アルケミストの恋愛事情
07.作戦会議
***
全員一緒に行動を心掛けていたので、すぐに全員集まって来た。というか、すぐ近くで騒動が起こっていたのでみんなその場にいたという表現が正しいだろう。
「今ある情報を整理しよう」
アロイスが蕩々と言葉を紡ぐ。
「まず、この惨状はウタカタによる被害の可能性がかなり高い。マスターの予想は大当たりだったようだ」
「ええ、そうですね。こんな均一に建物を破壊する業、人間のものとは思えません」
下されたアロイスの予想にヒルデガルトが悩ましげに頷く。流石に現状を見て、神魔物とは全く関係無いと言うには無理がある。
「そして、先程ナターリアが調べていた芽。これはプロバカティオの子だった。皆も動くのを見ていたので分かるとは思うが、今回の一件には神魔物が2体絡んでいる可能性が出て来た」
「そんな事、ありえるんでしょうか? だって、1体だってこの世に2体といない珍しい魔物なのに……」
思わず口を突いて出たメイヴィスの言葉に、アロイスは優しく頷いた。
「ああ、俺もそう思う。全く関係が無いはずがない。どこかで繋がっている事象だろう。今回は神魔物2体を退かせると同時、何故ここ最近神魔物の被害が多いのか。また、裏で糸を引いている『何か』が無いかを調査するのが目的になるな」
「人災の線を疑っている訳ですね、アロイス殿は」
「そうだな。正直な話、これが自然的に発生した偶然だとは考え辛い」
――確かにここまで来ると、人災の可能性を疑いたくもなる。しかし、この神魔物達を操れる人間が存在すると言うのだろうか。
考え込んでいると、ナターリアが気の抜けるような一言を吐き出した。
「取り敢えず、今からどうする? このまま突っ立ってても濡れるだけだし、一旦ギルドに帰った方が良いんじゃないかなっ! あ、でもでも、勿論今から神魔物を捜して突っ込むっていうのもアリ寄りのアリだとは思うよっ!!」
「いや、戻る。マスターに今日の収穫を報告してから身の振り方を考えよう」
「流石アロイス! 無理に危険物を捜す必要は無いもんねっ!」
撤退を確信していたらしいナターリアは嬉しそうだ。対するアロイスは渋面だったが。
***
ギルドに帰還した後、まずはヘルフリートがオーガストに調査結果を報告。それを終了した後、再度前の会議室にクエストメンバーが集まっていた。
ここまでに数時間掛かったので、食事や休息を兼ねたフリータイムを挟んでいる。万全な状態とは言い難いものの、打ち合わせをする程度なら問題無いコンディションだ。
「それで、マスターは何て言ってた? もういっそ、今回のクエストは中止! とかステキな事にならないかなっ!」
直接オーガストと話をしたヘルフリートにそう訊ねたナターリアは元気そうだ。そんな彼女の前向き発言に、騎士は首を振る。よろしくない宣告をする気満々だ。
「いいや、神魔物が関わっているのなら、出来れば解決して欲しいそうだ。とはいえ、無理そうなら切り上げて構わないとも言っていた」
「そうなりますよね。やはり、我々でどうにか解決しなければ。そういえば、以前はどうやってウタカタを退けたんでしたっけ?」
クエストを完遂するつもりのヒルデガルトは既に対ウタカタの方法を思案している。彼女らしいと言えば彼女らしい思想に、ヘルフリートが苦笑するのが見て取れた。
ともあれ、彼女の問い掛けにアロイスが応じる。
「前回は氷魔法で範囲内の水を凍らせてから、ウタカタそのものを粉々に砕く事で撤退させた。恐らく今回のクエストもそういう追い払うという方法になるだろう」
「という事は、メヴィの氷魔法は必須ですね。プロバカティオの方も炎魔法が有効ですし……もう一人くらい、魔法が達者に使える人手が欲しいですね」
嘆息するヘルフリート。確かに、魔法というかマジック・アイテムを駆使するメイヴィスだけでは心許ないだろう。仕方の無い事だ。
まあまあ、とヒルデガルトが宥めに掛かる。
「メヴィ殿の良い所は、アイテムさえあれば魔法に疎い我々でも大規模魔法を使用出来る事にあります。セルフマジックなだけですし、これ以上魔道士を動員するのもちょっと……」
「このクエストに連れて行けるとしたらドレディくらいだよねっ! 他の魔道士に仲良い子っていないし、足並みが揃わなさそう! そういう事でしょ、ヒルデ」
「交友関係が狭い事に関しては謝罪しかありません……」
――ウィルドレディアか……。
魔女と名高い彼女の姿を思い浮かべる。そんな彼女は現在、絶賛行方不明中だ。というか、誰も彼女の生態系を知らないのでギルドにいなければ何をしているのかさっぱり分からない。目撃情報も無い。
そして、ウィルドレディアは必要なクエストに関してはこちらが捜す前からスタンバイしているものだ。これだけ騒ぎになっていて姿を見せないという事は、今回のクエストに関わる気は無いのだろう。
そう結論づけたのはアロイスも同じだったのか、ウィルドレディアについては触れず、話を進める。
「一先ず、ウタカタ対策の為に氷魔法のアイテムが必要だ。メヴィ、忙しい所済まないが全員が持てるくらい大量にアイテムを用意して貰って良いだろうか? お前の準備が出来次第、出発するとしよう」
「了解です。そう時間は掛からないので、明日の午後から出発で問題無いかと」
「ああ、分かった。よろしく頼む」
全員一緒に行動を心掛けていたので、すぐに全員集まって来た。というか、すぐ近くで騒動が起こっていたのでみんなその場にいたという表現が正しいだろう。
「今ある情報を整理しよう」
アロイスが蕩々と言葉を紡ぐ。
「まず、この惨状はウタカタによる被害の可能性がかなり高い。マスターの予想は大当たりだったようだ」
「ええ、そうですね。こんな均一に建物を破壊する業、人間のものとは思えません」
下されたアロイスの予想にヒルデガルトが悩ましげに頷く。流石に現状を見て、神魔物とは全く関係無いと言うには無理がある。
「そして、先程ナターリアが調べていた芽。これはプロバカティオの子だった。皆も動くのを見ていたので分かるとは思うが、今回の一件には神魔物が2体絡んでいる可能性が出て来た」
「そんな事、ありえるんでしょうか? だって、1体だってこの世に2体といない珍しい魔物なのに……」
思わず口を突いて出たメイヴィスの言葉に、アロイスは優しく頷いた。
「ああ、俺もそう思う。全く関係が無いはずがない。どこかで繋がっている事象だろう。今回は神魔物2体を退かせると同時、何故ここ最近神魔物の被害が多いのか。また、裏で糸を引いている『何か』が無いかを調査するのが目的になるな」
「人災の線を疑っている訳ですね、アロイス殿は」
「そうだな。正直な話、これが自然的に発生した偶然だとは考え辛い」
――確かにここまで来ると、人災の可能性を疑いたくもなる。しかし、この神魔物達を操れる人間が存在すると言うのだろうか。
考え込んでいると、ナターリアが気の抜けるような一言を吐き出した。
「取り敢えず、今からどうする? このまま突っ立ってても濡れるだけだし、一旦ギルドに帰った方が良いんじゃないかなっ! あ、でもでも、勿論今から神魔物を捜して突っ込むっていうのもアリ寄りのアリだとは思うよっ!!」
「いや、戻る。マスターに今日の収穫を報告してから身の振り方を考えよう」
「流石アロイス! 無理に危険物を捜す必要は無いもんねっ!」
撤退を確信していたらしいナターリアは嬉しそうだ。対するアロイスは渋面だったが。
***
ギルドに帰還した後、まずはヘルフリートがオーガストに調査結果を報告。それを終了した後、再度前の会議室にクエストメンバーが集まっていた。
ここまでに数時間掛かったので、食事や休息を兼ねたフリータイムを挟んでいる。万全な状態とは言い難いものの、打ち合わせをする程度なら問題無いコンディションだ。
「それで、マスターは何て言ってた? もういっそ、今回のクエストは中止! とかステキな事にならないかなっ!」
直接オーガストと話をしたヘルフリートにそう訊ねたナターリアは元気そうだ。そんな彼女の前向き発言に、騎士は首を振る。よろしくない宣告をする気満々だ。
「いいや、神魔物が関わっているのなら、出来れば解決して欲しいそうだ。とはいえ、無理そうなら切り上げて構わないとも言っていた」
「そうなりますよね。やはり、我々でどうにか解決しなければ。そういえば、以前はどうやってウタカタを退けたんでしたっけ?」
クエストを完遂するつもりのヒルデガルトは既に対ウタカタの方法を思案している。彼女らしいと言えば彼女らしい思想に、ヘルフリートが苦笑するのが見て取れた。
ともあれ、彼女の問い掛けにアロイスが応じる。
「前回は氷魔法で範囲内の水を凍らせてから、ウタカタそのものを粉々に砕く事で撤退させた。恐らく今回のクエストもそういう追い払うという方法になるだろう」
「という事は、メヴィの氷魔法は必須ですね。プロバカティオの方も炎魔法が有効ですし……もう一人くらい、魔法が達者に使える人手が欲しいですね」
嘆息するヘルフリート。確かに、魔法というかマジック・アイテムを駆使するメイヴィスだけでは心許ないだろう。仕方の無い事だ。
まあまあ、とヒルデガルトが宥めに掛かる。
「メヴィ殿の良い所は、アイテムさえあれば魔法に疎い我々でも大規模魔法を使用出来る事にあります。セルフマジックなだけですし、これ以上魔道士を動員するのもちょっと……」
「このクエストに連れて行けるとしたらドレディくらいだよねっ! 他の魔道士に仲良い子っていないし、足並みが揃わなさそう! そういう事でしょ、ヒルデ」
「交友関係が狭い事に関しては謝罪しかありません……」
――ウィルドレディアか……。
魔女と名高い彼女の姿を思い浮かべる。そんな彼女は現在、絶賛行方不明中だ。というか、誰も彼女の生態系を知らないのでギルドにいなければ何をしているのかさっぱり分からない。目撃情報も無い。
そして、ウィルドレディアは必要なクエストに関してはこちらが捜す前からスタンバイしているものだ。これだけ騒ぎになっていて姿を見せないという事は、今回のクエストに関わる気は無いのだろう。
そう結論づけたのはアロイスも同じだったのか、ウィルドレディアについては触れず、話を進める。
「一先ず、ウタカタ対策の為に氷魔法のアイテムが必要だ。メヴィ、忙しい所済まないが全員が持てるくらい大量にアイテムを用意して貰って良いだろうか? お前の準備が出来次第、出発するとしよう」
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「ああ、分かった。よろしく頼む」
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