魔法高校の聖騎士~楽園の鳥籠で天使は嘲笑う~

天羽睦月

第16話 新たな通学路

 
 そしてついに、国立中央魔法学校の入学式の日がやってきた。出雲は入学式の五日前に家に届けられた、紺色のブレザー型の制服を着た。
 いつサイズを計ったのか定かではないが、出雲は体にフィットしているその制服の着心地がよかった。

「動きやすいし、着心地がいいや」

 出雲は鏡を見ながら上手く着られているか、自身の姿を見ていた。今日が国立中央魔法学校の入学式なことや、本当に入学が出来るんだと楽しみな気持ちで溢れていた。

「どんな楽しい毎日が待っているんだろうなー。それに、どんな授業があるんだろう」

 出雲は楽しみだと授業のことや、新たに出来るであろう友達とのことを考えていた。

「あ、早く行かないと遅刻しちゃう!」

 部屋の床に置いていた新しい通学鞄を手に取り、家を出ようとした。リビングにいるであろう楓と琴音の顔を見ることにした。

「二人ともいるー?」

 リビングのドアを開けると、制服を着ている琴音と朝ごはんを食べている楓の姿があった。二人は出雲を姿を見ると似合ってるねと声を合わせて言った。

「本当? ありがとう! 突然制服が送られてきたからサイズが合わないかと思ったけど、ちょうどいい感じ!」
「よかったねお兄ちゃん! 似合ってて最高だよ!」

 琴音が親指を立てて、歯を見せながら笑顔を出雲に向けた。出雲はありがとうと言いながら、楓と琴音に行ってくるねと手を振ってリビングを出た。 
 家を出ると、つい最近まで中学校に通っていた電車通学の行き方とは違う方面に進むので、かなり新鮮な気持ちでいた。

「受験の時には国立中央魔法学校に行かなかったから、ちょっと緊張するなー」

 出雲は高まる心臓の鼓動を抑えようとしながら、人が徐々に増えつつある電車の車内の椅子に座りながら外の景色を眺めていた。
 現在は午前7時過ぎだというのに、4月の明るい太陽の日差しが出雲の目に入る。

「眩しいなー。今日は晴れてて良かった」

 眩しいと呟きながら、右手で自身の目を覆う。目を覆って太陽の日差しを遮っていると、乗り換える駅に到着をした。

「ここで新都線に乗り換えて国立中央駅に行くのか」

 出雲は電車から降りると、新都線に乗り換えるためにエスカレーターを下っていく。
 駅構内を案内板を頼りに進んでいき、エスカレーターを上って新都線のホームに辿り着くことが出来た。

「ここで乗るのか。間違えないように気を付けなきゃ!」

 そう意気込んでいると、周囲に似たような制服を着ている人たちがいた。出雲はその制服の人たちを見ると、国立中央魔法学校の生徒かなと考えていた。

「ついていけば大丈夫かな? 違うかな?」

 同じ学校の人たちか困惑をしていると、話声で国立中央魔法学校の話をしていたのが聞こえたので、出雲は同じ学校の生徒だと確信をした。

「同じ学校の話をしてる? ついていけば迷わないかな?」

 そこまで行ったことがないので、出雲は迷わずに国立中央魔法学校に到着をするか不安であった。しかし国立中央魔法学校のことを話し、似た制服を着ているのを見た出雲は不安が解消されていた。

「確か降りる駅は中央学園駅だっけ? まだまだつかないな」

 あと20分はかかるなと思った出雲は、この通学路で3年間通うのかと窓から外を眺めていた。

「楽しい毎日になればいいけど、あの試験を思い出すと色々な試練がありそうだ……」

 出雲は辛いことも多いけど、絶対に面白いことも沢山あると考えることの方が楽しいと考えていた。
 そんなことを考えていると、中央学園駅に到着をしていたのに気が付いた。

「あ、降ります! 降りまーす!」

 鞄を持って扉が閉まる音が車内に鳴り響く中で、出雲は慌てて電車から降りた。

「危なかった! 乗り過ごすところだった!」

 息を荒くしながらホームにある椅子に座って、息を整えていく。息が整った出雲は椅子から立ち上がり、駅の改札を目指していく。
 中央学園駅は周囲に国立中央魔法学校の関連施設が多数立ち並んでいる。周辺地域からは中央都市と呼ばれているらしく、出雲は国立中央魔法学校で中央って名前が付いているからかなと考えていた。

「改札を出て東口が国立中央魔法学校高等部や大学があって、西口には研究施設があるのか」

 改札を出た先にある案内板を見ながら、出雲は東口から出て学校を目指していく。出雲は周囲の景色や建物を見ていると、意外と時間が経過していることに気が付いた。

「あ! 悠長にし過ぎた! 時間が!」

 出雲はブレザーの内ポケットに入れていたスマートフォンで時間を確認すると、8時を越していることに気が付いた。

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