聖獣として異世界召喚されました!?
31
「記憶に残らない女性……だと?」
「うん。その人はこの前のリーリアさんの件にも関わっているし、今日も……」
「一体……何者なんだろうな」
ジルと私は考え込む様に俯いた。
……あまりにも情報がなさ過ぎるのだ。
神は頼れない。資料室にも情報が無い。ルーカは起きない……。
いっその事、無理矢理にでもルーカを起こしてしまおうかと思ってしまう。
どうしたら良いのか……。
万能チートなんかがあっても役に立たないじゃないか。
……あれ?
チート?万能チート……。
チートっていう位なんだから、何でも出来るんじゃない!?
例えば、『サーチ』的な!!
「サーチ!!」
突然、呪文を唱えた私のせいで、ジルとユーリアさんがビクッとした。
……ごめんなさい。
瞳を閉じて、周りの気配を慎重に探る。
この部屋の中に私を除いた三人分の気配……。
これは、ジルとユーリアさんと眠っているミーシャ姫だ。
それじゃあ次は…………。
外にある気配をまた慎重に探っていく。
外に一人……二人……。これは騎士団の人?
清廉な気配……もとい、筋肉バカの気配は騎士団の人に他ならない。
他にも、また一人……二人…………。
騎士団の人だらけだな!!
恐らくは見回りでもしているのだろう。
……と、ふと気付いた。
あの女性の気配を知らないじゃないか……!と。
このまま探っていても引っ掛かるのかどうかも分からない。
チートぇ……。
全然チートじゃないじゃないか!!何の為のチートだよ!!
私は、思わず天を仰いだ……。
「唯……どうした?」
ジルが心配そうな声で尋ねてくる。
「……んーん。何でもない。ちょっと自分の評価を見直してた」
「そ、そうか?」
「うん。思った以上に聖獣って使えないな……ってね」
「いや、そんな事はない。妹は唯のお陰で助かったし、あんなにも元気になれたのだから。唯がいなかったら私達は今も悲観した状態のままだった」
「ええ。ミーガルド様、姫神子様を助けて下さり本当にありがとうございます」
ジルとユーリアさんに頭を下げられた。
「いえいえ!!」
私は大きく両手を振った。
思わず、謙遜してしまうのは日本人だからかもしれない。
それに……私は聖獣であるなら何でも叶えられる存在になりたいのだろう。
それなのに出来なかったという自己嫌悪に近いもどかしさ……。
「取り敢えずは……ミーシャの身辺警護を強化しよう」
という話でまとまった。
「姫神子様の周りの侍女の選別はお任せ下さい。暫くは信用のおける者でシフトを組みますわ」
「ああ。頼むよ」
ユーリアさんの言葉にジルは大きく頷いた。
ユーリアさんみたいなしっかりした人がミーシャ姫の側に居てくれるだけで、こんなにも安心出来るなんて……。
「でも、ジルや王様達も気を付けないと」
相手の目的が分からない以上、最新の注意を払わなければならない。
「しかし……顔が分からないんじゃ対策のしようがないな」
「そうなんだよね……」
溜息を吐きながらガックリと肩を落とすジル。私もジルと同じ様に肩を落とした。
「でも、まあ……アレはいつも身に付けておいてね?呼び掛けてくれたら、いつでも駆け付けるし」
私はチラッとジルの襟元を確認した。
「ああ。これは目立たないから良いな」
ジルの手がそれに触れた。
私が男性陣に配ったのは、この国の紋章をかたどったピンである。
これは、この城の関係者ならば誰でも身に付けている物で、逆にこれが無いと関係者ではないと証明されるピンのレプリカである。
レプリカといえジルや王様達も付けている合法なレプリカだけどね!?
……そうだ。ユーリアさんにも渡しておこう。
私は、チュニックベストのポケットをごそごそと探った。
確かあと一つか二つは予備があったはずだ。
お、あった。
私はポケットの中からピンを取り出した。
「ユーリアさんにもお渡ししますね。何かあったらこれに呼び掛けて下さい」
「かしこまりました」
ユーリアさんもピンを付けている側の人間なので、形的に問題はない。
こうして皆にばらまいていけばまた何か状況が変わるかもしれない。
……そう思うしかないよね。
はあ……。この何も進まない状況がもどかしい……。
でも、少しでも先に進まなければならない。
皆の幸せの為に……。
でも、今日は疲れちゃったな……。ふわぁー。
つい、大きな欠伸が出てしまった。
「そろそろ寝るか」
ジルは苦笑いを浮かべた。
「うん。部屋に戻るよ」
「ここで眠れば良いんじゃないか?」
「へ……?」
「そうですわね。姫神子様もお喜びになられますわ」
「ああ。しかもその方が唯的にも安心だろう?」
……それはそうなんだけど……。
お姫様と一緒に寝るって……良いの?
私はミーシャ姫と同性だけど、身分とか……。
「何をそんなに悩んでいるんだ?唯が嫌じゃなければ一緒にいてやってくれると、私も安心だ。ミーシャが嫌なら私の部屋に……」
「嫌じゃないです!!おやすみなさい!!」
私はジルの言葉を遮った。
あんな心臓の悪い思いはもうしたくない。
「まあ……。では、ミーガルド様、こちらへどうぞ」
うっ……。ユーリアさんに笑われた……。
ジルもジルでクスクス笑っているし……!!
「ゆっくり休めよ」
私はプイッと顔を背け、ジルを無視してミーシャ姫の寝室に入った。
「……お邪魔しますー」
そっと、ミーシャ姫の横に潜り込むと…………
「……ふふっ」
ミーシャ姫が笑った気がした。
……寝ぼけているのかな?
そっと布団をかけ直した私は、ミーシャ姫の頭を一撫でしてから瞳を閉じた。
子供の体温は高くて温かく……疲れていた私は、一気に深い眠りに落ちていった…………。
「うん。その人はこの前のリーリアさんの件にも関わっているし、今日も……」
「一体……何者なんだろうな」
ジルと私は考え込む様に俯いた。
……あまりにも情報がなさ過ぎるのだ。
神は頼れない。資料室にも情報が無い。ルーカは起きない……。
いっその事、無理矢理にでもルーカを起こしてしまおうかと思ってしまう。
どうしたら良いのか……。
万能チートなんかがあっても役に立たないじゃないか。
……あれ?
チート?万能チート……。
チートっていう位なんだから、何でも出来るんじゃない!?
例えば、『サーチ』的な!!
「サーチ!!」
突然、呪文を唱えた私のせいで、ジルとユーリアさんがビクッとした。
……ごめんなさい。
瞳を閉じて、周りの気配を慎重に探る。
この部屋の中に私を除いた三人分の気配……。
これは、ジルとユーリアさんと眠っているミーシャ姫だ。
それじゃあ次は…………。
外にある気配をまた慎重に探っていく。
外に一人……二人……。これは騎士団の人?
清廉な気配……もとい、筋肉バカの気配は騎士団の人に他ならない。
他にも、また一人……二人…………。
騎士団の人だらけだな!!
恐らくは見回りでもしているのだろう。
……と、ふと気付いた。
あの女性の気配を知らないじゃないか……!と。
このまま探っていても引っ掛かるのかどうかも分からない。
チートぇ……。
全然チートじゃないじゃないか!!何の為のチートだよ!!
私は、思わず天を仰いだ……。
「唯……どうした?」
ジルが心配そうな声で尋ねてくる。
「……んーん。何でもない。ちょっと自分の評価を見直してた」
「そ、そうか?」
「うん。思った以上に聖獣って使えないな……ってね」
「いや、そんな事はない。妹は唯のお陰で助かったし、あんなにも元気になれたのだから。唯がいなかったら私達は今も悲観した状態のままだった」
「ええ。ミーガルド様、姫神子様を助けて下さり本当にありがとうございます」
ジルとユーリアさんに頭を下げられた。
「いえいえ!!」
私は大きく両手を振った。
思わず、謙遜してしまうのは日本人だからかもしれない。
それに……私は聖獣であるなら何でも叶えられる存在になりたいのだろう。
それなのに出来なかったという自己嫌悪に近いもどかしさ……。
「取り敢えずは……ミーシャの身辺警護を強化しよう」
という話でまとまった。
「姫神子様の周りの侍女の選別はお任せ下さい。暫くは信用のおける者でシフトを組みますわ」
「ああ。頼むよ」
ユーリアさんの言葉にジルは大きく頷いた。
ユーリアさんみたいなしっかりした人がミーシャ姫の側に居てくれるだけで、こんなにも安心出来るなんて……。
「でも、ジルや王様達も気を付けないと」
相手の目的が分からない以上、最新の注意を払わなければならない。
「しかし……顔が分からないんじゃ対策のしようがないな」
「そうなんだよね……」
溜息を吐きながらガックリと肩を落とすジル。私もジルと同じ様に肩を落とした。
「でも、まあ……アレはいつも身に付けておいてね?呼び掛けてくれたら、いつでも駆け付けるし」
私はチラッとジルの襟元を確認した。
「ああ。これは目立たないから良いな」
ジルの手がそれに触れた。
私が男性陣に配ったのは、この国の紋章をかたどったピンである。
これは、この城の関係者ならば誰でも身に付けている物で、逆にこれが無いと関係者ではないと証明されるピンのレプリカである。
レプリカといえジルや王様達も付けている合法なレプリカだけどね!?
……そうだ。ユーリアさんにも渡しておこう。
私は、チュニックベストのポケットをごそごそと探った。
確かあと一つか二つは予備があったはずだ。
お、あった。
私はポケットの中からピンを取り出した。
「ユーリアさんにもお渡ししますね。何かあったらこれに呼び掛けて下さい」
「かしこまりました」
ユーリアさんもピンを付けている側の人間なので、形的に問題はない。
こうして皆にばらまいていけばまた何か状況が変わるかもしれない。
……そう思うしかないよね。
はあ……。この何も進まない状況がもどかしい……。
でも、少しでも先に進まなければならない。
皆の幸せの為に……。
でも、今日は疲れちゃったな……。ふわぁー。
つい、大きな欠伸が出てしまった。
「そろそろ寝るか」
ジルは苦笑いを浮かべた。
「うん。部屋に戻るよ」
「ここで眠れば良いんじゃないか?」
「へ……?」
「そうですわね。姫神子様もお喜びになられますわ」
「ああ。しかもその方が唯的にも安心だろう?」
……それはそうなんだけど……。
お姫様と一緒に寝るって……良いの?
私はミーシャ姫と同性だけど、身分とか……。
「何をそんなに悩んでいるんだ?唯が嫌じゃなければ一緒にいてやってくれると、私も安心だ。ミーシャが嫌なら私の部屋に……」
「嫌じゃないです!!おやすみなさい!!」
私はジルの言葉を遮った。
あんな心臓の悪い思いはもうしたくない。
「まあ……。では、ミーガルド様、こちらへどうぞ」
うっ……。ユーリアさんに笑われた……。
ジルもジルでクスクス笑っているし……!!
「ゆっくり休めよ」
私はプイッと顔を背け、ジルを無視してミーシャ姫の寝室に入った。
「……お邪魔しますー」
そっと、ミーシャ姫の横に潜り込むと…………
「……ふふっ」
ミーシャ姫が笑った気がした。
……寝ぼけているのかな?
そっと布団をかけ直した私は、ミーシャ姫の頭を一撫でしてから瞳を閉じた。
子供の体温は高くて温かく……疲れていた私は、一気に深い眠りに落ちていった…………。
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