絶叫除霊師ミソギ

ねんねこ

12.2章開始

 肝を冷やしている間にも、ストーリーは進む。気付けばリシティアという新しい仲間が増え、1章が終了していた。なお、リシティアの画像は急に真っ黒になったりノイズが走ったりと相変わらず不穏な空気に満ち満ちている。
 1章が終わった、という区切りを盾にミソギはトキへと声を掛けた。そろそろスマホを返して頂きたいものだ。


「トキ、キリも良いし一度休憩しない?」
「またか。お前飽きてきただろう、この仕事に」
「いや、そういう訳じゃ……」


 言い淀んだ丁度そのタイミングで、部屋のドアがノックされた。反射的に「はーい」と返事をする。どうやら社員さんらしい。座っていた椅子から立ち上がり、ドアを開ける。


「進捗の方はどうですか?」


 彼は何故か飲み物とおやつを持ってきてくれていた。ありがとうございます、と言いながらそれを受け取る。


「今、1章が終わったところです」
「あー、ストーリーを読む必要がありますからね。すいません、文章量が多くて」
「いえいえ、あ、何かお手伝いする事ありますか?」


 社員さんの背後に置かれた大量のトレーを見て声を掛ける。どうやらお茶請けを大量に持って来てくれた模様。申し訳なさも手伝い、そう申し出ると自然とお手伝いをする流れになってしまった。
 一方のトキはと言うと、スマホを一度機器から外そうとしているようだ。確かに、充電がガッツリ減っている。プラグを繋ぐつもりなのだろう。


 そう憶測したミソギは、トキの行為を特に気に留める事無く部屋を後にした。


 ***


 社員さんの手伝いを5分程で済ませたミソギが部屋に戻ると、充電器を差したスマートフォンをトキが鋭い目で睨んでいるという地獄絵図だった。


「ど、どうかしたの? トキ」
「おい、お前の電話が急に鳴ったぞ」
「えっ」


 ――まさか三舟さん!?
 そんな凡ミスやらかすとは思えないが、電話を掛けてくる人物というのはかなり少ない。まさか仕事中に支部のメンバーから掛かって来る事は無いだろうから、三舟説はかなり濃厚だ。


「誰からとか分かる?」
「知らん。000-000-000という発番だったぞ」
「えっ。それ普通にヤバいヤツ……」


 この世のものではない電話番号からの電話だったらしい。その場に居なくて良かったと思う反面、自分のスマホが恐ろしい事になっているという恐怖も同時に覚える。


「無言だったから切った。お前の知り合いではないのか?」
「そんな特殊な電話番号の知り合いはいないなあ」
「そうか。ならいいな」
「何にも良くないよ! 私のスマホ呪われてんじゃない!?」
「知るか。スマホが必要なら、経費で落とせ。これは仕事中の事故――労災に当たる可能性がある」


 言われなくとも経費で落とすに決まっている。そもそも、ダミーのスマホを配るべきではないだろうか、機関は。
 今更気付いた理不尽さに勝手に腹を立てながら、ミソギは再び定位置に付いた。置いて行ってくれた菓子を口に放り込む。チョコレートだ、甘い。


「じゃあ、ゲーム再開しよっか。次は私がコントローラー握るからね」
「好きにしろ」


 ――えー、さっきまでの強情さはどうしたのさ……。
 素直にそうして貰えるのであれば、その方が良い。しかし何故か肩透かしを食らった気分だ。何だよ、もっと粘れよ。


「あ、アプリ落ちてる。スリープにしてたら強制終了しちゃったかな」


 何故かアプリが落ちていたので、起ち上げなおした。意外にも不便だな、この作り。それとも謎の電話が掛かって来たからだろうか。真相は闇の中である。
 VRゴーグルを装着し、さあゲームを始めるぞと強い意志を持って画面を睨み付けた。が、その意気込みを粉砕するかのように突如走るノイズ。


「ひえっ!?」
「貴様、何がしたいんだ……」
「不意討ちは卑怯過ぎる」


 ぶちぶちと文句を言いながらホーム画面へ戻って来た。
 今はリシティアという新しいストーリー加入キャラを入手し、2章を始めようというところだったはず。


 早速ストーリーを進めていくと、カイという男のキャラが不意に現れた。彼は社員さん曰く、主人公のライバル的な存在らしい。顔はイケメン。
 主人公と同じく、そのゴールは魔王の討伐となっている。どちらが先に魔王を討伐出来るかを競っているようだ。なお、カイに関しては社員さんからネタバレがしてある。何と彼は3章で闇堕ち、敵となるのだ。



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