二度追放された冒険者、激レアスキル駆使して美少女軍団を育成中!
第10話 遺跡探索(後編)
ミリアリアという娘は、ちゃんと計画を立てそれに従って動くことを得意としている。
非常に良い言い方をすれば、深慮遠謀の人だ。
そして同時に、臨機応変の人ではないのである。
突発的な出来事にひたすら弱い。彼女自身が立てた予想を超えるような事態に遭遇すると簡単にテンパってしまう。
笑えるくらいにポンコツになってしまうのだ。
「大丈夫か。ミリアリア」
「は、はい……ネルさん」
とんがり帽子を外し、茶色の頭を撫でて落ち着かせてやる。
ふかーふかーと、威嚇する猫みたいだった呼吸が、普段通りに戻ってきた。
「ごめんなさい……」
「気にするな。突発的な事態が得意なんてやつはいない」
そのつもりでいるから対応できるだけ。
慣れでしかないのである。
アスカみたいな剣士は鍛錬することで、その慣れを積み上げるコミットができるけど、魔法使いはそういうわけにはいかない。
どの魔法を使うか考え、詠唱して、発動するのはそれからだ。
咄嗟に剣を抜くとか、右に跳ぶとか、そういうふうに身体に憶えさせることはできないのである。
素早い状況判断と正確な戦力分析、次の手その次の手と組み上げていく戦術的な思考、そういうものが要求される。
高次元でね。
十六歳の女の子が完璧にこなせたら、むしろ奇跡だろう。
ましてミリアリアは本番に弱いタイプだし。
「少しずつ慣れていけばいいさ。それまでは俺に頼れ。袖の下なしで助けてやるから」
ぽんぽんと小さな背中を叩いてやる。
「ほんと、ネルさんってお母さんですよね」
くすりとミリアリアが笑った。
いや、そこはお兄さんと呼んで欲しいのだよ。俺としてはね。
「ネルさんネルさん! メイがおなかすいたって!」
「もうダメですわ……」
俺がミリアリアを落ち着かせている間に、ちょっとそのあたりを偵察していたアスカとへろへろメイシャが戻ってきた。
ろくでもない報告を持って。
「またかよ……」
ため息とともに俺は背負い袋から特製ペミカンを取り出し、パンで挟んでメイシャに与えてやる。
「うまうまですわ! ネルママ愛してますわ!」
喜ばれた。
やっすい愛だなぁ。
ペミカンというのは、細かく刻んだ肉や野菜を香ばしく炒めてバターで固めた栄養満点の携帯食だ。
お湯や温めた牛乳に溶いても良いし、パンに挟んだりそのままかじったりしても美味い。
脂の塊だから、食べ過ぎたら身体に悪いけどね。
少なくともメイシャみたいにがつがつ食べたら、間違いなく太ってしまうだろう。
なんでこの娘は太らないのか、永遠の謎である。
ただ、太らないけど燃費が悪いんだ。
肉弾戦もそこそこできて、神聖魔法も使えて、俺の指示にも即応できるという優秀な冒険者なんだけど、とにかくすぐにお腹が空いちゃうのである。
で、お腹が空いたら動けなくなる。
困った体質の持ち主のため、俺の背負い袋には携帯栄養食がけっこう入っているのだ。
「おなかすいてないときのメイは、超有能なのにね!」
からからとアスカが笑う。
それを言うならお前さんだって、やたら前に出たがる癖がなければ優秀な冒険者なんだぜ?
戦闘のセンスは充分なのに猪突しちゃう剣士。
知識もあるし使える魔法も多いのに本番に弱い魔法使い。
すべてにおいて高水準の能力がありながら、すぐに空腹で動けなくなる僧侶。
我がクランの構成員たちは、とっても個性的です。
紆余曲折はあったけど、調査は順調に進んでいる。
規模としてはそんなに大きな遺跡じゃない。
残っている建物も二十くらいで、あとは完全に瓦礫の山だ。
そしてモンスターはほとんどいなかった。いたのはゴーレムである。かれこれ三十体ほどやっつけている。
たぶん、あいつらがここを守っていたのだろう。
住む人もなく、訪れる人もない街を。
「なんだか切ないですね」
ぽつりとミリアリアが言った。
もう慣れたのか、急にゴーレムが飛び出してきても慌てずに対処できるようになった。
「だれのために街を守っているのか。いまさらそんなことをしてなんになるのか」
軽く首を振る。
無意味な考えだと判っているからだろう。
ゴーレムに意志などない。与えられた命令を忠実に実行するだけだ。
機能を停止するその日まで。
そこに感傷的な思いを重ねてしまうのは、まさに人間の得手勝手というものである。
あるいは、彼女の優しさというべきか。
「けど、あいつらが守っていてくれたから、街は汚れたモンスターどもに荒らされることがなかった。何千年も後の世代の俺たちに当時の文化や風俗を伝えることができたんじゃないかな」
だから、ちょっとずれていたとんがり帽子を直してやった。優しくな。
ミリアリアが俺を見上げてきた。
まじまじと。
「ネルさんって、意外とロマンチストですか?」
「いや? 本音を語れば、こいつらが守っていてくれたおかけでお宝が手に入るなー、と」
「だと思った」
くすくすと笑う少女。
OK。それでいい。
余計なことを考えると剣も魔法も鈍るからな。
「でもさー、ゴーレムって決まった動きしかしないからつまんないよね。もっとこう、多彩な攻撃パターンがあっても良いと思うんだよ」
俺とミリアリアの会話に割り込むようにして、すごくどうでも良いことをアスカが言った。
うん。
きみは何をしにこの遺跡にきたのか、もういちど言ってみたまえ。
このバトルジャンキー娘が。
ともあれ、探索は順調である。
この分なら二、三日もあれば、地図作りは終わるだろう。
非常に良い言い方をすれば、深慮遠謀の人だ。
そして同時に、臨機応変の人ではないのである。
突発的な出来事にひたすら弱い。彼女自身が立てた予想を超えるような事態に遭遇すると簡単にテンパってしまう。
笑えるくらいにポンコツになってしまうのだ。
「大丈夫か。ミリアリア」
「は、はい……ネルさん」
とんがり帽子を外し、茶色の頭を撫でて落ち着かせてやる。
ふかーふかーと、威嚇する猫みたいだった呼吸が、普段通りに戻ってきた。
「ごめんなさい……」
「気にするな。突発的な事態が得意なんてやつはいない」
そのつもりでいるから対応できるだけ。
慣れでしかないのである。
アスカみたいな剣士は鍛錬することで、その慣れを積み上げるコミットができるけど、魔法使いはそういうわけにはいかない。
どの魔法を使うか考え、詠唱して、発動するのはそれからだ。
咄嗟に剣を抜くとか、右に跳ぶとか、そういうふうに身体に憶えさせることはできないのである。
素早い状況判断と正確な戦力分析、次の手その次の手と組み上げていく戦術的な思考、そういうものが要求される。
高次元でね。
十六歳の女の子が完璧にこなせたら、むしろ奇跡だろう。
ましてミリアリアは本番に弱いタイプだし。
「少しずつ慣れていけばいいさ。それまでは俺に頼れ。袖の下なしで助けてやるから」
ぽんぽんと小さな背中を叩いてやる。
「ほんと、ネルさんってお母さんですよね」
くすりとミリアリアが笑った。
いや、そこはお兄さんと呼んで欲しいのだよ。俺としてはね。
「ネルさんネルさん! メイがおなかすいたって!」
「もうダメですわ……」
俺がミリアリアを落ち着かせている間に、ちょっとそのあたりを偵察していたアスカとへろへろメイシャが戻ってきた。
ろくでもない報告を持って。
「またかよ……」
ため息とともに俺は背負い袋から特製ペミカンを取り出し、パンで挟んでメイシャに与えてやる。
「うまうまですわ! ネルママ愛してますわ!」
喜ばれた。
やっすい愛だなぁ。
ペミカンというのは、細かく刻んだ肉や野菜を香ばしく炒めてバターで固めた栄養満点の携帯食だ。
お湯や温めた牛乳に溶いても良いし、パンに挟んだりそのままかじったりしても美味い。
脂の塊だから、食べ過ぎたら身体に悪いけどね。
少なくともメイシャみたいにがつがつ食べたら、間違いなく太ってしまうだろう。
なんでこの娘は太らないのか、永遠の謎である。
ただ、太らないけど燃費が悪いんだ。
肉弾戦もそこそこできて、神聖魔法も使えて、俺の指示にも即応できるという優秀な冒険者なんだけど、とにかくすぐにお腹が空いちゃうのである。
で、お腹が空いたら動けなくなる。
困った体質の持ち主のため、俺の背負い袋には携帯栄養食がけっこう入っているのだ。
「おなかすいてないときのメイは、超有能なのにね!」
からからとアスカが笑う。
それを言うならお前さんだって、やたら前に出たがる癖がなければ優秀な冒険者なんだぜ?
戦闘のセンスは充分なのに猪突しちゃう剣士。
知識もあるし使える魔法も多いのに本番に弱い魔法使い。
すべてにおいて高水準の能力がありながら、すぐに空腹で動けなくなる僧侶。
我がクランの構成員たちは、とっても個性的です。
紆余曲折はあったけど、調査は順調に進んでいる。
規模としてはそんなに大きな遺跡じゃない。
残っている建物も二十くらいで、あとは完全に瓦礫の山だ。
そしてモンスターはほとんどいなかった。いたのはゴーレムである。かれこれ三十体ほどやっつけている。
たぶん、あいつらがここを守っていたのだろう。
住む人もなく、訪れる人もない街を。
「なんだか切ないですね」
ぽつりとミリアリアが言った。
もう慣れたのか、急にゴーレムが飛び出してきても慌てずに対処できるようになった。
「だれのために街を守っているのか。いまさらそんなことをしてなんになるのか」
軽く首を振る。
無意味な考えだと判っているからだろう。
ゴーレムに意志などない。与えられた命令を忠実に実行するだけだ。
機能を停止するその日まで。
そこに感傷的な思いを重ねてしまうのは、まさに人間の得手勝手というものである。
あるいは、彼女の優しさというべきか。
「けど、あいつらが守っていてくれたから、街は汚れたモンスターどもに荒らされることがなかった。何千年も後の世代の俺たちに当時の文化や風俗を伝えることができたんじゃないかな」
だから、ちょっとずれていたとんがり帽子を直してやった。優しくな。
ミリアリアが俺を見上げてきた。
まじまじと。
「ネルさんって、意外とロマンチストですか?」
「いや? 本音を語れば、こいつらが守っていてくれたおかけでお宝が手に入るなー、と」
「だと思った」
くすくすと笑う少女。
OK。それでいい。
余計なことを考えると剣も魔法も鈍るからな。
「でもさー、ゴーレムって決まった動きしかしないからつまんないよね。もっとこう、多彩な攻撃パターンがあっても良いと思うんだよ」
俺とミリアリアの会話に割り込むようにして、すごくどうでも良いことをアスカが言った。
うん。
きみは何をしにこの遺跡にきたのか、もういちど言ってみたまえ。
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