二度追放された冒険者、激レアスキル駆使して美少女軍団を育成中!
閑話 怪盗! 五人娘!
「これはぁ、なにかあったぽいねぃ」
寝惚けたような声と顔でサリエルがそう言ったのは、陽が傾こうかという頃合いだった。
びくりとミリアリアが身を震わせる。
交渉が不調に終わる可能性に関して、ライオネルから示唆されていたから。
「ネル母さんは夜になっても戻らなかったら王都を脱出しろって……」
「ネルネルらしいバッファの取り方だよぉ。夜まで待っていたらぁ、逃げる一択になるからねぃ」
ライオネルとカイトスは昼になるよりもずっと早く出かけているのだ。
そんなに難しい交渉ではない。
イエスかノーかしかないのだから。
どんなに時間を長く取ったとしても昼には結果が出ているだろう。
そしてものがものだけに、彼らは饗応などは断って帰ってくる。
夕方が近づいてきた今になっても戻ってないということは、不測の事態が起こっているのだ。
このまま時間が経過すれば、カイトス邸だって王国軍に包囲されるだろう。
夜になったら軍が動き出す。
そうなったら、囲まれる前に逃げるという選択しかとれなくなってしまう。
「今の時点でどうするかって策を与えていたらぁ、みんなは助けるって選択肢をぉ、選んじゃうでしょ~」
にまぁ、と、しまりのない笑顔を浮かべるサリエリ。
「乗った!」
一も二もなくアスカが飛びつく。
「この時点なら可能だから、それを選ばせないために、わざと選択肢を隠しておいたってことですか。ネル母さんは」
ミリアリアは悔しそうだ。
いつだって子供扱いするライオネルに怒っているのか、彼の配慮に気づけなかった自分に腹を立てているのか、おそらく彼女自身にも判っていないだろう。
「みんなが危険なことをするのを嫌がるからねぃ。あのオカンはぁ」
「それを余計な気の回しすぎというのですわ」
「まったくスね」
メイシャとメグが頷き合う。
「助けましょう。あのバカ母を」
決然とミリアリアが言い、その頭脳に救出作戦を描きだす。
カイトス直参の精鋭たちには王都脱出の準備を進めておいてもらう。
王宮から救い出すということは、お尋ね者になるのと同義だから、カイトス将軍もその部下たちも、王国に身の置きどころがなくなるのだ。
全員で脱出するしかない。
もちろん将軍の家族も。
残していったら投獄や処刑の未来が待っているだけだから。
「ではキリルさま。後を頼みます」
「任せておけ」
将軍の腹心たる騎士キリルに後事を託し、ミリアリアたちは行動を開始する。
「といってもぉ、複雑なことはなんにもないけどぉ」
のへーっとそう言ったサリエリが精霊魔法をつかえば、なんと五人の姿が消えてしまった。
リントライト王国では、まだ開発されていない魔法である。
「不可視の魔法だよぉ。これを使えば犯罪し放題~」
そして怖いことまで言っている。
マスル国内でも厳しく使用を制限されている魔法らしい。
火消しの一人である彼女には使用権限があるが、他国で使ってるんだからどんな言い訳もできないだろう。
「いまさらですね。これから脱獄幇助をやらかすんですから」
姿を隠した五人は衛兵の目をまったく気にすることもなく、するすると王城に侵入して、カイトスとライオネルが囚われているであろう地下牢を目指す。
このあたりの情報は、騎士キリルが提供してくれた。
二人が囚われてから一刻半(三時間)ほどだから、まだ拷問だのはおこなわれていないだろう。
歩哨の衛兵をすりぬけ、鍵のかかっている扉はメグがあっさりと解錠し、ついでに飲み物にしびれ薬を放り込みながら、あっという間に目的地に到着してしまった。
盛り上がりもなにもなく。
看守まで眠らせてから姿を現し、鉄格子を開いたとき、むしろライオネルは頭を抱えたほどである。
「そりゃね……マスルの火消しと腕利き盗賊が組んで潜入だもん……非常警戒もしてないような衛兵なんて木偶人形と一緒だろうよ……」
などと言いながら。
「やれやれ。汝らには助けられてばかりだな」
カイトス将軍の方は、ずっと素直に感謝を述べて、サリエリ、メグ、ミリアリア、アスカ、メイシャの頭を順番に撫でる。
こういう飾らない為人が、彼を将軍の地位にまで押し上げたのかもしれない、と、ミリアリアは思った。
「キリルさまが脱出の準備を整えています。急ぎ屋敷に戻りましょう」
しかし、口にしたのは別のことである。
いまは時間が勝負だから。
ふたたびインビジブルの魔法で姿を消し、帰りは七人になった侵入者が王城を去る。
跡も濁さず、というわけにはいかない。
兵舎の井戸に下剤を投げ込んだりとか、馬の飼い葉に眠り薬を混ぜたりとか、散々悪戯をしてからだ。
追跡の足を鈍らせる手は、打っておくにこしたことはないから。
こうして、時ならぬ腹痛騒ぎで城が騒然としているうちに、カイトス家の夜逃げも完了してしまう。
ようやく王城が落ち着きを取り戻したのは翌日の夕刻のことだった。
カイトスとライオネルの脱獄の報告が国王モリスンの耳に入ったのも、それに前後する。
ほぼ致命的といって良いほどの遅れだ。
あまりの事態に腹を立てた国王は、持っていた王錫で報告を持ってきただけの侍従を散々に打ち据えたのである。
これが結果として、彼の元に悪い報告が上がりにくくなっていく原因となった。
寝惚けたような声と顔でサリエルがそう言ったのは、陽が傾こうかという頃合いだった。
びくりとミリアリアが身を震わせる。
交渉が不調に終わる可能性に関して、ライオネルから示唆されていたから。
「ネル母さんは夜になっても戻らなかったら王都を脱出しろって……」
「ネルネルらしいバッファの取り方だよぉ。夜まで待っていたらぁ、逃げる一択になるからねぃ」
ライオネルとカイトスは昼になるよりもずっと早く出かけているのだ。
そんなに難しい交渉ではない。
イエスかノーかしかないのだから。
どんなに時間を長く取ったとしても昼には結果が出ているだろう。
そしてものがものだけに、彼らは饗応などは断って帰ってくる。
夕方が近づいてきた今になっても戻ってないということは、不測の事態が起こっているのだ。
このまま時間が経過すれば、カイトス邸だって王国軍に包囲されるだろう。
夜になったら軍が動き出す。
そうなったら、囲まれる前に逃げるという選択しかとれなくなってしまう。
「今の時点でどうするかって策を与えていたらぁ、みんなは助けるって選択肢をぉ、選んじゃうでしょ~」
にまぁ、と、しまりのない笑顔を浮かべるサリエリ。
「乗った!」
一も二もなくアスカが飛びつく。
「この時点なら可能だから、それを選ばせないために、わざと選択肢を隠しておいたってことですか。ネル母さんは」
ミリアリアは悔しそうだ。
いつだって子供扱いするライオネルに怒っているのか、彼の配慮に気づけなかった自分に腹を立てているのか、おそらく彼女自身にも判っていないだろう。
「みんなが危険なことをするのを嫌がるからねぃ。あのオカンはぁ」
「それを余計な気の回しすぎというのですわ」
「まったくスね」
メイシャとメグが頷き合う。
「助けましょう。あのバカ母を」
決然とミリアリアが言い、その頭脳に救出作戦を描きだす。
カイトス直参の精鋭たちには王都脱出の準備を進めておいてもらう。
王宮から救い出すということは、お尋ね者になるのと同義だから、カイトス将軍もその部下たちも、王国に身の置きどころがなくなるのだ。
全員で脱出するしかない。
もちろん将軍の家族も。
残していったら投獄や処刑の未来が待っているだけだから。
「ではキリルさま。後を頼みます」
「任せておけ」
将軍の腹心たる騎士キリルに後事を託し、ミリアリアたちは行動を開始する。
「といってもぉ、複雑なことはなんにもないけどぉ」
のへーっとそう言ったサリエリが精霊魔法をつかえば、なんと五人の姿が消えてしまった。
リントライト王国では、まだ開発されていない魔法である。
「不可視の魔法だよぉ。これを使えば犯罪し放題~」
そして怖いことまで言っている。
マスル国内でも厳しく使用を制限されている魔法らしい。
火消しの一人である彼女には使用権限があるが、他国で使ってるんだからどんな言い訳もできないだろう。
「いまさらですね。これから脱獄幇助をやらかすんですから」
姿を隠した五人は衛兵の目をまったく気にすることもなく、するすると王城に侵入して、カイトスとライオネルが囚われているであろう地下牢を目指す。
このあたりの情報は、騎士キリルが提供してくれた。
二人が囚われてから一刻半(三時間)ほどだから、まだ拷問だのはおこなわれていないだろう。
歩哨の衛兵をすりぬけ、鍵のかかっている扉はメグがあっさりと解錠し、ついでに飲み物にしびれ薬を放り込みながら、あっという間に目的地に到着してしまった。
盛り上がりもなにもなく。
看守まで眠らせてから姿を現し、鉄格子を開いたとき、むしろライオネルは頭を抱えたほどである。
「そりゃね……マスルの火消しと腕利き盗賊が組んで潜入だもん……非常警戒もしてないような衛兵なんて木偶人形と一緒だろうよ……」
などと言いながら。
「やれやれ。汝らには助けられてばかりだな」
カイトス将軍の方は、ずっと素直に感謝を述べて、サリエリ、メグ、ミリアリア、アスカ、メイシャの頭を順番に撫でる。
こういう飾らない為人が、彼を将軍の地位にまで押し上げたのかもしれない、と、ミリアリアは思った。
「キリルさまが脱出の準備を整えています。急ぎ屋敷に戻りましょう」
しかし、口にしたのは別のことである。
いまは時間が勝負だから。
ふたたびインビジブルの魔法で姿を消し、帰りは七人になった侵入者が王城を去る。
跡も濁さず、というわけにはいかない。
兵舎の井戸に下剤を投げ込んだりとか、馬の飼い葉に眠り薬を混ぜたりとか、散々悪戯をしてからだ。
追跡の足を鈍らせる手は、打っておくにこしたことはないから。
こうして、時ならぬ腹痛騒ぎで城が騒然としているうちに、カイトス家の夜逃げも完了してしまう。
ようやく王城が落ち着きを取り戻したのは翌日の夕刻のことだった。
カイトスとライオネルの脱獄の報告が国王モリスンの耳に入ったのも、それに前後する。
ほぼ致命的といって良いほどの遅れだ。
あまりの事態に腹を立てた国王は、持っていた王錫で報告を持ってきただけの侍従を散々に打ち据えたのである。
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