二度追放された冒険者、激レアスキル駆使して美少女軍団を育成中!
第86話 ダンジョンアタック
こつこつと迷宮の中に靴音が響く。
ラクリス迷宮。
誰が、いつ、なんのために造ったのか、なにひとつあきらかになっていない。
そういうダンジョンは、世界中にけっこうたくさんある。
遺跡とは、ちょっと似て非なる存在だ。
「ダンジョンアタックは、やっぱり冒険者の醍醐味だよね! ネル母ちゃん!」
前衛の位置を歩くアスカがはしゃいでいる。
意見には同意するけど油断しすぎだ。
「アスカ」
「判ってるよ! 前方の警戒を厳に、だよね!」
注意しようとしたら、先回りしていわれちゃったよ。
最前列はアスカとサリエリ、ややさがった位置に俺。その後ろにミリアリアとメイシャといういつもの布陣だ。
灯りは俺がランタンを持ち、サリエリが頭の上に、ミリアリアが杖の先に、それぞれ魔法の灯りをともしている。
そしてメグが隠形して先行偵察中だ。
まず安定したフォーメーションだから、アスカが油断しちゃうのも無理はない。
無理はないんだけど、油断したらダメでしょ。
俺は片手が塞がっている。サリエリも光源を担当しているのだから、即応要員はアスカなのだ。
モンスターの襲撃は、まずその身をもって受け止め、斬り伏せないといけないんだよ?
「まあまあ、ネル母さん。アスカの気持ちも判りますよ。久しぶりのダンジョンですからね」
ため息をついた俺を、ミリアリアが慰めてくれた。
前は、十階層に陣取ったキマイラを退治しにきたのである。今回はモンスター退治が目的ではなくダンジョン攻略。
四十四階層で足踏みしている『固ゆで野郎』を手助けして、五十階層まで進んでしまおうって作戦だ。
もちろん簡単な話じゃないよ。
たいていどこのダンジョンでもそうなんだけど、奥へ進めば進むほどモンスターは強力になっていくし、扉や宝箱に仕掛けられた罠も凶悪になっていく。
しかしそれをクリアして進むことこそが冒険者の本懐だし、醍醐味でもあるのだ。
「ネルダンさん。ネルダンさん。隠し部屋っぽいモノがある気がするス」
音もなく戻ってきたメグが謎の報告する。
「っぽいモノ?」
「そうス。構造的に部屋があるはずなんスよ」
「どういうことだ? メグは建造物の構造が判るのか?」
「オレにそんなもん判るわけがないスよ。でも」
言い置いて、メグは懐の隠しから野帳を取り出した。
活動中に気づいたことをなんでも書き留めておくんだよ、と、俺が買い与えたものである。
そこには細かい文字がびっしりと書き込まれていた。
まだ読み書きができるようになったばかりの彼女の字だから、けっして美しいとはいえないが。
「これが、いまいる四十階層の略図ス」
皆の視線が野帳に集中する。
ミリアリアの魔力探知で、ようやく隠し部屋の入口がわかった。
より正確には、入口を開けるための装置のありかがわかったというべきだろう。
しかし、場所さえ判明してしまえば、そこからはメグの独壇場である。
細かい道具をいくつも使い、彼女は入口を開く。
部屋というより、ホールのような場所だった。
正面には扉が三つ。
「昇降機、モンスター配備センター、宝物庫って書いてるの~ そのプレートは~」
のへーっとサリエリが読み取ってくれる。
ていうかこの人、はるか東方の言葉だろうと、神代の文字だろう、すらっすら読めちゃうのな。
特殊部隊として教育を受けているんだと思ったら、どうやら勇者の天賦が持っている能力に由来しているらしい。
どこの国の言葉でもわりと簡単に読み書きできてしまうという、言語理解って能力だそうだ。
いいなぁ。
俺もそういう能力が欲しかった。
戦術眼とか、作戦立案能力とかなんかよりずっと人生の役に立ちそうじゃないか。
「さてみんな、どの扉に入る?」
『宝物庫!』
間髪入れず、四人の声がハモる。
ですよねー。
ハモらなかった一人はのへーっと突っ立ってるだけなので、とくに問題はない。
どうせ意見を求めたったって、ネルネルにまかせるぅ、とかしか言わないし。
ともあれ、ここで宝物庫を選ぶのは、冒険者の宿命みたいなもんだ。
「オレに任せるス」
そう言って両手をわきわきさせながら前に出たメグが、服の隠しから七つ道具を取り出して床に並べる。
そして、慎重に扉を調べだした。
まるで巫女の祈祷にように、厳粛に。
「ふふふ。ここスか? ここが良いんスか?」
もとい、なんか変態チックだった。
そう思って見ると、手つきまでいやらしく見えてくる。
かちりという音。
メグがにやっと笑う。
「あんたの心の鍵、オレが外させてもらったスよ」
うるせえわ。
うるせえわ。
なんでそんな小芝居が必要なんだよ。
ゆっくりと扉が開かれていく。
「ふおおおおおおっ!」
アスカが奇声を発した。
気持ちはよく判るぞ。
まさに金銀財宝ざっくざくである。たぶん捨て値でさばいたって、俺たち六人が十年は遊んで暮らせそうだ。
大当たりを引いたな。
「マジックアイテムはなさそうですね。残念です」
やや落胆したようなミリアリアだけど、なんだか感慨深いよね。
冒険者ギルドへの協賛金が払えなくて、俺やジェニファにすがりついていたんだよ。この娘たちは。
今じゃ、すくなくとも生活の心配はまったくなくなったからね。
「金銭を侮ってはいけないぞ。ミリアリア。世の不幸をいくらが減らすことができるんだからな」
俺たちが使い切れないなら、孤児院や教会に寄付したって良い。
そうやって世の中に還元することで救われる人だっているんだ。
「はい。母さん。軽率でした」
神妙にミリアリアが頭を垂れる。
うんうん。良い娘だね。
「そうですわミリアリア。マジックアイテムなんか食べられませんけれど、この財宝で美味しいものがいっぱい食べられますわ」
そしてメイシャは、出会った頃からまったくブレないのであった。
ラクリス迷宮。
誰が、いつ、なんのために造ったのか、なにひとつあきらかになっていない。
そういうダンジョンは、世界中にけっこうたくさんある。
遺跡とは、ちょっと似て非なる存在だ。
「ダンジョンアタックは、やっぱり冒険者の醍醐味だよね! ネル母ちゃん!」
前衛の位置を歩くアスカがはしゃいでいる。
意見には同意するけど油断しすぎだ。
「アスカ」
「判ってるよ! 前方の警戒を厳に、だよね!」
注意しようとしたら、先回りしていわれちゃったよ。
最前列はアスカとサリエリ、ややさがった位置に俺。その後ろにミリアリアとメイシャといういつもの布陣だ。
灯りは俺がランタンを持ち、サリエリが頭の上に、ミリアリアが杖の先に、それぞれ魔法の灯りをともしている。
そしてメグが隠形して先行偵察中だ。
まず安定したフォーメーションだから、アスカが油断しちゃうのも無理はない。
無理はないんだけど、油断したらダメでしょ。
俺は片手が塞がっている。サリエリも光源を担当しているのだから、即応要員はアスカなのだ。
モンスターの襲撃は、まずその身をもって受け止め、斬り伏せないといけないんだよ?
「まあまあ、ネル母さん。アスカの気持ちも判りますよ。久しぶりのダンジョンですからね」
ため息をついた俺を、ミリアリアが慰めてくれた。
前は、十階層に陣取ったキマイラを退治しにきたのである。今回はモンスター退治が目的ではなくダンジョン攻略。
四十四階層で足踏みしている『固ゆで野郎』を手助けして、五十階層まで進んでしまおうって作戦だ。
もちろん簡単な話じゃないよ。
たいていどこのダンジョンでもそうなんだけど、奥へ進めば進むほどモンスターは強力になっていくし、扉や宝箱に仕掛けられた罠も凶悪になっていく。
しかしそれをクリアして進むことこそが冒険者の本懐だし、醍醐味でもあるのだ。
「ネルダンさん。ネルダンさん。隠し部屋っぽいモノがある気がするス」
音もなく戻ってきたメグが謎の報告する。
「っぽいモノ?」
「そうス。構造的に部屋があるはずなんスよ」
「どういうことだ? メグは建造物の構造が判るのか?」
「オレにそんなもん判るわけがないスよ。でも」
言い置いて、メグは懐の隠しから野帳を取り出した。
活動中に気づいたことをなんでも書き留めておくんだよ、と、俺が買い与えたものである。
そこには細かい文字がびっしりと書き込まれていた。
まだ読み書きができるようになったばかりの彼女の字だから、けっして美しいとはいえないが。
「これが、いまいる四十階層の略図ス」
皆の視線が野帳に集中する。
ミリアリアの魔力探知で、ようやく隠し部屋の入口がわかった。
より正確には、入口を開けるための装置のありかがわかったというべきだろう。
しかし、場所さえ判明してしまえば、そこからはメグの独壇場である。
細かい道具をいくつも使い、彼女は入口を開く。
部屋というより、ホールのような場所だった。
正面には扉が三つ。
「昇降機、モンスター配備センター、宝物庫って書いてるの~ そのプレートは~」
のへーっとサリエリが読み取ってくれる。
ていうかこの人、はるか東方の言葉だろうと、神代の文字だろう、すらっすら読めちゃうのな。
特殊部隊として教育を受けているんだと思ったら、どうやら勇者の天賦が持っている能力に由来しているらしい。
どこの国の言葉でもわりと簡単に読み書きできてしまうという、言語理解って能力だそうだ。
いいなぁ。
俺もそういう能力が欲しかった。
戦術眼とか、作戦立案能力とかなんかよりずっと人生の役に立ちそうじゃないか。
「さてみんな、どの扉に入る?」
『宝物庫!』
間髪入れず、四人の声がハモる。
ですよねー。
ハモらなかった一人はのへーっと突っ立ってるだけなので、とくに問題はない。
どうせ意見を求めたったって、ネルネルにまかせるぅ、とかしか言わないし。
ともあれ、ここで宝物庫を選ぶのは、冒険者の宿命みたいなもんだ。
「オレに任せるス」
そう言って両手をわきわきさせながら前に出たメグが、服の隠しから七つ道具を取り出して床に並べる。
そして、慎重に扉を調べだした。
まるで巫女の祈祷にように、厳粛に。
「ふふふ。ここスか? ここが良いんスか?」
もとい、なんか変態チックだった。
そう思って見ると、手つきまでいやらしく見えてくる。
かちりという音。
メグがにやっと笑う。
「あんたの心の鍵、オレが外させてもらったスよ」
うるせえわ。
うるせえわ。
なんでそんな小芝居が必要なんだよ。
ゆっくりと扉が開かれていく。
「ふおおおおおおっ!」
アスカが奇声を発した。
気持ちはよく判るぞ。
まさに金銀財宝ざっくざくである。たぶん捨て値でさばいたって、俺たち六人が十年は遊んで暮らせそうだ。
大当たりを引いたな。
「マジックアイテムはなさそうですね。残念です」
やや落胆したようなミリアリアだけど、なんだか感慨深いよね。
冒険者ギルドへの協賛金が払えなくて、俺やジェニファにすがりついていたんだよ。この娘たちは。
今じゃ、すくなくとも生活の心配はまったくなくなったからね。
「金銭を侮ってはいけないぞ。ミリアリア。世の不幸をいくらが減らすことができるんだからな」
俺たちが使い切れないなら、孤児院や教会に寄付したって良い。
そうやって世の中に還元することで救われる人だっているんだ。
「はい。母さん。軽率でした」
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