二度追放された冒険者、激レアスキル駆使して美少女軍団を育成中!
第53話 ガラングランへひとっ飛び
眼下に雲を見下ろしながら船が進む。
ちょっとなに言ってるか判らないかもしれないけど、俺たちは今、船に乗って空を飛んでいるのだ。
マスル王国のもつ魔導技術の粋を集めて建造された、魔晶船というらしい。
歩いて一ヶ月以上はかかるマスル王国の王都リーサンサンから、リントライト王国の王都ガラングランまでを、わずか一昼夜で飛んでしまうのだ。
やばいよ。
戦の常識が変わっちゃうよ。
魔王イングラルは、この技術を戦争に使う気はないっていってたけど、そんなの保証の限りじゃない。
追いつめられたら使うだろうし、彼が使わなかったとしても、この技術が流出してしまったら、他国によって使われるだろう。
そうなったら、戦で死ぬ人間の数はうなぎ登りだ。
俺たちみたいな孤児だって大量生産されてしまう。
「こうして戦争は、愚行から、とんでもない愚行へとランクアップしましたとさ」
「めでたしめでたし、とはいきませんね。技術の流出を防ぐ方法はなんでしょうか」
悪意の抑揚を込めた俺の言葉に、ミリアリアが生真面目な顔で首をかしげる。
王都を飛び立って一刻(二時間)ほど。
船長の話では、そろそろリントライト王国へと侵入するそうだ。
「戦わないことさ。もっといえば、関わらないことが一番なんだが、国境を接してるし密貿易だって盛んだし、もう充分に関わってしまってるからな」
戦争が起これば、戦術能力や技術力が知られてしまう。
お互いに。
もちろん戦場で兵器の博覧会を開催するわけではないが、使われた武器の種類や運用法などから、けっこうな情報が掴まれてしまうものなのだ。
たった一冊の古文書から、考古学者がその時代に起こった出来事を読み取っていくように、俺たちみたいな軍師や、参謀なんて呼ばれる連中は、ちょっとしたデータからいろんなことを推測できる。
「つまり私たちは、戦争を止めるために飛んでるってことですよね? そこが今ひとつ判らないです。どうしてカイトス将軍に親書を届けることが戦争回避に繋がるんですか?」
「それは、将軍が王様に直奏できる立場の人だからさ」
に、と、俺は笑ってみせた。
カイトス将軍の口から、魔王がリントライト王国との和平を望んでいることが国王に告げられれば、さすがに無視はできない。
建国以来、慢性的な戦争状態にあるマスル王国との和平が成れば、現国王モリスンの声望だって高まる。
勝つか負けるか判らない戦争をするより、和平成立っていう実績をどーんと打ち立てた方が、不平貴族を黙らせる効果が期待できるだろう。
そもそも、カイトス将軍が魔王イングラルと出会ったのは、三十年ほど前だという。
定期的というか、趣味でやってんのかよっていうレベルの小競り合いのときだ。
そこで矛を交えた二人は、なにか通じ合うものがあったのだろう。
敵味方ながら、未来を語り合うことができた。
そして、定期的に連絡を取り合うようになったのだという。
たぶんあれだ。足を引っ張ってばっかりの味方より、正面に堂々と立ち塞がる強敵のほうに好感を持つってやつだよ。
魔王イングラルは詳しく語らなかったけどね。
それにしても、俺はつくづく英雄の天賦を持つ人間に縁があるよな。
四人だもの。
そこまでありふれた天賦ってわけじゃないのに。
天賦の通り大事を成したのが、魔王イングラルやカイトス将軍。途中で歪んでしまったのがルーク。そして、まだまだこれからって感じで発展途上なのがアスカだ。
彼女はどういう英雄に成長していくんだろう。
願わくば、みんなから愛される英雄になってほしいよね。
俺は感慨深く目を細める。
「ネルママ。ネルママ。慈愛に見た目でアスカを見つめる老父みたいなネルママ」
つんつんとメイシャにつつかれた。
とても不本意な形容詞までつけられて。
ていうかお前さん、さっき「船内を探検ですわ」とかいって、メグを引き連れてキャビンを出て行ったばっかりじゃないか。
もう戻ってきたのか。
「とても面白い情報をキャッチしたのですわ!」
目をきらっきらさせている。
ああこれ、絶対にろくな情報じゃないね。
知っても知らなくても、まったくどうでもいいやつ。
お母さん知ってるわよ。
「お手洗いをお借りしたのですわ。ちょっと自然が呼んでしまって」
うん。そんな報告はいらないよ。
メイシャの下の事情なんか教えられてどうするんだよ。
「不思議に思ったのですわ。用を足した後はどうするのかと」
「なんでそんなことに興味を持ったのか……」
すごくどうでも良いよ。
むしろ、どうして空を飛べるのかとか、そういうことに興味を持とうよ。
なんで排泄物の処理なんかに興味を持つんだよ、
大事なことではあるけどさ。
都市計画でいうと要石になる部分だけどさ。
「それで船長さんにうかがったのですわ。そしたらネルママ、どんな答えが返ってきたとおもいます?」
妙に芝居がかってメイシャが声を潜める。
なにさ、なんか怖いことでもあるの?
手招きされるまま、口元に耳を寄せた。
「黄色い雨の降るときは気をつけなされ、ですって!」
「ぶはっ! 垂れ流しかよっ!」
思わず噴き出しちゃう。
最低だ。この船、最低だった。
二人して腹を抱えて笑い合う。
最新の魔導技術の粋を集めて建造されたリアクターシップのトイレが、なんと垂れ流し!
げらげら笑い転げてる俺とメイシャを、他の娘たちがなまあたたかい目で見つめていた。
ちょっとなに言ってるか判らないかもしれないけど、俺たちは今、船に乗って空を飛んでいるのだ。
マスル王国のもつ魔導技術の粋を集めて建造された、魔晶船というらしい。
歩いて一ヶ月以上はかかるマスル王国の王都リーサンサンから、リントライト王国の王都ガラングランまでを、わずか一昼夜で飛んでしまうのだ。
やばいよ。
戦の常識が変わっちゃうよ。
魔王イングラルは、この技術を戦争に使う気はないっていってたけど、そんなの保証の限りじゃない。
追いつめられたら使うだろうし、彼が使わなかったとしても、この技術が流出してしまったら、他国によって使われるだろう。
そうなったら、戦で死ぬ人間の数はうなぎ登りだ。
俺たちみたいな孤児だって大量生産されてしまう。
「こうして戦争は、愚行から、とんでもない愚行へとランクアップしましたとさ」
「めでたしめでたし、とはいきませんね。技術の流出を防ぐ方法はなんでしょうか」
悪意の抑揚を込めた俺の言葉に、ミリアリアが生真面目な顔で首をかしげる。
王都を飛び立って一刻(二時間)ほど。
船長の話では、そろそろリントライト王国へと侵入するそうだ。
「戦わないことさ。もっといえば、関わらないことが一番なんだが、国境を接してるし密貿易だって盛んだし、もう充分に関わってしまってるからな」
戦争が起これば、戦術能力や技術力が知られてしまう。
お互いに。
もちろん戦場で兵器の博覧会を開催するわけではないが、使われた武器の種類や運用法などから、けっこうな情報が掴まれてしまうものなのだ。
たった一冊の古文書から、考古学者がその時代に起こった出来事を読み取っていくように、俺たちみたいな軍師や、参謀なんて呼ばれる連中は、ちょっとしたデータからいろんなことを推測できる。
「つまり私たちは、戦争を止めるために飛んでるってことですよね? そこが今ひとつ判らないです。どうしてカイトス将軍に親書を届けることが戦争回避に繋がるんですか?」
「それは、将軍が王様に直奏できる立場の人だからさ」
に、と、俺は笑ってみせた。
カイトス将軍の口から、魔王がリントライト王国との和平を望んでいることが国王に告げられれば、さすがに無視はできない。
建国以来、慢性的な戦争状態にあるマスル王国との和平が成れば、現国王モリスンの声望だって高まる。
勝つか負けるか判らない戦争をするより、和平成立っていう実績をどーんと打ち立てた方が、不平貴族を黙らせる効果が期待できるだろう。
そもそも、カイトス将軍が魔王イングラルと出会ったのは、三十年ほど前だという。
定期的というか、趣味でやってんのかよっていうレベルの小競り合いのときだ。
そこで矛を交えた二人は、なにか通じ合うものがあったのだろう。
敵味方ながら、未来を語り合うことができた。
そして、定期的に連絡を取り合うようになったのだという。
たぶんあれだ。足を引っ張ってばっかりの味方より、正面に堂々と立ち塞がる強敵のほうに好感を持つってやつだよ。
魔王イングラルは詳しく語らなかったけどね。
それにしても、俺はつくづく英雄の天賦を持つ人間に縁があるよな。
四人だもの。
そこまでありふれた天賦ってわけじゃないのに。
天賦の通り大事を成したのが、魔王イングラルやカイトス将軍。途中で歪んでしまったのがルーク。そして、まだまだこれからって感じで発展途上なのがアスカだ。
彼女はどういう英雄に成長していくんだろう。
願わくば、みんなから愛される英雄になってほしいよね。
俺は感慨深く目を細める。
「ネルママ。ネルママ。慈愛に見た目でアスカを見つめる老父みたいなネルママ」
つんつんとメイシャにつつかれた。
とても不本意な形容詞までつけられて。
ていうかお前さん、さっき「船内を探検ですわ」とかいって、メグを引き連れてキャビンを出て行ったばっかりじゃないか。
もう戻ってきたのか。
「とても面白い情報をキャッチしたのですわ!」
目をきらっきらさせている。
ああこれ、絶対にろくな情報じゃないね。
知っても知らなくても、まったくどうでもいいやつ。
お母さん知ってるわよ。
「お手洗いをお借りしたのですわ。ちょっと自然が呼んでしまって」
うん。そんな報告はいらないよ。
メイシャの下の事情なんか教えられてどうするんだよ。
「不思議に思ったのですわ。用を足した後はどうするのかと」
「なんでそんなことに興味を持ったのか……」
すごくどうでも良いよ。
むしろ、どうして空を飛べるのかとか、そういうことに興味を持とうよ。
なんで排泄物の処理なんかに興味を持つんだよ、
大事なことではあるけどさ。
都市計画でいうと要石になる部分だけどさ。
「それで船長さんにうかがったのですわ。そしたらネルママ、どんな答えが返ってきたとおもいます?」
妙に芝居がかってメイシャが声を潜める。
なにさ、なんか怖いことでもあるの?
手招きされるまま、口元に耳を寄せた。
「黄色い雨の降るときは気をつけなされ、ですって!」
「ぶはっ! 垂れ流しかよっ!」
思わず噴き出しちゃう。
最低だ。この船、最低だった。
二人して腹を抱えて笑い合う。
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