ヒエラルキーを飛び越えろ!!

あゆむ

11森田龍太


 森田のクラスで今話題になっているのが、「球技大会」だ。男子は部活の特待生や強化クラブの部活生も多数いるようで、男子の優勝候補は、スポーツクラスと特進クラスだろう。

 女子はスポーツクラスにバレー部が多数いるのだが、流石に、全員が審判側に回る。そのためか、由香を筆頭とするバレー部経験者が息を撒いている状況だった。
 由香は自他共に認める野球好きであり、熱い女子だ。よほど、真剣勝負が好きらしい。

 「じゃあ、うちらのクラスが優勝するためには、やっぱ人選じゃね?」いかにもな、クラスカースト上位を自ら示すタイプの女子が口を挟む。

「え、あー最初にボールが苦手な子が出て、後から得意な子に代わるようなメンバー決めをしないとだね」

 この様子を森田や翼を含めたクラスの男子は傍観する。無論、由香がフォローに回ったことは男子の中では周知の事実だ。

「はぁ?! 何言ってんの? スポーツ科のバレー部が出ないなら、他の部活やってる子も他と大して変わんないんでしょ? だったら、経験者のいるうちらが有利じゃん。わざわざ下手な人出す必要ある?」

 これには由香も絶句する。

「それに、ボール怖いとか言ってるやつなら、コートに出されなくてよかったって思うから、別に遺恨なくね?」

 「たしかに」とカースト上位の取り巻きのような女子もいう。彼女らの独壇場になりつつある空気感に、誰も止められない。

「でも、多分、球技大会レベルだから、みんな一回はコートに出なきゃだとは思うけど……」
「うわ、面倒くさ。じゃあ、しょうがないから、最初の試合の一セットだけ出て、あとはベンチね」

 ここまで言われてしまえば、由香も運動が苦手な子たちを庇うことはできなかった。カースト制を態度で仄めかす数人と、由香が同じメンバー入りをしてしまい、密かに唇を噛んでいた。

 事の顛末を見ていた男子は、もう、誰も女子たちの話し合いに耳を向けない。女子の問題に口出すことはしなかったものの、「応援する気が失せた」という思いは一致しているようだった。

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