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二度追放された冒険者、激レアスキル駆使して美少女軍団を育成中!

南野雪花

第78話 新しい仕事

「国王陛下に口利きしてくれたんですね。ありがとうございます」

 一日いちじつ、冒険者ギルドを訪れた俺にジェニファが頭を下げた。

 なんのことか判らずに問い返すと、ギルドの頭越しに冒険者たちに仕事を与えるのを、ガイリア王国政府があらためてくれたそうである。
 俺たち『希望』に対してだけじゃなかったんだな。あの王様め。

 リントライト王国との戦争で、義勇兵として冒険者や傭兵がたくさん参加したからね。ロスカンドロス王としてはたっぷりとコネクションができたわけだ。
 しかもあの戦いって、主従じゃなくてみんな同志だよってスタンスだったから、かなり気安い関係を構築したんじゃないかな。

 で、冒険者にしても傭兵にしても信義に厚いから、友人の頼みだと思えば多少の無理をしても引き受けてしまう。
 ロスカンドロス王の思惑通りにね。
 ほんっと、食えないロートルだよ。あの御仁は。

「俺が注意しなくても、たぶんイレギュラーな方法をやめるタイミングを狙っていたんだぜ。きっと」
「つまりライオネルさんが注意したことを奇貨として、ギルドの顔を立てるカタチでやり方をあらためたってことですよね。うちの上層部も気づいて、苦虫を噛み潰してましたよ。まとめて十匹くらい」

 ジェニファが肩をすくめた。
 判っていても、王の賢断に感謝して見せないといけないのがギルドの立場である。
 そりゃ面白くはないだろうさ。

 でも面白くないで終わるようなタマじゃないよな。冒険者ギルドは。

「よく判っていらっしゃる。新ミルト市建設に関して、かなり食い込んだっぽいです」
「やっぱりな」

 俺の感想に、ジェニファがにやりと笑ってみせた。
 人口二千もいないような宿場町のミルトを、四十万以上の人が住む大都市にしようって大プロジェクトである。
 巨万の富が動く。

 これに食い込むってことは、ギルドにも莫大な利益が転がり込むだろう。
 だって、文字通りの意味で仕事はいくらでもあるんだもん。

 まず、ミルトまでの街道の整備だよね。
 道幅を広くして、歩きやすくして、馬車がすれ違えるようにする。
 これに携わる作業員の確保は、ガラングランからの難民たちに絶好の仕事を与えることになるが、彼らは住居がないため天幕で暮らすことになるのだ。

 当然、夜にはモンスターの襲撃が怖い。
 すると、それを護衛する冒険者を王国政府が雇わなくてはならない。
 ギルドとしてはウッハウハだね。

 で、新ミルト市の街壁建造とか、市内の建物を作ったりとか、ピランまでの街道整備とか、マスル王国との国境関所を改めて建造したりとか。
 ぱっと思いつくだけでもこのくらいあるのだ。

「むしろ深刻な人手不足が起きそうですよね」
「ギルドも、新ミルトに支部を出すんだろ?」

「そうですそうです。その人選でも大わらわですし、現地を視察したいって話も出てます。受けてくれます?」
「なるほど。そう繋がるのか。もちろんかまわないよ」

 俺は笑って見せた。
 なにしろ『希望』は、この街道を一度通ってるしね。





 新ミルトに支部を出すのは、冒険者ギルドだけではない。
 至高神教会も、魔術協会アカデミーも、数々の公共機関や飲食店なんかも、支店や支部を設けることになる。
 四十万都市だからね。

「でも、本当にそこまでの規模になるんでしょうか?」

 旅装を整えながらミリアリアが訊ねた。

 ギルドの視察担当と、便乗を申し出た至高神教会の担当者、それから魔術協会の担当者の護衛兼案内というのが、今回の『希望』の仕事である。
 なかなかすごい話ではあるが、指名依頼がトリプルブッキングしてしまったらしい。
 ギルドからのもの、至高神教会からのもの、魔術協会からのもの、と。

『希望』も有名になったもんだよね。
 大手三つから同時に同じ依頼がくるなんて。

 で、バラバラに護衛するのは不可能だから、三者をまとめて連れていくって話だな。
 どれか一つだけ受ける、ってこともできないからね。

「それは蓋を開けてみないと判らないな。魔族の国の国境近くになんて住みたくないよ! って人は一定数いるとは思うけど」

 けど、四十万以上の難民は、現状、住むところもなく仕事もないわけだから、この話に飛びつかないとも思えない。
 飛びつかない人は、とっとと他の新国家に流れていくだろう。

「仮に、人口が十から二十万くらいの規模になるとしても、大都市であることには変わりがないからな。しかも、今後発展していくことが約束されたみたいなもんだし」

 マスル王国とピラン城を取引相手とした貿易の拠点都市である。
 下手をしたら、ガイリアの街より栄えるかもしれない。

「そういう未来がきたらいいねぇ」

 と、サリエリがのへーっと笑う。
 こうみえて彼女は、ガイリアとマスルの友好の架け橋的な存在なのだ。
 マスルの人々が、こんなにのへーっとした連中だと思われちゃったら、それはそれで問題な気もするけどね。

「そうだな。いくさ働きより、俺はこういう仕事の方が好きだし」

 護衛に案内。
 じつに冒険者らしいじゃないか。
 切った張ったの仕事よりずっと良いよ。

「軍師のくせにねぇ」
「俺は平和的な軍師なんだよ」
「オカンだからねぇ」

 きゃいきゃいと騒ぎながら、旅の準備が進んでいく。

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