異世界転生って、まだ死なせてくれないんですか?〜老衰から誕生へ〜

真木 輝

第2章 第5話 Sクラス①

同じ年くらいの子供たちが遊んでいるのだろうか外から声が聞こえる
私はそれをただ羨ましく思っていた
コンコンとドアをノックして入ってきたのは2メートルを超えているであろう巨漢の父だ

「リル、今日も魔法の鍛錬だ」

「はい、お父様」

毎日魔法、魔法、魔法、魔法
そうこれが私リル・シャイスカーラの日常だ
物心ついた頃からずっとこのように生きてきた
遊ぶ暇なんてなかった
友達なんていなかった
話せる人は両親、使用人、そして5歳上の姉だけだった
けどそんな退屈なある日
姉は私を家から連れ出してくれた
そしてチューリップのたくさん咲いた綺麗な丘に連れて行ってくれた
すぐに父に見つかり怒鳴りつけられた
しかし姉はそれを庇ってくれた
その日から何度か姉は私をあの場所へ連れ出してくれた
私は今まであまり持ってなかった喜怒哀楽の感情を得た
そんな姉との楽しい毎日が続くと思っていた
しかし姉は嫁に出て行ってしまった
火の国一級貴族なんだそうだ
その日からまた私は魔法しかない日々を送ることになった
そのような日々がまた何年も続き
私も15歳となった
士官学校に通うことになった
嬉しかったこの家から出ていける
いろんな人と会えるそう思うと
待ちきれなくなって家を飛び出した
あの丘に行くためだ
しかしその途中
空間転移してきた黒と赤の髪の変な少年に出会った
その少年は姉に似ていた
私に持っていないものを与えてくれた・・・



目を覚ますとそこは学園の保健室だった

「そっか、私クラス分け試験で・・・」

負けたのは家族以外で初めてだ
どんな屈強な男にも負けることはなかった
光の国へ侵攻してきた反社会軍も1人で撃退した
なのに・・・
悔しいとは多分このことなのだろう
はぁっとため息をつき
ベットから立ち上がる
そして

「先生、治療ありがとうございました」

そう言って保健室から出て行こうとした

「治したのは私じゃないわ、あの黒と赤の髪の子にお礼を言いなさい」

先生からそう言われて
立ち尽くした
あいつが私を治してくれた?
まったく
はぁっとため息をついて
リルはそのまま保健室を後にした
その顔は少しだけ笑っていた



クラス分け試験翌日
アースは朝食堂でご飯を済ませて
ライトとともにクラス分け試験の結果を確認しに来ていた

「えーっと、俺のクラスはー・・・」

ライトは身を乗り出して自分の名前を探していた

「あった!!!やったぜ、1番上のSクラスだ」

この学園では1番上のSからアルファベット順にPまで計17クラスがある
A クラスは500人の中から30人しか選ばれないいわば選抜メンバーみたいなものだ
ライトのやつ強いのか・・・

そう思いつつ自分の名前を探していると同じくSクラスのところにあった

「おっ、さすがあの王女様をボコしただけはあるね」

ライトにバンっと背中を叩かれて、笑いながら言われる

「おい、ライトあんま大きい声で・・・」

「悪かったわね、よ・わ・く・て」

俺が全部言い切る前に
後ろからものすごい殺気を感じる

「ひぃっ・・・・」

ライトはすぐさまアースの背中に隠れた

「や、やあ、リル、体調はどうだい?」

おそるおそる声をかける

「ええ、あなたのおかげでぐっすり眠れたわ、ぐっすりね」

どうやら昨日のことを根に持っているらしい

「ご、ごめん、リルが強すぎて手加減できなかったんだ」

手を合わせながら謝るも
リルはふんっと少し顔を逸らしてきた

「まぁ、同じクラスな訳だし、また戦う機会があったら次は倒すわ!」

そう言ってリルは立ち去って行った

「こ、こえぇぇぇ」

リルが立ち去った後
すぐにライトが後ろから出てきた

「王女様も同じクラスだ、殺されないようにしよ・・・」

「お前ってやつは・・・、さっはやくクラスに行くぞ」

「へいよー」

俺とライトはそのまま教室に向かった



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