二度追放された冒険者、激レアスキル駆使して美少女軍団を育成中!
第34話 VSキマイラ(前編)
モンスターの死体からえぐり出したコアは百を超えた。
「ネルダンさん。迷宮ってこんなに魔物がでるんスか?」
ナイフをもてあそびながらメグが訊ねる。
泥棒から冒険者に転職したばかりの彼女は、迷宮に挑むのももちろん初めての経験だ。
「いや。この数はちょっと異常だな」
俺の言葉に三人娘が大きく頷く。
数が多くなっているだけでなく、なんか強くなっている気もするし。
奇襲奇襲で勝ってるから厳密な比較はできないんだけどな。
「こんなに魔石がとれるなら、街で泥棒するよりずっと効率が良いと思ったんスけどね。残念ス」
くすりとメグが笑う。赤い瞳を悪戯っぽく輝かせて。
まあ、百個のコアは金貨二百枚にはなるだろう。それは、節約しながら暮らせば一年くらいは生きられるお金だ。一人ならね。
それを半日にも満たない時間で集められるんだから、考えようによっては効率は良いだろうさ。
けど、命がけだよ? 取るのは。
モンスターを殺さないと手に入らないんだから。
命を賭け金にして得られる金額として妥当なのかどうかは、俺には判らないよ。
それに、一日潜って成果ゼロなんて日もあるからね。
コア狙いの冒険は、割が良いとはあんまりいえないと思うなあ。
「効率が良いのは戦争だって! メグ! 手柄を立てたらこんなのももらえちゃうんだよ!」
アスカが自慢げに魔法の剣を見せびらかす。
こいつ、隙あらば自慢しようとするよな。それ。
「これって魔法の品物スか? オレ実物見るのはじめてス」
「反乱軍をやっつけたとき、カイトス将軍からご褒美にもらったんだよ!」
「へぇぇぇ! オレも欲しいスねえ!」
すげえ簡単にもらった感じに言ってるけどさ、アスカさんや。
あの戦いで冒険者や傭兵は三十人以上死んでるからね?
五百人のうち三十人だよ?
そして特別報奨をもらえたのは俺たち四人だけだよ?
なにをどう見て効率が良いと思ったのか、お母さんさっぱりわからないわよ。
「ネル母さん。そろそろですか?」
「だな。俺の記憶だともうちょっとで大広間の扉が見えてくるはずなんだが」
「モンスターが増えたのはキマイラのせいなんでしょうか?」
「わからない。わからないが、そう考えると筋が通るよな」
夢を語りすぎて命が軽くなっちゃってるメグとアスカをよそに、ミリアリアが訊ねてくる。
とくに問題もなく、というかすごく順調に第十階層に到達した俺たちである。
二十階層くらいまでは『金糸蝶』時代に踏破しているので、構造も頭に入っているのだ。
キマイラみたいな強力な魔物が十階に住み着いたから、それより上にいるモンスターが勢いづいた。そう考えるのが最も蓋然性が高いと思う。
「けど、いまひとつ自分を納得させられないんだよな」
「じつは私もです。原因と結果が逆、なのかもしれません」
「逆?」
「赤ちゃんを乳母車に乗せて押しているお母さんですわ」
俺が首をかしげると、横からメイシャが口を挟んだ。
なに言ってんだこいつ。
と、思ったけど、考えてみたら確かにその通りですね。
お母さんがいないと赤ん坊は生まれないわけで、原因(親)より結果(子供)が前に来てますわ。
OK。
そんな下ネタっぽいトンチはいらん。
俺は拳でメイシャの頭を、ミリアリアは杖の先でメイシャの尻を、それぞれ小突いてオシオキしておく。
真面目な話をしてんだよ。こっちは。
「キマイラが出てきたからモンスターが強くなったんじゃなくて、強くなったモンスターの中にキマイラが含まれていただけ、か」
「はい」
神妙な顔でミリアリアが頷く。
大変に面白くない推論だ。
だが、なぜか腑に落ちてしまう。
だとしたら、その現象は、いったいなにを意味してるんだ?
戦いは、扉を開ける前から始まっていた。
「こっち見てるスね」
「気づかれてます」
メグとミリアリアが同時に口を開く。
気配探知に優れたスカウトと、魔力感知に長けたメイジの言葉である。
疑う余地はない。
俺たちの接近に、すでにキマイラは気づいており待ち構えているということだ。
扉を開いた瞬間に攻撃がくるだろう。
いままで挑んだ連中は、そうやって機先を制されてしまったのかもしれない。
準備が整ってない状態でのドラゴンブレスでは、たしかにたまったものではない。
しかし、くると判っているなら、対応法はいくらでもある。
俺は、短期的な作戦を四人娘に伝えた。
すこしだけ緊張した返事が返ってくる。
大丈夫。そのくらいの緊張感なら身体はちゃんと動くさ。
ぽんぽんと一人ずつ肩を叩き安心させる。
「いくぞ」
そして、大広間の扉を蹴り開け、同時に左右に跳び分かれる。
一瞬前まで俺たちがいた場所を、炎の舌が舐めていった。
「アスカ! 右から回り込め!」
「おけ!」
左へと駆けながらの指示に赤毛の少女が応える。
ごくわずかにキマイラが戸惑った。
俺とアスカ、どちらを追うか迷ったのである。
しかし、その迷いが命取りだ。
「氷の槍!」
最初にブレスが通過した場所に戻ったミリアリアが魔法を放つ。
彼女の使えるなかで、最も威力の大きなものだ。
人がいなくなったと思っていたポイントから攻撃がくるとは思っていなかったのだろう。
獅子の頭が氷の槍に貫かれて吹き飛ぶ。
狂ったような吠え声をあげて暴れるキマイラ。
竜の口に炎がたまる。
そこに、どこからか狙いすましたように飛んできた鶏卵がぶつかり、勢いよくはぜ割れた。
中に詰まっていた砂が飛び散る。
「ただの目くらましス。でも」
竜の首だけでなく山羊の首まで絶叫を放った。
焼けた砂が目に入ったのである。
「目に、かすり傷はないんスよ」
隠形を解いて、ミリアリアの左斜め前方に一瞬だけ出現したメグがにっと笑った。
「ネルダンさん。迷宮ってこんなに魔物がでるんスか?」
ナイフをもてあそびながらメグが訊ねる。
泥棒から冒険者に転職したばかりの彼女は、迷宮に挑むのももちろん初めての経験だ。
「いや。この数はちょっと異常だな」
俺の言葉に三人娘が大きく頷く。
数が多くなっているだけでなく、なんか強くなっている気もするし。
奇襲奇襲で勝ってるから厳密な比較はできないんだけどな。
「こんなに魔石がとれるなら、街で泥棒するよりずっと効率が良いと思ったんスけどね。残念ス」
くすりとメグが笑う。赤い瞳を悪戯っぽく輝かせて。
まあ、百個のコアは金貨二百枚にはなるだろう。それは、節約しながら暮らせば一年くらいは生きられるお金だ。一人ならね。
それを半日にも満たない時間で集められるんだから、考えようによっては効率は良いだろうさ。
けど、命がけだよ? 取るのは。
モンスターを殺さないと手に入らないんだから。
命を賭け金にして得られる金額として妥当なのかどうかは、俺には判らないよ。
それに、一日潜って成果ゼロなんて日もあるからね。
コア狙いの冒険は、割が良いとはあんまりいえないと思うなあ。
「効率が良いのは戦争だって! メグ! 手柄を立てたらこんなのももらえちゃうんだよ!」
アスカが自慢げに魔法の剣を見せびらかす。
こいつ、隙あらば自慢しようとするよな。それ。
「これって魔法の品物スか? オレ実物見るのはじめてス」
「反乱軍をやっつけたとき、カイトス将軍からご褒美にもらったんだよ!」
「へぇぇぇ! オレも欲しいスねえ!」
すげえ簡単にもらった感じに言ってるけどさ、アスカさんや。
あの戦いで冒険者や傭兵は三十人以上死んでるからね?
五百人のうち三十人だよ?
そして特別報奨をもらえたのは俺たち四人だけだよ?
なにをどう見て効率が良いと思ったのか、お母さんさっぱりわからないわよ。
「ネル母さん。そろそろですか?」
「だな。俺の記憶だともうちょっとで大広間の扉が見えてくるはずなんだが」
「モンスターが増えたのはキマイラのせいなんでしょうか?」
「わからない。わからないが、そう考えると筋が通るよな」
夢を語りすぎて命が軽くなっちゃってるメグとアスカをよそに、ミリアリアが訊ねてくる。
とくに問題もなく、というかすごく順調に第十階層に到達した俺たちである。
二十階層くらいまでは『金糸蝶』時代に踏破しているので、構造も頭に入っているのだ。
キマイラみたいな強力な魔物が十階に住み着いたから、それより上にいるモンスターが勢いづいた。そう考えるのが最も蓋然性が高いと思う。
「けど、いまひとつ自分を納得させられないんだよな」
「じつは私もです。原因と結果が逆、なのかもしれません」
「逆?」
「赤ちゃんを乳母車に乗せて押しているお母さんですわ」
俺が首をかしげると、横からメイシャが口を挟んだ。
なに言ってんだこいつ。
と、思ったけど、考えてみたら確かにその通りですね。
お母さんがいないと赤ん坊は生まれないわけで、原因(親)より結果(子供)が前に来てますわ。
OK。
そんな下ネタっぽいトンチはいらん。
俺は拳でメイシャの頭を、ミリアリアは杖の先でメイシャの尻を、それぞれ小突いてオシオキしておく。
真面目な話をしてんだよ。こっちは。
「キマイラが出てきたからモンスターが強くなったんじゃなくて、強くなったモンスターの中にキマイラが含まれていただけ、か」
「はい」
神妙な顔でミリアリアが頷く。
大変に面白くない推論だ。
だが、なぜか腑に落ちてしまう。
だとしたら、その現象は、いったいなにを意味してるんだ?
戦いは、扉を開ける前から始まっていた。
「こっち見てるスね」
「気づかれてます」
メグとミリアリアが同時に口を開く。
気配探知に優れたスカウトと、魔力感知に長けたメイジの言葉である。
疑う余地はない。
俺たちの接近に、すでにキマイラは気づいており待ち構えているということだ。
扉を開いた瞬間に攻撃がくるだろう。
いままで挑んだ連中は、そうやって機先を制されてしまったのかもしれない。
準備が整ってない状態でのドラゴンブレスでは、たしかにたまったものではない。
しかし、くると判っているなら、対応法はいくらでもある。
俺は、短期的な作戦を四人娘に伝えた。
すこしだけ緊張した返事が返ってくる。
大丈夫。そのくらいの緊張感なら身体はちゃんと動くさ。
ぽんぽんと一人ずつ肩を叩き安心させる。
「いくぞ」
そして、大広間の扉を蹴り開け、同時に左右に跳び分かれる。
一瞬前まで俺たちがいた場所を、炎の舌が舐めていった。
「アスカ! 右から回り込め!」
「おけ!」
左へと駆けながらの指示に赤毛の少女が応える。
ごくわずかにキマイラが戸惑った。
俺とアスカ、どちらを追うか迷ったのである。
しかし、その迷いが命取りだ。
「氷の槍!」
最初にブレスが通過した場所に戻ったミリアリアが魔法を放つ。
彼女の使えるなかで、最も威力の大きなものだ。
人がいなくなったと思っていたポイントから攻撃がくるとは思っていなかったのだろう。
獅子の頭が氷の槍に貫かれて吹き飛ぶ。
狂ったような吠え声をあげて暴れるキマイラ。
竜の口に炎がたまる。
そこに、どこからか狙いすましたように飛んできた鶏卵がぶつかり、勢いよくはぜ割れた。
中に詰まっていた砂が飛び散る。
「ただの目くらましス。でも」
竜の首だけでなく山羊の首まで絶叫を放った。
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