異世界転生って、まだ死なせてくれないんですか?〜老衰から誕生へ〜

真木 輝

プロローグ

《西歴2020年》
長い人生だった・・・
今思い返せば私は幸せ者だった
戦争を死なずに乗り越え、戦後の不況にも負けず、良い妻を持ち、良い家族や友人に恵まれた、孫だけでなくひ孫の顔だって拝むことができた。
バァさんに先越されたのは予定外だったがな
おっと自己紹介を忘れていた
私の名前は佐藤二郎、歳は101歳

「二郎じいちゃん・・・」

「お父さん・・・」

今私は病室の寝室で横たわっていて、周りは家族が囲んでいる。
そう私はもうすぐ死ぬのだ

「お父さん本当にありがとう、本当に長生きなんだから」

そう泣きながら私の娘が話している
返事をしたいところだが話す気力ももう残っていない
ああ確かに長い旅だった
バァさんや天国に行くからな
そう思い目を瞑った
本当にありがとうみんな・・・


《魔法歴623年》風の国ウィングブルク

「アリス!もう少しだ頑張るんだ!!!」

「ラインハルトさん、ひっひっふぅーですよ」

病室はアリスという女の出産に追われていた
そして・・・
すぽんっと1人の男の子がうまれた

「あ、アリスやったぞ!元気な男の子だ?」

「先生!オギャーと泣きませんよ?!」

「呼吸がないの?!はやく・・・・」

周りがうるさい
これでは安らかに眠れないではないか
さっきまでは静かだったのに・・・

「先生!早くしてください!うちの子が!」

うちの子?

「旦那様、焦らないでください」

旦那様?

「わかっている!でも・・・」

あぁ、もう本当にうるさいな

「う、うるさぁぁあい!!!」

そう言い目を開けると私に視線が集まっていた
黒髪に赤髪、金髪
ん?誰だこの人たちは

「アリス!よかった息があったよ!!」

「ほんとに、よかった・・・」

ん?誰だこの若造どもは

「だ、だれだおまえら?」

自分でも何を言ったのかわからない変な音が口から出た

「あらこの子何か話しているわよあなた」

「本当だ!僕たちの子は天才なのかもしれないね」

僕たちの子?何を言っているんだ?

「それではラインハルトさんこの子を新生児室に連れていきますね」

「はいお願いします看護婦さん」

そういって看護婦さん?は私のことを抱き上げて歩き出した
新生児室?私は子供ではないぞ
というか私をいとも簡単に抱き上げるとは
そんなことはどうでもいい
お、おいまってくれー、連れて行かないでくれー、ばぁさんに会わせてくれー


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