二度追放された冒険者、激レアスキル駆使して美少女軍団を育成中!
第16話 ふられネル
麻紐をゆらゆらとさせて、白猫の獅子王(命名、アスカ)と遊んでやる。
生後一年ほどだという話だがけっこう優秀なハンターで、クラン小屋のネズミどもは、すっかり鳴りを潜めた。
「よしよし獅子王。お前はデキル猫だ」
俺が垂らした紐を、ちょいちょいとパンチしている獅子王を褒める。
「勤め先をクビになって、家族にも相手にされず、唯一の話し相手がペットだけのお父さんみたいですよ。ネルさん」
「やーめーてー! そこまで具体的にキャラ設定しないでー!」
ミリアリアの冷静な指摘に、俺は大ダメージを受けた。
ほぼ瀕死である。
いっそひと思いに殺してくれぇ。
「ていうか、せっかくの休息日になにやってるんですか。家に籠もってないで、賭場でも娼館でも行ってくればいいのに」
呆れたように両手を広げて首を振るミリアリア。
「子供が大人に悪い遊びを勧めるな」
むしろ俺が呆れるわ。
女の子からギャンブルや女遊びを勧められるって、俺はどんな人間だと思われてるんだよ。
「冗談ですよ。浮気なんかしたら、ネルさんを殺して私も死にます」
「怖いわ!」
そもそも、いつそんな関係になったんだよ。俺たちは。
「毎日、同じ空間で寝てるじゃないですか」
「そーですね」
なにしろこのクラン小屋には、部屋という概念がないからね。
三人娘はロフトに置いたベッドで寝てるし、そこから見下ろせば、居間として使っている空間で俺が寝ている。
仕切りとかそういうのはないんで、同じ空間であると強弁することは可能だ。
平面で考えたら、拳十個分も離れてないしね。
立体的に考えると一階と二階ですけど。
「家の中でだらだらされたらいつまでも片付かないので、どっか遊びに行って欲しいってのは事実です」
「日に日に俺の扱いが悪くなってるよね。遊びに行く金がないんだよ」
床に寝っ転がっていた状態から身を起こし、ぐーっと背伸びをする。
「どうしてでです? 私たちですらまだ懐はあたたかいのに」
ミリアリアが小首をかしげた。
山麓の戦いで得た報酬もあるし、カイトス将軍から追加報酬ももらっている。さらにその後、二つばかり討伐依頼をこなしているから、個人的な財布はあったかいはずなのである。
「ちょっと野暮用で使っちまってな」
ぼりぼりと頭を掻く。
残念ながら、俺の個人資産額は限りなくゼロに近いことになってしまった。
「野暮用? 娼館の女にでも貢いだんです? 鳥籠から出してやるとか格好付けて」
「そんなとこだ」
「ホントなんですか!?」
自分で話を振ったくせに、むっきーってテンパってるミリアリアに手を振り、俺はクラン小屋を後にした。
忙しい娘である。
ともあれ、掃除当番のミリアリアの邪魔をするというのも気が引けるから、適当に街でもぶらつくか。
飯も食えないし飲みにも行けないから、本当にただの散歩だけど。
なんというか、金がなくてもできることなんて、息をすることと金持ちになった自分を想像して楽しむことくらいだなぁ。
で、いつも通り冒険者ギルドにいるわけである。
「ジェニファ。愛してる。お茶おごってくれ」
「残念。私は愛してないのでおごれません」
そしてあっさりとふられた。
喉渇いたなあ。
「喉が渇いたって理由でナンパするような人になんかおごってあげません。訓練場の水飲み場で水でも飲んでください」
「あ、そうだ。それがあった。さんきゅ。ジェニファ」
しゅたっと右手を挙げ、俺は訓練場へと向かった。
どこの冒険者ギルドでもそうだとは限らないが、交易都市ガイリアのギルドには、ささやかながら訓練場が併設されていて、登録している冒険者であれば無料で利用することができる。
まあ、本当にささやかで、打ち込み訓練用の人形が置いてあったり、木剣を貸し出したりしてくれるだけなんだけどな。
大事なのはそこじゃなくて、ギルドの地下から汲み上げた清潔な水が飲み放題なのだ。
「普段つかわないからな。すっかり忘れてたぜ」
ぐびぐびと、カップに二杯ほど一気に飲み干してしまう。
やっと人心地ついた。
水が無料で飲めるってのは、ちょっとした特権だよな。
いやまて、無料じゃないな。
ちゃんと協賛金を払ってるもの。けっして安くないもの。
冒険者としての実績を重ねて、評価が高まれば高まるほど納付額は大きくなっていくんだぜ。
鬼畜仕様だろ?
もちろん、逆よりは絶対に正しいんだけどな。
くだらないことを考えながら返却口にカップを置く。
あんまり水ばっかり飲み続けたら、腹がたぷたぷになってしまう。
「あれ? アスカじゃないか」
訓練場に目を向ければ、模擬戦をおこなっている赤毛の少女が視界に入った。
喉が渇いていたせいでまったく気づかなかったよ。
「ていうかあいつ、休息日にまで鍛錬してやがったのか」
ふうとため息をつく。
向上心があるのはとても良いことなんだが、休むときにはしっかりと休まないとダメだ。
訓練のしすぎは、かえって身体を壊すことになるからな。
「でもまあ、かなり腕は上がってるよな」
縦横に木剣を振るって戦うアスカは、三ヶ月前とは別人なくらい強くなっている。
まず、動きに無駄がなくなってきた。
そして周囲の状況をちゃんと見れるようになってきた。
だから、
「あ、ネルさんだ! おーい!」
と、俺に気づいて手を振ったりするわけだ。模擬戦中に。
「隙あり!」
その瞬間、相手が撃ち込んできた木剣が、ぱっこーんと軽い音を立ててアスカの兜にヒットした。
「ぁ痛ー!」
うん。
気を散らしやすい部分はまったく成長してないな。
これからの課題としておこう。
生後一年ほどだという話だがけっこう優秀なハンターで、クラン小屋のネズミどもは、すっかり鳴りを潜めた。
「よしよし獅子王。お前はデキル猫だ」
俺が垂らした紐を、ちょいちょいとパンチしている獅子王を褒める。
「勤め先をクビになって、家族にも相手にされず、唯一の話し相手がペットだけのお父さんみたいですよ。ネルさん」
「やーめーてー! そこまで具体的にキャラ設定しないでー!」
ミリアリアの冷静な指摘に、俺は大ダメージを受けた。
ほぼ瀕死である。
いっそひと思いに殺してくれぇ。
「ていうか、せっかくの休息日になにやってるんですか。家に籠もってないで、賭場でも娼館でも行ってくればいいのに」
呆れたように両手を広げて首を振るミリアリア。
「子供が大人に悪い遊びを勧めるな」
むしろ俺が呆れるわ。
女の子からギャンブルや女遊びを勧められるって、俺はどんな人間だと思われてるんだよ。
「冗談ですよ。浮気なんかしたら、ネルさんを殺して私も死にます」
「怖いわ!」
そもそも、いつそんな関係になったんだよ。俺たちは。
「毎日、同じ空間で寝てるじゃないですか」
「そーですね」
なにしろこのクラン小屋には、部屋という概念がないからね。
三人娘はロフトに置いたベッドで寝てるし、そこから見下ろせば、居間として使っている空間で俺が寝ている。
仕切りとかそういうのはないんで、同じ空間であると強弁することは可能だ。
平面で考えたら、拳十個分も離れてないしね。
立体的に考えると一階と二階ですけど。
「家の中でだらだらされたらいつまでも片付かないので、どっか遊びに行って欲しいってのは事実です」
「日に日に俺の扱いが悪くなってるよね。遊びに行く金がないんだよ」
床に寝っ転がっていた状態から身を起こし、ぐーっと背伸びをする。
「どうしてでです? 私たちですらまだ懐はあたたかいのに」
ミリアリアが小首をかしげた。
山麓の戦いで得た報酬もあるし、カイトス将軍から追加報酬ももらっている。さらにその後、二つばかり討伐依頼をこなしているから、個人的な財布はあったかいはずなのである。
「ちょっと野暮用で使っちまってな」
ぼりぼりと頭を掻く。
残念ながら、俺の個人資産額は限りなくゼロに近いことになってしまった。
「野暮用? 娼館の女にでも貢いだんです? 鳥籠から出してやるとか格好付けて」
「そんなとこだ」
「ホントなんですか!?」
自分で話を振ったくせに、むっきーってテンパってるミリアリアに手を振り、俺はクラン小屋を後にした。
忙しい娘である。
ともあれ、掃除当番のミリアリアの邪魔をするというのも気が引けるから、適当に街でもぶらつくか。
飯も食えないし飲みにも行けないから、本当にただの散歩だけど。
なんというか、金がなくてもできることなんて、息をすることと金持ちになった自分を想像して楽しむことくらいだなぁ。
で、いつも通り冒険者ギルドにいるわけである。
「ジェニファ。愛してる。お茶おごってくれ」
「残念。私は愛してないのでおごれません」
そしてあっさりとふられた。
喉渇いたなあ。
「喉が渇いたって理由でナンパするような人になんかおごってあげません。訓練場の水飲み場で水でも飲んでください」
「あ、そうだ。それがあった。さんきゅ。ジェニファ」
しゅたっと右手を挙げ、俺は訓練場へと向かった。
どこの冒険者ギルドでもそうだとは限らないが、交易都市ガイリアのギルドには、ささやかながら訓練場が併設されていて、登録している冒険者であれば無料で利用することができる。
まあ、本当にささやかで、打ち込み訓練用の人形が置いてあったり、木剣を貸し出したりしてくれるだけなんだけどな。
大事なのはそこじゃなくて、ギルドの地下から汲み上げた清潔な水が飲み放題なのだ。
「普段つかわないからな。すっかり忘れてたぜ」
ぐびぐびと、カップに二杯ほど一気に飲み干してしまう。
やっと人心地ついた。
水が無料で飲めるってのは、ちょっとした特権だよな。
いやまて、無料じゃないな。
ちゃんと協賛金を払ってるもの。けっして安くないもの。
冒険者としての実績を重ねて、評価が高まれば高まるほど納付額は大きくなっていくんだぜ。
鬼畜仕様だろ?
もちろん、逆よりは絶対に正しいんだけどな。
くだらないことを考えながら返却口にカップを置く。
あんまり水ばっかり飲み続けたら、腹がたぷたぷになってしまう。
「あれ? アスカじゃないか」
訓練場に目を向ければ、模擬戦をおこなっている赤毛の少女が視界に入った。
喉が渇いていたせいでまったく気づかなかったよ。
「ていうかあいつ、休息日にまで鍛錬してやがったのか」
ふうとため息をつく。
向上心があるのはとても良いことなんだが、休むときにはしっかりと休まないとダメだ。
訓練のしすぎは、かえって身体を壊すことになるからな。
「でもまあ、かなり腕は上がってるよな」
縦横に木剣を振るって戦うアスカは、三ヶ月前とは別人なくらい強くなっている。
まず、動きに無駄がなくなってきた。
そして周囲の状況をちゃんと見れるようになってきた。
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