二度追放された冒険者、激レアスキル駆使して美少女軍団を育成中!
第90話 懐かしい顔
冒険者ギルドに戦勝報告をおこない、数日後におこなわれたラクリス迷宮五十階層突破式典に参列した俺たちは、ようやく自由の身になった。
アスラ神族っていう神の眷属を倒しちゃったことで、冒険者に対する評価もぐーっと上がったし、四十階層で手に入れた金銀財宝の鑑定額が公表されたことで、冒険者に憧れる若者も増えてくれたらしい。
安定感こそはないが、一山当てたときの実入りは比較にならないから。
たとえば四十階の金銀財宝は、一人頭の計算で、一般的な労働者階級の十五年分に相当したわけだ。
これを、たった数日の仕事で手にし、さらにギルドからの報酬もある。
さらにさらに、神殺しの称号までもらえちゃうんだよ。
『固ゆで野郎』の戦士たちなんか、飲み屋とかでモテるモテる。やっぱり強い男って人気が出るからね。
そういう事実が若者たちのハートをがっちりとキャッチしたらしい。
にもかかわらず、俺は飲み屋に行ってもべつにモテないという哀しみな。
むしろ商売女たちが近づいてこないさ。
いや、判ってる。判ってますよ。
怖いんだよね。国王陛下や大将軍とも懇意で、それどころか魔王やピラン城主とも、直接話をできるわけだからね。
機嫌を損ねたら首が飛ぶ、なんて思われてるんだ。
つらい。
俺はそんな横暴な人間じゃないっての。
で、ひとりで飲んでいるのを見かねてか、ジーニカ女史とかカトレア司祭様とかマルガリータ導師様とかが、ちょいちょい俺の行きつけの酒場に顔を出しては、相手をしてくれるんだ。
家で飲むと娘たちも刺さってきて騒がしいから、大人の女性と静かに談笑する夜ってのも悪くない。
身分が違いすぎるんで、恋愛には発展のしようがないけどね。
「インダーラ王国ですか。私も話でしか聞いたことがありませんよ」
で、今宵のお相手はジェニファだ。
俺が酒場についてしばらくすると、ふらりとやってきたのである。
そして会えば、今後の話が出てしまう。
アスラ神族が持っていた武器を、インダーラ王国の神殿に奉納するための旅だ。
「もちろん冒険者ギルドとしてはお止めするような話ではないですし、呪いや祟りがあるかもということでしたら、とくに行った方が良いというのはわかりますが、寂しくはありますね。道中の無事を祈ってますよ」
ちん、と、グラスをぶつける。
なんとこの店は、ガラスでできたグラスを使っているのだ。
その分高いけどね。
家で、木製ジョッキでのむエール酒とは、またちょっと違った味わいなんだ。
「俺だって寂しいさ」
「え?」
「せっかくクランハウスができたのに、ぜんぜん我が家に帰れないんだからな」
ちびりちびりと蒸留酒を舐めながら愚痴がこぼれてしまう。
ゆっくりと自室で過ごしたいものだよ。
たまにはね。
獅子王の子供たちと遊びながら。
「……そういうところだぞ」
ぼそっとジェニファが言った。
なんか怖いよ。目が据わってるよ。
「なんで不機嫌になってるんだよ。よくわからないが、一杯おごるから機嫌直してくれ」
「焼きベーコンとチーズも付けてくれたら手を打ちましょう」
「さすが鬼のギルド職員だ。足元を見てくるね」
くすりと笑い、俺はウェイターにオーダーする。
ジェニファのリクエストだけでなく、もう何品か追加して。
「寂しいかどうかはともかくとして、長期間クランハウスを空けるのは良くありませんね」
「だよな」
いまや『希望』も、ガイリアのトップクランの一つだ。
クランハウスにはそれなりの金銭が蓄えられている。
メイシャが張ってくれたアンデッド除けの結界と、悪意を持つ者を排除する結界のおかげで、そうそう滅多のことはないと思うが、泥棒とかに狙われやすいのは事実だろう。
街壁の中でなく郊外にあるしね。
「管理人を雇ったらいかがですか? いまならそのくらいの財力はあるでしょう?」
「それはそうだが、問題は信頼度なんだよな」
留守の間、クランハウスの仕切りをすべて任せることになる。
蓄えられている財宝を持ち逃げしちゃうような人だったら困ってしまうのだ。
たぶんお互いにとってね。
そういう裏切りを、冒険者は絶対に許さないから。
地の果てまでも追いかけて、命をもって購わせる。
「うってつけの人材に心当たりがありますよ。会うだけ会ってみたらどうです?」
そう言って、ジェニファがにっこりと笑った。
翌日のことである。
結果からいうなら、クランハウスにやってきた人物は、到着と同時に採用が決まった。
なぜなら、
「アニータ! アニータじゃない!」
喜びの声とともにアスカが抱きついたからである。
ある事件で知己となった女性だ。
事件の詳しい内容は、彼女の名誉のためにも多くは語らないけれど、アスカもミリアリアもメイシャも、アニータのことを心配していたのである。
もちろん俺もね。
それでカイトス将軍に後事を託してたんだけど、当の将軍が王都を脱出することになったり、その王都自体がなくなってしまったりして、彼女は寄る辺をなくしてしまった。
で、他の難民たちと一緒にガイリアまで逃げてきたらしい。
商才もあるので、冒険者ギルドで事務の手伝いなどをしていたのだが、このたび、ジェニファに紹介されて『希望』を訪ねてくれたわけだ。
本当な。
あいつはこういうサプライズを仕掛けてくるんだから。
最高に信頼できる、最高に幸せになって欲しい人だもの。不採用なんてあるわけがない。
「みなさん。よろしくお願いします」
昔に比べたら、ずっとずっと明るくて魅力的な笑顔でぺこりと頭を下げる。
鬼の女家宰、アニータ誕生の瞬間であった。
この後、クランの会計を管理する彼女に、アスカたちが泣きながら給料の前借りをせがんでいるシーンを、俺は度々見かけることになるのだが、それはまたべつの説話で語られるべきものだろう。
アスラ神族っていう神の眷属を倒しちゃったことで、冒険者に対する評価もぐーっと上がったし、四十階層で手に入れた金銀財宝の鑑定額が公表されたことで、冒険者に憧れる若者も増えてくれたらしい。
安定感こそはないが、一山当てたときの実入りは比較にならないから。
たとえば四十階の金銀財宝は、一人頭の計算で、一般的な労働者階級の十五年分に相当したわけだ。
これを、たった数日の仕事で手にし、さらにギルドからの報酬もある。
さらにさらに、神殺しの称号までもらえちゃうんだよ。
『固ゆで野郎』の戦士たちなんか、飲み屋とかでモテるモテる。やっぱり強い男って人気が出るからね。
そういう事実が若者たちのハートをがっちりとキャッチしたらしい。
にもかかわらず、俺は飲み屋に行ってもべつにモテないという哀しみな。
むしろ商売女たちが近づいてこないさ。
いや、判ってる。判ってますよ。
怖いんだよね。国王陛下や大将軍とも懇意で、それどころか魔王やピラン城主とも、直接話をできるわけだからね。
機嫌を損ねたら首が飛ぶ、なんて思われてるんだ。
つらい。
俺はそんな横暴な人間じゃないっての。
で、ひとりで飲んでいるのを見かねてか、ジーニカ女史とかカトレア司祭様とかマルガリータ導師様とかが、ちょいちょい俺の行きつけの酒場に顔を出しては、相手をしてくれるんだ。
家で飲むと娘たちも刺さってきて騒がしいから、大人の女性と静かに談笑する夜ってのも悪くない。
身分が違いすぎるんで、恋愛には発展のしようがないけどね。
「インダーラ王国ですか。私も話でしか聞いたことがありませんよ」
で、今宵のお相手はジェニファだ。
俺が酒場についてしばらくすると、ふらりとやってきたのである。
そして会えば、今後の話が出てしまう。
アスラ神族が持っていた武器を、インダーラ王国の神殿に奉納するための旅だ。
「もちろん冒険者ギルドとしてはお止めするような話ではないですし、呪いや祟りがあるかもということでしたら、とくに行った方が良いというのはわかりますが、寂しくはありますね。道中の無事を祈ってますよ」
ちん、と、グラスをぶつける。
なんとこの店は、ガラスでできたグラスを使っているのだ。
その分高いけどね。
家で、木製ジョッキでのむエール酒とは、またちょっと違った味わいなんだ。
「俺だって寂しいさ」
「え?」
「せっかくクランハウスができたのに、ぜんぜん我が家に帰れないんだからな」
ちびりちびりと蒸留酒を舐めながら愚痴がこぼれてしまう。
ゆっくりと自室で過ごしたいものだよ。
たまにはね。
獅子王の子供たちと遊びながら。
「……そういうところだぞ」
ぼそっとジェニファが言った。
なんか怖いよ。目が据わってるよ。
「なんで不機嫌になってるんだよ。よくわからないが、一杯おごるから機嫌直してくれ」
「焼きベーコンとチーズも付けてくれたら手を打ちましょう」
「さすが鬼のギルド職員だ。足元を見てくるね」
くすりと笑い、俺はウェイターにオーダーする。
ジェニファのリクエストだけでなく、もう何品か追加して。
「寂しいかどうかはともかくとして、長期間クランハウスを空けるのは良くありませんね」
「だよな」
いまや『希望』も、ガイリアのトップクランの一つだ。
クランハウスにはそれなりの金銭が蓄えられている。
メイシャが張ってくれたアンデッド除けの結界と、悪意を持つ者を排除する結界のおかげで、そうそう滅多のことはないと思うが、泥棒とかに狙われやすいのは事実だろう。
街壁の中でなく郊外にあるしね。
「管理人を雇ったらいかがですか? いまならそのくらいの財力はあるでしょう?」
「それはそうだが、問題は信頼度なんだよな」
留守の間、クランハウスの仕切りをすべて任せることになる。
蓄えられている財宝を持ち逃げしちゃうような人だったら困ってしまうのだ。
たぶんお互いにとってね。
そういう裏切りを、冒険者は絶対に許さないから。
地の果てまでも追いかけて、命をもって購わせる。
「うってつけの人材に心当たりがありますよ。会うだけ会ってみたらどうです?」
そう言って、ジェニファがにっこりと笑った。
翌日のことである。
結果からいうなら、クランハウスにやってきた人物は、到着と同時に採用が決まった。
なぜなら、
「アニータ! アニータじゃない!」
喜びの声とともにアスカが抱きついたからである。
ある事件で知己となった女性だ。
事件の詳しい内容は、彼女の名誉のためにも多くは語らないけれど、アスカもミリアリアもメイシャも、アニータのことを心配していたのである。
もちろん俺もね。
それでカイトス将軍に後事を託してたんだけど、当の将軍が王都を脱出することになったり、その王都自体がなくなってしまったりして、彼女は寄る辺をなくしてしまった。
で、他の難民たちと一緒にガイリアまで逃げてきたらしい。
商才もあるので、冒険者ギルドで事務の手伝いなどをしていたのだが、このたび、ジェニファに紹介されて『希望』を訪ねてくれたわけだ。
本当な。
あいつはこういうサプライズを仕掛けてくるんだから。
最高に信頼できる、最高に幸せになって欲しい人だもの。不採用なんてあるわけがない。
「みなさん。よろしくお願いします」
昔に比べたら、ずっとずっと明るくて魅力的な笑顔でぺこりと頭を下げる。
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この後、クランの会計を管理する彼女に、アスカたちが泣きながら給料の前借りをせがんでいるシーンを、俺は度々見かけることになるのだが、それはまたべつの説話で語られるべきものだろう。
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