたように見えるだろう。
どこから攻撃されたのか、悪魔が探るだけの時間は与えられなかった。
左右からアスカとサリエリが斬りかかったからである。
動揺しているところに攻撃されたら、さすがの悪魔もたまらない。小さな傷がいくつも刻まれていく。
「舐めるな!」
魔力を爆発させて、接近戦組を吹き飛ばそうと試みる。
「あなたがですね。解呪」
そのタイミングを狙っていたミリアリアの魔法が決まり、アルラトゥの魔力爆発を無害なそよ風に変えた。
「ここは神前ですわ。頭を垂れなさいませ」
そしてメイシャの聖なる結界が発動する。
アルラトゥの足元に輝く聖印が浮かび上がり、柔らかな光が天上へと昇っていく。
耳をつんざく絶叫。
大司祭級と称されるメイシャの神聖魔法だ。
悪魔だって大ダメージである。
「よし。たたみかけるぞ」
俺の号令一下、接近戦組が本格攻勢に出た。
聖剣オラシオンが、炎剣エフリートが、縦横に悪魔の身体を切り裂く。
「おのれぇ……」
体勢を立て直そうと、アルラトゥが二歩三歩と後退する。
まさかそこがメグの敷設した聖なる針山だとも知らずに。
隠形したあと、彼女は遊んでいたわけではない。
俺たちの攻勢にたじろいだアルラトゥが後退するのを見越して、せっせとカルトロップをばらまいていたのだ。
もちろん、しっかり神聖魔法の施されているやつを。
「ぎゃぁぁぁぁぁ!」
絶叫をあげ、悪魔が尻餅をつく。
そんな隙だらけの敵を攻撃しないような戦士は、たぶん人道的だとは評されないだろう。
ただの間抜けである。
そしてアスカとサリエリは、間抜けでもお人好しでもなかった。
言動はアレだけどね。
転んだアルラトゥに、ざっすざすと剣を突き刺す。
悪魔としては転がって逃げるしかない。カルトロップだらけの床を。
究極の選択である。
このまま刺し殺されるか、全身に小癪な武器が刺さるけど距離を取るか。
前者を選べるはずがない。
ある程度のダメージを覚悟して、安全圏、つまりアスカとサリエリがいない方向に逃れるしかないのである。
「そして、そこには俺が待っているわけだ」
「な!?」
無様に転がって距離を取り、なんとか立ち上がった瞬間、俺の焔断がアルラトゥの身体を袈裟懸けにする。
「ばか……な……?」
ほぼ致命傷だったと思うのだが、それでもデスサイズを俺の方へと伸ばしてくる悪魔。
灼けつくように。
「だから、バカはあなたですって。アイシクルランス! スリーウェイ! ダブル!」
しかし、その執念も及ばない。
包囲するように現れた六本の氷の槍が、アルラトゥを串刺しにしてその場に縫い付ける。
「アスカ。サリエリ。成敗!」
「らじゃ!」
「りょ~」
炎剣エフリートが胴を薙ぎ、聖剣オラシオンが悪魔の首を切り飛ばした。
断末魔を残すことすらなくアルラトゥが砂に変わっていく。
「大勝利!」
「いえ~い」
ハイタッチを交わす英雄と勇者であった。
「ふう。なんとか勝ったな」
「ええ。いつものことながら、悪魔と戦うのは緊張します」
近づいてきたミリアリアが俺のつぶやきに応える。
かるく頷きつづ視線を動かせば、隠形を解いたメグがメイシャにおやつを与えていた。
「アイシクルランスで動きが止まらなかったらどうしようかと思いましたよ。母さん、前に出すぎです」
「むしろ、なんであの袈裟懸けで滅びなかったのか。俺の計算ではあれで決まったはずなんだが」
ダメージの蓄積的に。
比べる対象としては以前に戦った悪魔フルーレティしかないからね。あれとの比較だ。
「悪魔にも格とか強さの違いとかあるかもしれませんね。ていうか、それと母さんが前に出すぎる問題とは別です。軍師なんて後衛職の代表格なんですから」
「俺って軍師だけど剣士……」
「あぁん?」
「いえ、すいません。なんかすいません」
チームで一番ちっこいミリアリアに気圧され、俺は卑屈にぺこぺこと頭を下げるのであった。
なんだろう。
もう娘たちのなかで、俺って弱い人って扱いなのかな。
あれかなぁ。アスラ神殿の武闘大会で一回戦敗退ってのが響いてるのかなぁ。
アスカが優勝で、サリエリが準決勝まで残ったのに、俺は一回戦ボーイだもんなぁ。
やばいぞ。
どこかで威厳を取り戻さないと。
「母さん。聴いてますか? 母さんの仕事は指示出しなんですからね?」
「あ、はい。聴いてます。ちゃんと判ってます」
揉み手をしつつぺこぺこ。
そしてメグがすうっと姿を消し、俺の背後ではミリアリアとメイシャが詠唱を始めた。
わざわざ口に出して指示するまでもない、『希望』の固定フォーメーションである。
「笑わせるわ。小娘が二匹で妾に挑むか」
待ち構えるアルラトゥの眼前で、アスカが左にサリエリが右に跳ぶ。
互いの位置を入れ替えるだけの単純なフェインドだ。
悪魔がそんなものに引っかかるはずもなく、正確に二人の動きをトレースする。
その瞬間。
「ぐあ!?」
数本の投げナイフがアルラトゥの身体に突き刺さった。
メグの攻撃である。
単純なフェイントは、べつにそれで悪魔を翻弄できると考えたからではない。アスカとサリエリの身体が重なった瞬間、ほんの一瞬だけアルラトゥの視線が通らないブラインドの位置ができる。それを作り出すためだ。
もちろんメグに攻撃の契機を与えるための。
ナイフを投げた次の瞬間には、ふたたび彼女は隠形している。
アルラトゥにしてみれば、なにもないところから突然ナイフが飛んできたように見えるだろう。
どこから攻撃されたのか、悪魔が探るだけの時間は与えられなかった。
左右からアスカとサリエリが斬りかかったからである。
動揺しているところに攻撃されたら、さすがの悪魔もたまらない。小さな傷がいくつも刻まれていく。
「舐めるな!」
魔力を爆発させて、接近戦組を吹き飛ばそうと試みる。
「あなたがですね。解呪」
そのタイミングを狙っていたミリアリアの魔法が決まり、アルラトゥの魔力爆発を無害なそよ風に変えた。
「ここは神前ですわ。頭を垂れなさいませ」
そしてメイシャの聖なる結界が発動する。
アルラトゥの足元に輝く聖印が浮かび上がり、柔らかな光が天上へと昇っていく。
耳をつんざく絶叫。
大司祭級と称されるメイシャの神聖魔法だ。
悪魔だって大ダメージである。
「よし。たたみかけるぞ」
俺の号令一下、接近戦組が本格攻勢に出た。
聖剣オラシオンが、炎剣エフリートが、縦横に悪魔の身体を切り裂く。
「おのれぇ……」
体勢を立て直そうと、アルラトゥが二歩三歩と後退する。
まさかそこがメグの敷設した聖なる針山だとも知らずに。
隠形したあと、彼女は遊んでいたわけではない。
俺たちの攻勢にたじろいだアルラトゥが後退するのを見越して、せっせとカルトロップをばらまいていたのだ。
もちろん、しっかり神聖魔法の施されているやつを。
「ぎゃぁぁぁぁぁ!」
絶叫をあげ、悪魔が尻餅をつく。
そんな隙だらけの敵を攻撃しないような戦士は、たぶん人道的だとは評されないだろう。
ただの間抜けである。
そしてアスカとサリエリは、間抜けでもお人好しでもなかった。
言動はアレだけどね。
転んだアルラトゥに、ざっすざすと剣を突き刺す。
悪魔としては転がって逃げるしかない。カルトロップだらけの床を。
究極の選択である。
このまま刺し殺されるか、全身に小癪な武器が刺さるけど距離を取るか。
前者を選べるはずがない。
ある程度のダメージを覚悟して、安全圏、つまりアスカとサリエリがいない方向に逃れるしかないのである。
「そして、そこには俺が待っているわけだ」
「な!?」
無様に転がって距離を取り、なんとか立ち上がった瞬間、俺の焔断がアルラトゥの身体を袈裟懸けにする。
「ばか……な……?」
ほぼ致命傷だったと思うのだが、それでもデスサイズを俺の方へと伸ばしてくる悪魔。
灼けつくように。
「だから、バカはあなたですって。アイシクルランス! スリーウェイ! ダブル!」
しかし、その執念も及ばない。
包囲するように現れた六本の氷の槍が、アルラトゥを串刺しにしてその場に縫い付ける。
「アスカ。サリエリ。成敗!」
「らじゃ!」
「りょ~」
炎剣エフリートが胴を薙ぎ、聖剣オラシオンが悪魔の首を切り飛ばした。
断末魔を残すことすらなくアルラトゥが砂に変わっていく。
「大勝利!」
「いえ~い」
ハイタッチを交わす英雄と勇者であった。
「ふう。なんとか勝ったな」
「ええ。いつものことながら、悪魔と戦うのは緊張します」
近づいてきたミリアリアが俺のつぶやきに応える。
かるく頷きつづ視線を動かせば、隠形を解いたメグがメイシャにおやつを与えていた。
「アイシクルランスで動きが止まらなかったらどうしようかと思いましたよ。母さん、前に出すぎです」
「むしろ、なんであの袈裟懸けで滅びなかったのか。俺の計算ではあれで決まったはずなんだが」
ダメージの蓄積的に。
比べる対象としては以前に戦った悪魔フルーレティしかないからね。あれとの比較だ。
「悪魔にも格とか強さの違いとかあるかもしれませんね。ていうか、それと母さんが前に出すぎる問題とは別です。軍師なんて後衛職の代表格なんですから」
「俺って軍師だけど剣士……」
「あぁん?」
「いえ、すいません。なんかすいません」
チームで一番ちっこいミリアリアに気圧され、俺は卑屈にぺこぺこと頭を下げるのであった。
なんだろう。
もう娘たちのなかで、俺って弱い人って扱いなのかな。
あれかなぁ。アスラ神殿の武闘大会で一回戦敗退ってのが響いてるのかなぁ。
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