Cross Navi Re:〜運命の交差〜
[プロローグ]
ーーー準備は整った…
ーーーーあとは待つだけだ…
深々と降る雪の中、ある城壁の一端に1人の男が立っている。
だいぶ長くそこにいたのだろう、深々と被るフードには雪が積もり始めている。
男は薄暗い雲で覆われた空を見上げる。
いくつもの黒い煙が幾つも立ち並ぶ柱のように一帯に立ち上がっている。
何かが焦げた臭いが鼻をつく。
「間に合うといいな…」
声にもならないような小さな声で呟くと、白い息がこぼれ出た。
そうして男は目を閉じた。
※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※
暗い、薄暗い空間。
光や方向感覚さえ失われたその世界で一人、春樹はうつらうつらと歩いている。
ーーーここはどこだろう…
ーーー自分は何者か…
何もわからないまま、同じ思考を繰り返し、ひたすら歩き続ける。
悠久の時が流れたかのような感覚。
いつからここにいるかも覚えていない。
ただ一つだけ、春樹の心に留まっているものがあった。
ーーーーーーー守らなければ。
誰をなのか、何をなのかもわからない。
だが、たしかにその意思は春樹の中に存在しているのだ。
歩き続ける間、時折、胸の内にこみ上げてきては消えていくその思い。
ーーーーー守らなければ…
ーーーーー守らなければ…
ーーーー守らなければ…
何度も、何度も繰り返してきた思考。無意識にその意志がまた、春樹の心の中に再び膨らみ始める。
ーーーー守らなくちゃ……………誰を?
ーーーー守らなくちゃ…………………何を?
ーーーー守らなくちゃ…………………なぜ?
いくら考えても、やはり答えは出ないまま。
そろそろ考えるのも無駄に感じ始め、春樹が再び無意識の渦に飛び込もうとする。
(……もう……いいや……)
そう思った瞬間、
"…か…を"
声が…頭の中に微かに響き渡った。
(…誰…だ…?)
そうしてまた、先ほどの意志が膨らみ始める。
ーーーー守らなくちゃ……………誰を?
"人々を…"
ーーーー守らなくちゃ……………何を?
"世界を…"
ーーーー守らなくちゃ……………なぜ?
"……"
理由にだけは返事がなかった。
しかし、春樹を覚醒させるには十分すぎる誰かの声。
ーーー守る…
ーー守る…んだ。
徐々に意識がはっきりしていく。確かにあるはずの守るべきもの。
守る……………
守る………守る……
守る……守る、守る、守る、守る
そう強く想いながら、春樹は暗闇の中を駆け出す。
守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る
"守るんだ!"
走りながらそう思った瞬間、それまで暗闇しか存在しなかった世界に、一筋の光が差し込む。
まるで、春樹の進むべき道を示すかのように強く明るく輝く光。
春樹は光の方へと手を伸ばす。
"絶対に守ってやる!"
そう強い意志を心に刻んで。
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