アルケミストの恋愛事情
11.獲得アイテム
現場に戻ってみて分かった事がある。これは討伐戦などではなく、解体作業だという事だ。
身軽なヒルデガルトが素早い動きでスケルトン・ロードの動きを牽制し、ついでに囮役を担う。その間にアロイスが確実に部位を破壊。的確且つ作業的に淡々と行われるその光景には絶句してしまいそうだ。
「あれ、もしかしてあたし達、必要ないのかな?」
「そうみたいだね……。いやあ、元騎士、本当に強いや。ギルドの人達も弱くは無いはずなのに、本職には勝てないって事か」
「まあ、あの人等はその為に身体を鍛えたり剣の腕を磨いたりしているわけだからねっ! あたし達は金が目的だったり、研究費が目的だったりするし、純粋に強さを追い求めている人達には勝てっこないよ!」
「金と研究費ってつまりはどっちも金って事なんじゃ――」
「細かい事言うの、あたしは好きじゃないぞ。うーん、あたしも混ざって来よっかな?」
「えっ!? 私の事置いて行かないでよ!」
「あ」
ひょいっと、まるで何か物を退かすようにナターリアから持ち上げられる。何が起きたのか理解するより先に腹回りに大変な圧力が掛かった。高い所から落ちる――否、低い所から高い所へ飛び移る動きがダイレクトに腹を直撃する。
「うっ……昼食べた物、戻しそう」
「しっかり、メヴィ! 昼は食べてないでしょ!」
「そ、そうだった。何かお腹減って来た……」
「もう、メヴィったら! お昼なら昨日食べたでしょ!」
「今日の昼食も食べさせてよ!! じゃなくて、何? どうしたの、いきなり」
無言でナターリアは背後を指さした。勢いよく振り返って、そして後悔する。
「うわっ! 何コレ、髑髏?」
「何かぁ、メヴィがあたしの事を必死に止めてる間にアロイスさんがあの大剣でスケロちゃんの頭蓋骨を跳ね飛ばして、ここまで飛んで来たのっ!」
「ふわっ!? こ、これがあの距離を飛んで来たっていうの? や、ヤバ……実は人間辞めちゃってるんじゃ、アロイスさん……。あ、でもそれはそれで、あり」
ともあれ、ナターリアの謎の行動は降って来た危険物を回避する動きだったらしい。彼女がいなければ、今頃倒した後のスケルトン・ロードの頭部に押し潰されて死亡という抱腹絶倒は免れない最期を遂げるところだった。
気を取り直し、討伐任務お疲れ様の一言を言うべく今度はメイヴィスがナターリアを引き摺る形でアロイスとヒルデガルトの元へ走る。
「アロイスさん、ヒルデさん! 助けに来てくださって、有り難うございました!」
「あれ、メヴィ殿? あ!? もしかして、そこの茂みにいましたか? うわ、魔物の頭部が降って来たと思うのですが、怪我をしたりは……」
「大丈夫だよっ! あたしも一緒だったからね!」
「さ、流石はナターリア……!」
何故、ヒルデガルトはナターリアをこんなにも過大評価しているのか。謎は尽きないが、手にたくさんの何かを携えたアロイスが会話に加わった事で思考がそちらへ引き摺られる。
「メヴィ、マントは回収しておいた。少し泥で汚れてしまっているが……。あと、これは土産だ」
「あ、ありがとうございます! すいません、何か忙しいのに変な頼み事しちゃって」
「構わないさ」
手渡されたのは上級魔物が身に付けていた大きすぎるマントと金冠。成る程、飛んで来た髑髏に冠が乗っていなかったのはアロイスがすでに回収していたからか。
金冠を一先ず腕に通してマントを撫で着けてみる。
――滑らかな、ビロードのような手触りだ。アロイスが言った通り若干泥を被っているが、それにしたってかなり良い布。この布だけでもかなり高値が付く事だろう。この布ならば、或いは。
「アロイス殿、ヘルフリート殿を連れて、ギルドへ戻りましょう」
「ねぇ、ヒルデ。あたし達が元から受けてた毒トカゲの討伐はどうなるのかな? 失敗って事で処理?」
「いえ、依頼人が正式にクエストのランクを変えました。一度撤退し、後日体勢を整えて再び臨む事になったそうです」
「そっか。何で増殖したんだろうね、トカゲ」
それだが、とアロイスが肩を竦める。
「俺もずっと疑問に思っていたが、スケルトン・ロードのせいではないだろうか。そこにいるだけで強大な魔力を撒き散らす存在のせいで、毒トカゲの方にも何か影響が出たのかもしれない。が、専門に訊いてみなければ詳しい事は分からないが」
ざっくりしてはいるが、アロイスの予想は概ね合っているだろう。魔物学者の彼に訊けば同じ事を小難しい専門用語と共に教えてくれるはずだ。
「じゃあ、帰りましょうか。ギルドへ」
身軽なヒルデガルトが素早い動きでスケルトン・ロードの動きを牽制し、ついでに囮役を担う。その間にアロイスが確実に部位を破壊。的確且つ作業的に淡々と行われるその光景には絶句してしまいそうだ。
「あれ、もしかしてあたし達、必要ないのかな?」
「そうみたいだね……。いやあ、元騎士、本当に強いや。ギルドの人達も弱くは無いはずなのに、本職には勝てないって事か」
「まあ、あの人等はその為に身体を鍛えたり剣の腕を磨いたりしているわけだからねっ! あたし達は金が目的だったり、研究費が目的だったりするし、純粋に強さを追い求めている人達には勝てっこないよ!」
「金と研究費ってつまりはどっちも金って事なんじゃ――」
「細かい事言うの、あたしは好きじゃないぞ。うーん、あたしも混ざって来よっかな?」
「えっ!? 私の事置いて行かないでよ!」
「あ」
ひょいっと、まるで何か物を退かすようにナターリアから持ち上げられる。何が起きたのか理解するより先に腹回りに大変な圧力が掛かった。高い所から落ちる――否、低い所から高い所へ飛び移る動きがダイレクトに腹を直撃する。
「うっ……昼食べた物、戻しそう」
「しっかり、メヴィ! 昼は食べてないでしょ!」
「そ、そうだった。何かお腹減って来た……」
「もう、メヴィったら! お昼なら昨日食べたでしょ!」
「今日の昼食も食べさせてよ!! じゃなくて、何? どうしたの、いきなり」
無言でナターリアは背後を指さした。勢いよく振り返って、そして後悔する。
「うわっ! 何コレ、髑髏?」
「何かぁ、メヴィがあたしの事を必死に止めてる間にアロイスさんがあの大剣でスケロちゃんの頭蓋骨を跳ね飛ばして、ここまで飛んで来たのっ!」
「ふわっ!? こ、これがあの距離を飛んで来たっていうの? や、ヤバ……実は人間辞めちゃってるんじゃ、アロイスさん……。あ、でもそれはそれで、あり」
ともあれ、ナターリアの謎の行動は降って来た危険物を回避する動きだったらしい。彼女がいなければ、今頃倒した後のスケルトン・ロードの頭部に押し潰されて死亡という抱腹絶倒は免れない最期を遂げるところだった。
気を取り直し、討伐任務お疲れ様の一言を言うべく今度はメイヴィスがナターリアを引き摺る形でアロイスとヒルデガルトの元へ走る。
「アロイスさん、ヒルデさん! 助けに来てくださって、有り難うございました!」
「あれ、メヴィ殿? あ!? もしかして、そこの茂みにいましたか? うわ、魔物の頭部が降って来たと思うのですが、怪我をしたりは……」
「大丈夫だよっ! あたしも一緒だったからね!」
「さ、流石はナターリア……!」
何故、ヒルデガルトはナターリアをこんなにも過大評価しているのか。謎は尽きないが、手にたくさんの何かを携えたアロイスが会話に加わった事で思考がそちらへ引き摺られる。
「メヴィ、マントは回収しておいた。少し泥で汚れてしまっているが……。あと、これは土産だ」
「あ、ありがとうございます! すいません、何か忙しいのに変な頼み事しちゃって」
「構わないさ」
手渡されたのは上級魔物が身に付けていた大きすぎるマントと金冠。成る程、飛んで来た髑髏に冠が乗っていなかったのはアロイスがすでに回収していたからか。
金冠を一先ず腕に通してマントを撫で着けてみる。
――滑らかな、ビロードのような手触りだ。アロイスが言った通り若干泥を被っているが、それにしたってかなり良い布。この布だけでもかなり高値が付く事だろう。この布ならば、或いは。
「アロイス殿、ヘルフリート殿を連れて、ギルドへ戻りましょう」
「ねぇ、ヒルデ。あたし達が元から受けてた毒トカゲの討伐はどうなるのかな? 失敗って事で処理?」
「いえ、依頼人が正式にクエストのランクを変えました。一度撤退し、後日体勢を整えて再び臨む事になったそうです」
「そっか。何で増殖したんだろうね、トカゲ」
それだが、とアロイスが肩を竦める。
「俺もずっと疑問に思っていたが、スケルトン・ロードのせいではないだろうか。そこにいるだけで強大な魔力を撒き散らす存在のせいで、毒トカゲの方にも何か影響が出たのかもしれない。が、専門に訊いてみなければ詳しい事は分からないが」
ざっくりしてはいるが、アロイスの予想は概ね合っているだろう。魔物学者の彼に訊けば同じ事を小難しい専門用語と共に教えてくれるはずだ。
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