『のあ』の記録
1
地球を脱出してすぐのとき
『のあ』は地球の重力から抜け出した。
ここからは完全にながれに身を任せて行くことになる。
レイジ「うっわぁ。すげー。地球って本当に青かったんだぁ」
ノリリ「なに、大げさな。知らなかったの?」
レイジ「いや、だって。生で見たの初めてだもん」
そう、レイジにとって、これは初めての光景だった。
彼は、今まで「図鑑」というものを目にしたことがなく、
地球の外見がいかなるものか、目にしたことがなかった。
一方、ノリリにとっては、何回も見たことのある、見慣れた光景
だった。彼女は、今までさんざん“宇宙”に関わってきた人間
だったから、正直な話、地球そのものを見ることには飽き飽きして
いた。
「やっぱり地球は青かった」のだ。
ノリリ「……せめて、赤かったらよかったのに」
レイジ「えー。なんで?」
ノリリ「……映画で見たの。地球の一面が、赤くなってたの。
海も、陸地も」
レイジ「えー。僕のそんなの嫌だよー」
ノリリ「……だって、つまらないじゃない。小さい頃から見せられてた通り、なんてさ」
******************************
月の近くに来たとき
『のあ』は月が直接見れるところまで来た。
レイジ「わぁー。月だぁ。
……え、ちょっ。何するんだよぉ」
ノリリ「目がくらむから、メガネ掛けといて」
レイジ「えーあのサングラスみたいなのかけんのー。
面倒だなー」
月。言わずと知れた地球の衛星。
かつて合衆国が人間を送り込んだ、あの場所。
レイジ「見えないねー。こっき」
ノリリ「月を視認できるといっても、ここからじゃ、合衆国国旗
までは確認できないよ。人間の眼ってんのは、そこまではよく見えないものなのよ」
レイジ「えー。でも見たい見たいーっ。
人が月にいったの見てみたいーっ」
ノリリ「え、ちょっ。駄々こねないでよ。見えないものは、
見えないの!」
レイジ「えー。ケチーぃ。じゃー、あれだあれ。持ってきてよ」
ノリリ「? 何を」
レイジ「国旗だよ。ほら、科学の力でさ!」
ノリリ「あー無理無理。そんなに都合よくはいかないものなのよ」
レイジ「なに言ってんだよぉ。天才なんだろー。」
ノリリ「あのさ、科学をファンタジィとかと勘違いしてんじゃないの?」
レイジ「え?ちがうの?魔法みたいな感じじゃ」
ノリリ「ないない」
レイジは、科学というものがよくわからなかった。彼の日常に、
科学を感じられるものはなかった。
一方、ノリリは逆で、科学をよく知っていた。実際、科学にもよく関わっていた。彼女の日常にも、科学に関わっているものが
うんざりするほどたくさんあった。それが、彼女の日常だった。
もっとも、このことについて、彼女に言わせれば、
“私が知っているのは宇宙に関する科学の一部分であって、
科学そのものを全部知ってるというわけじゃない“
と言うのかもしれないが。
『のあ』は地球の重力から抜け出した。
ここからは完全にながれに身を任せて行くことになる。
レイジ「うっわぁ。すげー。地球って本当に青かったんだぁ」
ノリリ「なに、大げさな。知らなかったの?」
レイジ「いや、だって。生で見たの初めてだもん」
そう、レイジにとって、これは初めての光景だった。
彼は、今まで「図鑑」というものを目にしたことがなく、
地球の外見がいかなるものか、目にしたことがなかった。
一方、ノリリにとっては、何回も見たことのある、見慣れた光景
だった。彼女は、今までさんざん“宇宙”に関わってきた人間
だったから、正直な話、地球そのものを見ることには飽き飽きして
いた。
「やっぱり地球は青かった」のだ。
ノリリ「……せめて、赤かったらよかったのに」
レイジ「えー。なんで?」
ノリリ「……映画で見たの。地球の一面が、赤くなってたの。
海も、陸地も」
レイジ「えー。僕のそんなの嫌だよー」
ノリリ「……だって、つまらないじゃない。小さい頃から見せられてた通り、なんてさ」
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月の近くに来たとき
『のあ』は月が直接見れるところまで来た。
レイジ「わぁー。月だぁ。
……え、ちょっ。何するんだよぉ」
ノリリ「目がくらむから、メガネ掛けといて」
レイジ「えーあのサングラスみたいなのかけんのー。
面倒だなー」
月。言わずと知れた地球の衛星。
かつて合衆国が人間を送り込んだ、あの場所。
レイジ「見えないねー。こっき」
ノリリ「月を視認できるといっても、ここからじゃ、合衆国国旗
までは確認できないよ。人間の眼ってんのは、そこまではよく見えないものなのよ」
レイジ「えー。でも見たい見たいーっ。
人が月にいったの見てみたいーっ」
ノリリ「え、ちょっ。駄々こねないでよ。見えないものは、
見えないの!」
レイジ「えー。ケチーぃ。じゃー、あれだあれ。持ってきてよ」
ノリリ「? 何を」
レイジ「国旗だよ。ほら、科学の力でさ!」
ノリリ「あー無理無理。そんなに都合よくはいかないものなのよ」
レイジ「なに言ってんだよぉ。天才なんだろー。」
ノリリ「あのさ、科学をファンタジィとかと勘違いしてんじゃないの?」
レイジ「え?ちがうの?魔法みたいな感じじゃ」
ノリリ「ないない」
レイジは、科学というものがよくわからなかった。彼の日常に、
科学を感じられるものはなかった。
一方、ノリリは逆で、科学をよく知っていた。実際、科学にもよく関わっていた。彼女の日常にも、科学に関わっているものが
うんざりするほどたくさんあった。それが、彼女の日常だった。
もっとも、このことについて、彼女に言わせれば、
“私が知っているのは宇宙に関する科学の一部分であって、
科学そのものを全部知ってるというわけじゃない“
と言うのかもしれないが。
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