二度追放された冒険者、激レアスキル駆使して美少女軍団を育成中!
第96話 オペレーションオロチ
フロートトレインは五両編成で、それぞれの車両に四十人が乗ることができる。
まあ、装備を全部降ろして人間だけにしたらもっとたくさん乗れるんだろうけど、それでは意味がないからね。
「で、まずはなにをするんだ。隊長。あとお土産どうしたよ」
「土産物を選ぶ時間もなかった。いきなりリアクターシップが迎えにきて、ここまで連れ去られてきたんだから」
ナザルに応えながら、俺は軍用地図を広げた。
地図って最高級の軍事機密なんだけど、こういうのを魔王イングラルはぽんと貸してくれるのである。
なんだろうね。
将来的に、マスル王国に住めとか言われそうだよね。
「まずは偵察だな。フロートトレインの俊足を活かしてダガン軍の様子を見ておきたいところだ」
俺は地図上のいくつかのポイントを指し示す。
おそらくは物資の集積場所にするだろうと考えられる町や村だ。
「いつも思うんだけどよ。なんでライオネルは集積場所とか判るんだ? オカンだからか?」
「そもそもオカン関係ねーだろうが。戦力の配置から、だいたい予想はつくんだよ」
ていっとナザルにツッコミを入れながら説明する。
べつに俺は千里眼を持ってるわけじゃない。
ただ、軍の行動っていうのにはパターンがあって、大軍になればなるほど自由は利かなくなるんだ。
六万なんて規模になったら、街道を使って行軍するしかないしね。
だからどこを狙っているかさえ判れば、進軍ルートも集結地点も十分に予想可能なんだよ。
「すげえな軍師さま」
「べつにすごくないって……」
「いやいや。すごいさ。なにしろ今言ったことの半分も俺には理解できなかった」
「だめぢゃねーか」
もう一度、裏拳でツッコミを入れておく。
集まっているライオネル隊幹部がくすくすと笑った。
一気に緊張がほぐれたようだ。
俺とナザルの漫才を見て。
もし狙ってやっているんだとしたら、ナザルは本当に良いリーダーだな。
『葬儀屋』に腕利きが集まるのも頷ける気がする。
今回のライオネル隊は二百人しかいないので、あまり細かく分けても仕方がない。なので四十人ずつの五小隊だ。
俺が率いる本隊。
そして、ナザル隊、ジョシュア隊、ニコル隊、サリエリ隊である。
それぞれの隊長はリントライト王国との戦いのときと一緒だ。
「わたしは母ちゃんを守ればいいんだね!」
元気に言って、俺の周囲をちょろちょろするアスカだけど、本当はこいつも一隊を指揮する経験を積ませたいんだよな。
至近で俺が指示を出さなくても、自分の判断で集団を動かせるように。
まだ無理かなぁ。
いきなり突撃とかやりそうだしなぁ。
夜陰に紛れて、滑るようにフロートトレインが進む。
音もなく。
灯りもなく。
「左前方に灌木があります。気をつけて」
「右に進路変更。ヨーソロー」
暗視の魔法で周囲を確認しながら指示を出すミリアリアに、なんだか変な言葉でアスカが応える。
魔導汽船に乗ったときに憶えたらしい。
そして憶えたことはすぐにやってみたい娘なのだ。
現在、ライオネル隊はダガン軍の後背に回り込み中である。
物資を集積している町や村を目指して。
威力偵察と、ちょっとした小細工をするために。
「ネル母さん。最初の村が見えてきました。護衛の兵がいるようです」
「どのくらいだ?」
「百人以下ということはないと思います」
「よしよし。良い感じだな」
ミリアリアの報告に俺はほくそ笑んだ。
目撃者があんまり少ないと意味がないからね。
「それじゃ。さっそく始めるか。投光器、警笛、最大出力。作戦開始だ」
『了解!』
操縦室に陣取る幹部たちが唱和し、車内放送で作戦開始を告げる。
静寂の平原にけたたましい音が鳴り響き、目をくらます光がまっすぐに投射された。
べつに武器ではない。
フロートトレインに最初から装備されている、安全のための機構だ。
けど、これを見たとき、俺はある作戦を思いついたのである。
村というか、物資を守っていたダガン兵たちが恐慌に陥った。闇の中から凄まじい音を立て、禍々しい光を目から放ちながら大蛇が迫ってきたから。
普通は怖いだろう。
フロートトレインなんて、俺だって初めて見たときに度肝を抜かれたからね。
それがすごい勢いで迫ってくるんだもん。
「魔法隊、斉射用意。駆け抜けざまに物資に火を放て」
ダガン軍は迎え撃つどころではない。
恐怖に頭を抱えて、逃げ惑ったりうずくまったりしている。
その隙を突いて村の至近をフロートトレインが通過する。窓際に陣取った魔法使いたちが次々と炎系の魔法を放ちながら。
物資だけじゃなくて、たぶん家とかも延焼しちゃうだろうけど、そこまで綿密に狙いは定められない。
言い訳になるけど軍事作戦なのだ。
自軍に損害を出さないように、出てもなるべく少なく済むように作戦を立てるけど、敵軍や敵国人の損害までゼロにする計算式を俺は持っていない。
せめて民間人が避難した後であって欲しいと祈るのみである。
高速移動状態で駆け抜けてゆく。
そして村からすこし離れたところで急制動。
今度は最後尾車両を先頭にして、もう一度、村へと突入するのだ。
なんとフロートトレインは、前と後ろどちらを先頭として使っても問題ない構造になっているのである。
「大混乱ですね。ネル隊長」
「ああ。俺がフロートトレインを知らないであそこにいたとしても、ああなっただろうな」
話しかけてきたジョシュアに俺は頷いてみせた。
未知なるモノへの恐怖というやつだ。そしてそれが闇の中から迫ってくるのだから怖ろしさは倍増だろう。
そうやってダガン軍の後背に、物心両面から圧力をかける。
これが、俺の立案した大蛇作戦の骨子だ。
「ホント、作戦名以外は完璧です」
うむうむと腕を組むジョシュアだった。
なにさ?
俺の考えたハイセンスなネーミングに、なんか文句でもあるわけ?
まあ、装備を全部降ろして人間だけにしたらもっとたくさん乗れるんだろうけど、それでは意味がないからね。
「で、まずはなにをするんだ。隊長。あとお土産どうしたよ」
「土産物を選ぶ時間もなかった。いきなりリアクターシップが迎えにきて、ここまで連れ去られてきたんだから」
ナザルに応えながら、俺は軍用地図を広げた。
地図って最高級の軍事機密なんだけど、こういうのを魔王イングラルはぽんと貸してくれるのである。
なんだろうね。
将来的に、マスル王国に住めとか言われそうだよね。
「まずは偵察だな。フロートトレインの俊足を活かしてダガン軍の様子を見ておきたいところだ」
俺は地図上のいくつかのポイントを指し示す。
おそらくは物資の集積場所にするだろうと考えられる町や村だ。
「いつも思うんだけどよ。なんでライオネルは集積場所とか判るんだ? オカンだからか?」
「そもそもオカン関係ねーだろうが。戦力の配置から、だいたい予想はつくんだよ」
ていっとナザルにツッコミを入れながら説明する。
べつに俺は千里眼を持ってるわけじゃない。
ただ、軍の行動っていうのにはパターンがあって、大軍になればなるほど自由は利かなくなるんだ。
六万なんて規模になったら、街道を使って行軍するしかないしね。
だからどこを狙っているかさえ判れば、進軍ルートも集結地点も十分に予想可能なんだよ。
「すげえな軍師さま」
「べつにすごくないって……」
「いやいや。すごいさ。なにしろ今言ったことの半分も俺には理解できなかった」
「だめぢゃねーか」
もう一度、裏拳でツッコミを入れておく。
集まっているライオネル隊幹部がくすくすと笑った。
一気に緊張がほぐれたようだ。
俺とナザルの漫才を見て。
もし狙ってやっているんだとしたら、ナザルは本当に良いリーダーだな。
『葬儀屋』に腕利きが集まるのも頷ける気がする。
今回のライオネル隊は二百人しかいないので、あまり細かく分けても仕方がない。なので四十人ずつの五小隊だ。
俺が率いる本隊。
そして、ナザル隊、ジョシュア隊、ニコル隊、サリエリ隊である。
それぞれの隊長はリントライト王国との戦いのときと一緒だ。
「わたしは母ちゃんを守ればいいんだね!」
元気に言って、俺の周囲をちょろちょろするアスカだけど、本当はこいつも一隊を指揮する経験を積ませたいんだよな。
至近で俺が指示を出さなくても、自分の判断で集団を動かせるように。
まだ無理かなぁ。
いきなり突撃とかやりそうだしなぁ。
夜陰に紛れて、滑るようにフロートトレインが進む。
音もなく。
灯りもなく。
「左前方に灌木があります。気をつけて」
「右に進路変更。ヨーソロー」
暗視の魔法で周囲を確認しながら指示を出すミリアリアに、なんだか変な言葉でアスカが応える。
魔導汽船に乗ったときに憶えたらしい。
そして憶えたことはすぐにやってみたい娘なのだ。
現在、ライオネル隊はダガン軍の後背に回り込み中である。
物資を集積している町や村を目指して。
威力偵察と、ちょっとした小細工をするために。
「ネル母さん。最初の村が見えてきました。護衛の兵がいるようです」
「どのくらいだ?」
「百人以下ということはないと思います」
「よしよし。良い感じだな」
ミリアリアの報告に俺はほくそ笑んだ。
目撃者があんまり少ないと意味がないからね。
「それじゃ。さっそく始めるか。投光器、警笛、最大出力。作戦開始だ」
『了解!』
操縦室に陣取る幹部たちが唱和し、車内放送で作戦開始を告げる。
静寂の平原にけたたましい音が鳴り響き、目をくらます光がまっすぐに投射された。
べつに武器ではない。
フロートトレインに最初から装備されている、安全のための機構だ。
けど、これを見たとき、俺はある作戦を思いついたのである。
村というか、物資を守っていたダガン兵たちが恐慌に陥った。闇の中から凄まじい音を立て、禍々しい光を目から放ちながら大蛇が迫ってきたから。
普通は怖いだろう。
フロートトレインなんて、俺だって初めて見たときに度肝を抜かれたからね。
それがすごい勢いで迫ってくるんだもん。
「魔法隊、斉射用意。駆け抜けざまに物資に火を放て」
ダガン軍は迎え撃つどころではない。
恐怖に頭を抱えて、逃げ惑ったりうずくまったりしている。
その隙を突いて村の至近をフロートトレインが通過する。窓際に陣取った魔法使いたちが次々と炎系の魔法を放ちながら。
物資だけじゃなくて、たぶん家とかも延焼しちゃうだろうけど、そこまで綿密に狙いは定められない。
言い訳になるけど軍事作戦なのだ。
自軍に損害を出さないように、出てもなるべく少なく済むように作戦を立てるけど、敵軍や敵国人の損害までゼロにする計算式を俺は持っていない。
せめて民間人が避難した後であって欲しいと祈るのみである。
高速移動状態で駆け抜けてゆく。
そして村からすこし離れたところで急制動。
今度は最後尾車両を先頭にして、もう一度、村へと突入するのだ。
なんとフロートトレインは、前と後ろどちらを先頭として使っても問題ない構造になっているのである。
「大混乱ですね。ネル隊長」
「ああ。俺がフロートトレインを知らないであそこにいたとしても、ああなっただろうな」
話しかけてきたジョシュアに俺は頷いてみせた。
未知なるモノへの恐怖というやつだ。そしてそれが闇の中から迫ってくるのだから怖ろしさは倍増だろう。
そうやってダガン軍の後背に、物心両面から圧力をかける。
これが、俺の立案した大蛇作戦の骨子だ。
「ホント、作戦名以外は完璧です」
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