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アルケミストの恋愛事情

ねんねこ

03.不穏を伝える鳥

 ***


 数時間後。既に数体の似たような魔物を討伐した。ああいった魔物は擬態していたりするのでなかなか見つけ辛いのだが、アロイスの獣の勘なのか探知機並の精度で発見出来たのが大きいだろう。
 ローブから時計を出して時刻を確認する。そろそろ良い時間帯だ。討伐数もかなり稼げたし、これだけあれば報酬分の働きをしたと胸を張って言えるだろう。魔物の完全駆除は難しいので、時間制なのは有り難い。


「アロイスさん、そろそろ戻りましょう! それに、どうやって報酬を山分けするか考えないと……」
「構わんぞ。ボランティアのようなものだ」
「私が時間給で計算して、現金と交換とか……? 正直、アロイスさんがいないと成り立たないクエストを受けているのに私だけ美味しい思いをするのはちょっと」
「お前だって、クエストのスケジュール管理を毎回してくれているだろう」
「こんなの誰だって出来ますよ」
「え、そ、そうか……」


 何故かアロイスから目を逸らされた。え、まさか彼、時間管理が苦手なのか? いや、遅刻して来た事は一度も無いので決められていない時間調整が苦手なのかもしれない。同時に金の管理も得意ではなさそうだ。強さにスペックの比率を割きすぎである。
 メイヴィス自身も何かを管理するのが得意な訳ではないが、そこは師匠の計画能力の無さを見てきた。人並み程度に出来るようになったのは大きい進歩である。こんな所で役立つとは思わなかったが。


「メヴィ、大きな鳥の声が聞こえないか?」
「え? ……え、いや、聞こえませんよ?」
「そうか。上空を飛び回る鳥の魔物が――いや、いるな。見える」
「見えませんけど!? どんな感覚してるんですか、アロイスさん!」


 幻聴の類いか疑いつつも、ローブから双眼鏡を取り出す。アロイスが指さす一点を四苦八苦しながら探し出した。


「あっ!? ちょっと遠いけど、確かに鳥飛んでますね。いや、どこでも鳥なんて飛んでるんですけど……」
「襲い掛かってくるかもしれない、気を付けて戻るぞ」
「いや、ちょっと待ってくださいよ。あれ……こっちに向かって来てますよね?」


 双眼鏡を以てしてもハッキリと視認する事の出来ないその鳥は、徐々にメイヴィス達が立っている辺りにまで近付いて来ている。接近するにつれて、その全容が明らかになった。
 白すぎる程に白い鳥だ。大きさは多分、鷲のようなそれと同程度。右翼と左翼に親の顔よりよく見たギルドのエムブレムが印刷されている。これは――


「ギルドの緊急救援依頼じゃないですか!」
「なんだそれは」
「ヤバいもう死にそう! ってレベルで危険な状態に陥っているコゼット・ギルドのメンバーが救援を急募してるって事です」
「あの鳥がか?」
「あの、アロイスさん……。あの鳥はマジック・アイテムなんですけど、当然私達も今現在持ってます」
「そうなのか……?」


 柔らかな羽毛に包まれているように見えるその鳥は疑似生命体だ。ボディから翼まで、鉄塊で出来ている。また、これらは石塊を積み上げたゴーレムなどと類似した存在でもある。メイヴィスがギルドに定期納品しているアイテムの中で最も大きな収入源となるアイテムだ。
 特徴としては空を飛び回りけたたましい声を上げるだけ。ギルドの所有物である事を示すエムブレムも印刷しているので、魔物と間違われて撃ち落とされる頻度も少ない。ただ、この鳥はまさしく不穏の象徴。


「アロイスさん、助けに行きましょう。あの鳥が飛んでるって事は、相当切羽詰まった仲間が近くにいるって事です」
「それもそうだな、急ごう」
「えーっと、アロイスさんはご存知ないようなのでこの後の流れも教えておきますね。あの鳥を見掛けて救援に行ける場合はまず、この白い煙弾を上げます」
「ああ」


 腕を組んでちょこんと屈み込み、こちらの様子を伺うアロイスにラベルの貼られた煙弾を上げる為の火薬を見せる。射出機を持ち歩かない人用に、強い衝撃を与えるだけで破裂する仕組みだ。


「この煙弾を認識した救援鳥は煙弾の上がった場所から、着いて来て貰えるように鳥を上げたメンバーの元に飛びます。案内してくれる設計になってるって事です。だから、煙弾は鳥とセットのこれしか使っちゃ駄目ですよ」
「なるほど。了解した。これもお前が作ったのか?」
「最初は自分の為に作ったんですけどね……。定期納品で報酬を貰っているので」


 随分と昔の話だ。それを懐かしみつつも、メイヴィスは煙弾を地面に叩き付ける。すぐに上がった煙を見た鳥が大きく旋回すると目的地への案内を始めた。



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