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涙はソラを映す鏡

青空顎門

四 涙が落ちる 儚い願い

 穹路が家の庭に落ちてきてから、早一週間が過ぎていた。
 三人での生活にも慣れ、何気ない瞬間にも違和感を抱いたりしない。
 もし今、真弥と二人の生活に戻れば、きっと寂しさを感じてしまうに違いない。
 螺希はそう思っていた。

 今は通学の途中。バス停までの道のりを三人並んで歩いている。
 真弥はいつの間にそこまで仲がよくなったのか、穹路と手を繋いで上機嫌だ。
 螺希も真弥に上目遣いでお願いされて、久しぶりに手を繋いでいることも真弥の機嫌がいい理由の一つかもしれない。
 まるで親子のような配置に螺希は少々恥ずかしさも感じていたが、他人から見れば背丈の関係で仲のいい三兄妹程度にしかならないだろう。
 それはそれで少々違和感のある光景かもしれないが。配置と主に体格の問題で。
 ともかく穹路のおかげで、真弥の笑顔が増えたことは確かだ。

 真弥は物心がつく頃に父親を失い、その時から母親の体調は悪化の一途を辿っていたため、両親にほとんど甘えることができなかった。
 母親代わりの螺希もまた、彼女に強くあって欲しかったため、余り甘やかさなかったつもりだ。
 そう螺希は思っていても、琥珀からはよく甘いと言われるのだが。
 もしそうなら、真弥自身が甘えないようにしている訳で、年不相応な程できた子ということになるだろう。

 しかし、真弥も内心では無条件に甘えられる人が欲しかったに違いない。
 真弥にとって穹路はそれに足る人物だったのだろう。
 螺希もまた穹路が信頼できる人間であることはもはや認めていた。
 実際、真弥に優しくしてくれているし、学校では真面目に勉強をしている。
 その姿が偽りではないことぐらいは道具に頼らずとも、傍で見ていれば分かる。
 確かに彼が落ちてきた日に目の当たりにした異常な回復力と翠のティアに起きた異変は気になるが、それだけだ。
 だけ、と言っていいことかどうかは至って疑問だが、それでもこのまま何も起きなければそれが一番いい。
 そうすれば真弥は笑顔で日々を過ごせるだろうし、それが自分自身の幸せにも繋がるのだから。
 螺希は繋がれた手を二人に気づかれないように見つつ、僅かに微笑みながら、これからも平穏な日々が続くことを願っていた。

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