二度追放された冒険者、激レアスキル駆使して美少女軍団を育成中!
第46話 なにしてるの? きみたち
ダークエルフの女はサリエリと名乗った。
数え十八(満十七)歳で、マスル王国の特殊部隊である『火消し』の一員なんだそうである。
ていうか、訊かれてもいないことまでぺらっぺら喋るのは、特殊部隊みたいな組織にいる人としてどうなんだろう。
まあ、俺たちに隠しても仕方がないし、ここで嘘をついてバレたときのデメリットを考えたら、できるだけフレンドリーに接した方が良いのはたしかだ。
ギューネイがマスル王国からきた魔族で、しかも王宮の宝物を勝手に持ち出したんだとすると、そのまま引き渡してさようならってわけにはいかないからね。
論功行賞みたいなものだってあるから。
つまり、これからちゃんと身分を明かすことになるわけさ。
「すごく間抜けそうに振る舞って、警戒心を持たせないってやり方だな」
「初見でそれ見破った人は十人もいないですぅ。あなたすごい人間さんですねぇ」
ロープで両手両足を長い棒に縛り付けられ、なんだか狩りの獲物みたいな格好で運ばれるギューネイを見ながらの会話だ。
嫌がらせではなくて、しびれ薬で動けなくなってるからである。
可哀想に、とはさすがに思わないけど。
「このダンナは、オレがスリだって一目で見抜いたスからね」
ふふんと胸を反らすのは、毒針でぷすっとギューネイを刺した張本人であるメグだ。
なぜにきみが威張るのかね。
あと、スリだとか泥棒だとかむやみに言わない。
白眼視してくるやつもいるんだからね。仲間がそういう目で見られたら、お母さん悲しいわよ。
「間延びした口調にぼけーっと眠そうな顔。その印象どおりの人物が国の大事に関われるわけないだろ。そしたらそれは作ってるだけって簡単に想像がつくし、なんで作るのかってことに考えが及ぶだろ」
軽くメグの頭を小突いてから解説する。
これもまた、隠したって仕方がないことだからね。
「おもしろいですぅ」
にっこりとサリエリが笑った。
なかなかに魅力的な笑顔である。
褐色の肌と白い髪もあいまって、すごく色っぽい。
こんな女性は人間の町にはいないからね。ついつい目がくぎ付けになってしまう。
「…………」
無言のまま、アスカが俺の前に立ちはだかった。
「…………」
無言のまま、メイシャが背中から俺を抱きしめた。
「…………」
無言のまま、ミリアリアが俺の左手を握った。
いや、なにしてるの?
きみたち。
とりあえずギューネイは地下牢に放り込んでおいた。
その上で、サリエリが俺やザックラントから事情を聞き取りする。
マスル王国政府に送る報告書に記載するためらしい。
そりゃまあ、適当なことを書いて送るわけにいかないよね。当たり前のことなのにザックラントが意外そうな顔をしてしまうのは、やっぱりサリエリの容姿に起因する。
真面目に仕事をするような娘に見えないのだ。
半分寝ながら適当な報告書を書いて、いつも上司から怒鳴られているような。そんないい加減でちゃらんぽらんな仕事っぷりを想像してしまう。
もちろん、そう見えるようにサリエリが振る舞っているのである。
「のへーっとした顔で鋭い質問を投げかけてくる。食えない女だよ」
とは、ザックラントの感想だ。
「無能者を飼ってやるほどピースメイカーとやらは甘い組織じゃないでしょうし、そんな人物に単独での国外任務をやらせるほど、仕事を投げてもいないと思いますよ」
「ゆめゆめ油断は禁物ということだな。きみのことだって最初はただのハーレム野郎だと思ってたしな。私」
「不本意すぎますね」
俺は嫌な顔をした。
言うに事欠いてハーレムはないだろう。
子供ばっかりなんだから。
最年長のメグでも数え十七(満十六)歳。成人前なのである。
こんな娘たちに手を出したら、俺は鬼畜すぎるじゃないですか。
「ああ。ちょっと話したらハーレム王ではなくてお母さんだと判った」
「それはそれで不本意です」
せめてお父さんにして。
なんでみんな、お母さんって呼ぶのん?
「ママ軍師ですぅ」
そして余計なことを言うサリエリだった。
へんな称号をつけるなよ。
ともあれ、事情の聞き取り自体は難航したりしなかった。
こっちとしてもべつに隠すことなんかないしね。
むしろ苦労したのは、ピラン城のことをどう説明するかって部分である。
なにしろ五百年も昔に魔王たちとは袂を分かっているからね。
ピラン卿は代替わりしてるし、魔王だって二回も代替わりしてる。当時を知る人なんて、長命種の魔族やダークエルフ族だって少数派になっているだろう。
人間の国だったら、王朝の興亡が二回や三回くらいあっても不思議じゃないよね。
リントライト王国だって、五百年も前にはなかったわけだしね。
ともあれ、報告書の作成には丸二日を要したのである。
そして完成した報告書は、サリエリが召喚した鳥型の魔獣が国境の砦まで運ぶ。
「ふぉぉぉぉ! かちょいい! わたしもそういうの欲しい!」
ピラン城の遠望台にすっくと立ち、左腕に精悍な純白の鷹っぽい魔獣をとまらせたサリエリを見てアスカが奇声を発した。
まあ、たしかに絵にはなるよね。
後ろ姿なら顔は見えないし。
「砦までは二刻(四時間)くらいで飛べるけどぉ、そこからは早馬での輸送だからぁ。五日くらいかかるよぉ」
でも、喋るとやっぱりサリエリなのだ。
つーかさ。国境からマスル王国の王都まで早馬で五日って情報を、人間の俺たちがいる場でいっちゃダメでしょ。
計算なんだか迂闊なんだか、わからないやつだよなぁ。
数え十八(満十七)歳で、マスル王国の特殊部隊である『火消し』の一員なんだそうである。
ていうか、訊かれてもいないことまでぺらっぺら喋るのは、特殊部隊みたいな組織にいる人としてどうなんだろう。
まあ、俺たちに隠しても仕方がないし、ここで嘘をついてバレたときのデメリットを考えたら、できるだけフレンドリーに接した方が良いのはたしかだ。
ギューネイがマスル王国からきた魔族で、しかも王宮の宝物を勝手に持ち出したんだとすると、そのまま引き渡してさようならってわけにはいかないからね。
論功行賞みたいなものだってあるから。
つまり、これからちゃんと身分を明かすことになるわけさ。
「すごく間抜けそうに振る舞って、警戒心を持たせないってやり方だな」
「初見でそれ見破った人は十人もいないですぅ。あなたすごい人間さんですねぇ」
ロープで両手両足を長い棒に縛り付けられ、なんだか狩りの獲物みたいな格好で運ばれるギューネイを見ながらの会話だ。
嫌がらせではなくて、しびれ薬で動けなくなってるからである。
可哀想に、とはさすがに思わないけど。
「このダンナは、オレがスリだって一目で見抜いたスからね」
ふふんと胸を反らすのは、毒針でぷすっとギューネイを刺した張本人であるメグだ。
なぜにきみが威張るのかね。
あと、スリだとか泥棒だとかむやみに言わない。
白眼視してくるやつもいるんだからね。仲間がそういう目で見られたら、お母さん悲しいわよ。
「間延びした口調にぼけーっと眠そうな顔。その印象どおりの人物が国の大事に関われるわけないだろ。そしたらそれは作ってるだけって簡単に想像がつくし、なんで作るのかってことに考えが及ぶだろ」
軽くメグの頭を小突いてから解説する。
これもまた、隠したって仕方がないことだからね。
「おもしろいですぅ」
にっこりとサリエリが笑った。
なかなかに魅力的な笑顔である。
褐色の肌と白い髪もあいまって、すごく色っぽい。
こんな女性は人間の町にはいないからね。ついつい目がくぎ付けになってしまう。
「…………」
無言のまま、アスカが俺の前に立ちはだかった。
「…………」
無言のまま、メイシャが背中から俺を抱きしめた。
「…………」
無言のまま、ミリアリアが俺の左手を握った。
いや、なにしてるの?
きみたち。
とりあえずギューネイは地下牢に放り込んでおいた。
その上で、サリエリが俺やザックラントから事情を聞き取りする。
マスル王国政府に送る報告書に記載するためらしい。
そりゃまあ、適当なことを書いて送るわけにいかないよね。当たり前のことなのにザックラントが意外そうな顔をしてしまうのは、やっぱりサリエリの容姿に起因する。
真面目に仕事をするような娘に見えないのだ。
半分寝ながら適当な報告書を書いて、いつも上司から怒鳴られているような。そんないい加減でちゃらんぽらんな仕事っぷりを想像してしまう。
もちろん、そう見えるようにサリエリが振る舞っているのである。
「のへーっとした顔で鋭い質問を投げかけてくる。食えない女だよ」
とは、ザックラントの感想だ。
「無能者を飼ってやるほどピースメイカーとやらは甘い組織じゃないでしょうし、そんな人物に単独での国外任務をやらせるほど、仕事を投げてもいないと思いますよ」
「ゆめゆめ油断は禁物ということだな。きみのことだって最初はただのハーレム野郎だと思ってたしな。私」
「不本意すぎますね」
俺は嫌な顔をした。
言うに事欠いてハーレムはないだろう。
子供ばっかりなんだから。
最年長のメグでも数え十七(満十六)歳。成人前なのである。
こんな娘たちに手を出したら、俺は鬼畜すぎるじゃないですか。
「ああ。ちょっと話したらハーレム王ではなくてお母さんだと判った」
「それはそれで不本意です」
せめてお父さんにして。
なんでみんな、お母さんって呼ぶのん?
「ママ軍師ですぅ」
そして余計なことを言うサリエリだった。
へんな称号をつけるなよ。
ともあれ、事情の聞き取り自体は難航したりしなかった。
こっちとしてもべつに隠すことなんかないしね。
むしろ苦労したのは、ピラン城のことをどう説明するかって部分である。
なにしろ五百年も昔に魔王たちとは袂を分かっているからね。
ピラン卿は代替わりしてるし、魔王だって二回も代替わりしてる。当時を知る人なんて、長命種の魔族やダークエルフ族だって少数派になっているだろう。
人間の国だったら、王朝の興亡が二回や三回くらいあっても不思議じゃないよね。
リントライト王国だって、五百年も前にはなかったわけだしね。
ともあれ、報告書の作成には丸二日を要したのである。
そして完成した報告書は、サリエリが召喚した鳥型の魔獣が国境の砦まで運ぶ。
「ふぉぉぉぉ! かちょいい! わたしもそういうの欲しい!」
ピラン城の遠望台にすっくと立ち、左腕に精悍な純白の鷹っぽい魔獣をとまらせたサリエリを見てアスカが奇声を発した。
まあ、たしかに絵にはなるよね。
後ろ姿なら顔は見えないし。
「砦までは二刻(四時間)くらいで飛べるけどぉ、そこからは早馬での輸送だからぁ。五日くらいかかるよぉ」
でも、喋るとやっぱりサリエリなのだ。
つーかさ。国境からマスル王国の王都まで早馬で五日って情報を、人間の俺たちがいる場でいっちゃダメでしょ。
計算なんだか迂闊なんだか、わからないやつだよなぁ。
「ファンタジー」の人気作品
書籍化作品
-
-
89
-
-
124
-
-
1359
-
-
24251
-
-
2
-
-
267
-
-
516
-
-
11128
-
-
125
コメント