聖獣として異世界召喚されました!?

ゆなか

50

「生まれたよー!!」
私はリーリアさんの出産を病室の外で待っていたダニエルさんの元に飛んで行った。


「本当ですか!?」
「勿論!元気な男女の双子ちゃんですよ!」
私の言葉を聞いたダニエルさんは瞳を見開き、ブワッと一瞬で涙を流しながら病室の中に飛び込んで行った。
直ぐに中からは二人の嬉しそうな泣き声が聞こえてきた。


良かった……。
そうホッと安堵の溜息を吐くと――――
「お疲れ。唯」
ジルがゆっくりと近付いて来た。


「あ、ジル。赤ちゃんは……落ち着いてからの方が良いよね」
「ああ。今は家族だけが良いはずだから、後で顔を出すさ」
ジルは飛んでいる私を抱き寄せた。


「じ、ジル?!」
「疲れただろう?美味しい物食べに行こう」
……ずっとリーリアさんの側にいて励ましていただけの、私が疲れたなんて言って良いのだろうか?
首を傾げる私を抱いたジルは、有無を言わさずに私をこの場から連れ出す。
しかし、疲れたのは事実なのでされるがままになる。






――――あの後。
ジルやミーシャ姫、二人の両親である国王夫妻と神殿関係の偉い人達には全て今までの説明をした。


歴代神子の短命の理由とその原因となった四代目神子の事。
四代目神子の事が書かれた本は、燃やさずにクラウディスに任せた。
……とても変態なクラウディスだが……彼ならばきっと悪い様にはしないはずだから。
そして、穢れの大きな原因でもあった『ユーリの残留思念』が無くなったことで、もう神子が穢れを払う必要がなくなった事。
そして……私がそのユーリの生まれ変わりである事。
いずれこの国から出て、他の国を巡りながら聖獣としての務めを果たそうとしている事――――これら全てを。


最初は驚いていたが、みんなは私を普通に受け入れてくれた。
そして、同時にとても心配された。
私は聖獣であるだけだと思っていたのに、国王様達からは家族の一員だと思われていた事を知って……とても嬉しかった。




リーリアさんとダニエルさんのところには双子ちゃんが無事に誕生したのは、冒頭で既に知っての通りだろう。相変わらず、二人はラブラブだ。


ラブラブと言えば、ヨハネス様とコーネリア様の国王夫妻もラブラブだし、そんな二人にお邪魔させてもらいながら美味しいお酒を楽しんでいる。


更に、ラブラブ繋がりで言えば……アインさん、ツヴァイさん、ドライさん達も忘れてはいけない。
三人は一ヶ月後に三家合同の結婚式を上げる予定だ。勿論、私も招待されている。
三人が素敵な旦那さんになれる様に、目を光らせてきます!
場合によってはお仕置きです☆ ふふふっ。


アインさんはお店担当準男爵家のミアさんと、ツヴァイさんは司書のアイリーンさん。ドライさんは伯爵令嬢でお化け屋敷に目覚めたソフィアさんと……みんなそれぞれにラブラブなのです。良かった良かった。


可愛いランちゃんとは遊び友達で中庭で追いかけっこしたり、モフモフしたり、モフモフしたり……。ランちゃんあなたっ……!
ランちゃんの兄のシーカにはよくお菓子をねだりに行っている。相変わらずおかしく作りが上手で、頬っぺたが落ちそうだ。
むむっ……お陰で最近、丸くなったかもしれない。


クラウディスは……相変わらずの神様大好きな変態なので余程でなければ近寄らない様にしている。変態怖い……。


神と言えば……ミーシャ姫は神子の仕事を続けている。
穢れを払う必要が無くなった為に、純粋に神ルーチェと神殿との橋渡しがメインになっている。すっかり元気になったミーシャ姫は、少しお転婆になったとジルが苦笑いを浮かべていたが、婚約者との仲も順調に育んでいるそうで何よりだ。ミーシャ姫には誰よりも幸せになって欲しい。




――そして、ジルフォード。
ジルは前よりも過保護になった。
ジルは私の実年齢も知っている筈なのに……年下扱いをしてくるのだ。
私が他の国に行くと言った事を気にしているのだろう。
心配しなくてもまだまだ先なのに……。
この国の人達への務めはまだ果たしていないし、そもそも他の国に行く時はきちんと挨拶だってする。黙っていなくなったりしないのに……。
ジルは私の側から離れないし、常に私を側に置いておきたがる。


側にいる時は、こんな風に抱き寄せられながら移動になる。
こんな風に甘やかされたら、ジルから離れられないダメ人間になってしまいそうだ。……。




***


「ムニャムニャ……もう飲めましぇーん……」
ジルは瞳を細めながら、酔い潰れた唯を抱き上げた。


「ははっ。悪い顔してるぞ。ジルフォード」
ニヤニヤと笑いながら父であるヨハネスが笑った。


「なんとでも。それよりも唯との結婚は認めてくれるのですよね?」
「ああ。約束したからな。大切な友人を頑張ってこの国に繋ぎ止めてくれ」
「無理矢理はダメよ?」
「勿論です」
そんな事はしない。
自分がいなければ駄目な程に甘やかしたい。
唯がこの国を離れる時は自分も一緒だし、仮に唯だけで行かなければならないとしても……絶対にこの国に戻って来る理由を作る。


猫の姿なのに良いのかって?
今のままの唯の姿も愛らしいが、唯が大切にしているルーカが教えてくれた。
『唯は人の姿にも変身出来るよ』……と。
だったら、世継ぎ作りも問題無いだろう。


――――私は唯が欲しい。
優しくてお人好しで、強がりで、弱くて……でも前を向いて歩こうとする唯が好きだ。正直見た目は関係ない。
唯だからこそ欲しいのだ。
妹のミーシャは唯と結婚する事に賛成してくれているし……神からの祝福も得てくれたらしい。
『絶対に幸せにしてよ?でないと許さない』との事だ。


責任重大だが……問題無い。
唯は絶対に私が幸せにしてみせる。


腕の中でスヤスヤと寝息を立てる唯を大事に抱え……自らの部屋を目指した。


ふふっ。
明日の朝が楽しみだ。
ジルは唯を優しく見下ろしながら……妖艶な微笑みを浮かべた。




****


「ノーーーー!! 三回目!! どうしてこうなったーー!」
裸で眠るジルを横目に私は叫んだ。


ええーい!またしてもジルが肩で笑っている。
やられたー……。また騙されたー……。




……こうして私は三度目となる朝チュンを迎えた。






        ――END――

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